ミルク

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ドラマとしての回想シーンが始まって、まずゲイに対する許容度を試されます。
すれ違いざまに声をかけて、「誕生日を一人にしないでくれ。」とナンパし、熱いキスをする。
アップで男同士のキスシーンを見せられて、映画館の席を立つ人もいたでしょう。

過去のニュース映像と、フィルムの粒子を荒らしたドラマ部分を挿入し、当時の熱い雰囲気を上手く出しています。

ミルク氏の生涯を軸にしていますが、ゲイだけではなく、マイノリティが差別や迫害から市民としての権利を得るまでの大きな流れも描いています。

単にゲイ達が権利を勝ち取った成功譚ではありません。ミルク氏は自分達の存在や権利を認めさせるためには、自分達もまた血を流さなければならない。みんなにゲイをカミングアウトするべきだと訴えます。
ミルク氏も何度も選挙に落ち、外見をかえ、政治戦略を変え、選挙区制度が変ったことでやっと当選をつかんだのです。

クライマックスは、全米でゲイを認める法案が通るかどうかの選挙と、群集に向かってのミルク氏のスピーチです。
彼を暗殺した政敵も隠れゲイであることを暗示して、別の理由で苦しんだ末の犯行だったと同情的です。

エンディングに主だった人物の実際の映像と、その後の経歴が流れます。実際のミルク氏はショーン・ペンさんより線が太く、包容力のありそうなおおらかさを感じさせます。

（蛇足）
最初にミルク氏が写真屋を開業するのが、ゲイっぽい。需要があるのです。今ならデジカメとパソコンで済みますが、あの頃は現像に出すのに苦労したでしょう。まだコダックのポラロイドしかなかった頃ですから。

評価７９点（１００点満点）
ショーン・ペンがアカデミー賞の主演男優賞をとった作品で、自らがゲイであると公言して初めて公職に就いたハーヴェイ・ミルクの生き様を描いた伝記ドラマ。流石にショーン・ペンの演技はそれらしい雰囲気を十二分に見せてくれる。
１９６０年代、アメリカでは同性愛者は未だ迫害や差別を受けていたが、それが法的な差別を受けなくなり、今や現代社会で同性結婚の是非が論じられる基盤を築いたのにハーヴェイ・ミルクの存在が大きかったと言われている。日本じゃどちらかと言えば「日陰でひっそり」の存在のゲイやレズではあるが欧米では公言する人が結構多い。シリーズ「Ｌの世界」なんかではレズの生態が詳しく描かれているが、やはりゲイの世界となるとノーマルな男性（女性はどうかわからないが）は生理的な嫌悪感が先にたち、男同士のキスシーンには思わず顔を背けてしまうのはいたしかたのないところ。世の中いろんな人がいるのだから他人に迷惑をかけなければ同好の士が何をしようといいわけで、ヒステリックに目くじらを立てる必要もないとは思うのだが、アメリカは直ぐ「神の教え」をもちだしてくる、この辺りは宗教感の違いとでも言うべきところなのだろう。９５％のストレートと５％のゲイというのが事実ならこれはこれで一つの文化と言える。この作品でハーヴェイ・ミルクというゲイの先駆者を知ったし、作品としても奥深いものがあることは認めるが、もう一度見たいとは思わないのが正直な感想。

恐らくこの先も目覚めることはないでしょう。
従いましてゲイの絡み合いは抵抗感があり、見辛い部分があります。
どことなく冒頭のジェームズ・フランコ（最初の恋人スコット役）には演技を無理
しているように感じてしまった。まぁこれは気のせいということで。
それにしてもショーン・ペン氏は最高ですね。ほんとミルク氏ご本人と憑依一体
となって演じていらっしゃるようで、本作中は完全なるゲイでした。

作品としては非常によかったです。感動しました。併せて、偉業を成し遂げられた
一活動家として、ハーヴィー・ミルク氏の偉大さを大きく感じました。
私は同性愛者に対して肯定も否定もできないですし、劇中における彼の言動において
多少拒んだ部分もありました。しかしながら、彼のおかげで１人でも多くの人が
色眼鏡から開放されて、１日１日を楽しく過ごしている光景を見ると嬉しくてなりません。

僕はタイトルどおり異性が大好きです。人生は楽しいです。恋愛も楽しいです。
どちらにおいても苦しく辛いことはあります。ありました。今後もあるでしょう。
でもそれを味わい、それ以上の楽しみを今後得たいと思います。得ます。
それをやっぱり味わえるのは、この世に生まれてきたからこそです。
この世に生まれない限り味わえません。楽しいことはみんなで分かち合う。
同世代だけではありません。次世代の人たちとも分かち合う。
だからこそ異性を愛します。子孫にもこの人生という遊び場を提供したいからです。

だからこそ、僕はトリプルエクセレントのヘトロセクシャルであり続けます！

同性愛者の方々に僕の想いや考えを強要するつもりはまったくありません。
少数派の方々であっても、大きな夢や希望がそこにある限り、存分に楽しんで
人生を謳歌してほしいと思います。

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日本でも性的マイノリティの存在が以前と比べ認められてきたとはいえ、日本でゲイを公表して政治活動を行っている人は、尾辻かな子さんぐらいしか私は知らない。

この映画でほのめかされているように、権力が行う差別というのは表立たないので恐ろしいものを感じる。ダン・ホワイトが元警察官であり、二人の殺人を犯しても５年で出てこれた、というのはやっぱり犯人は警察なんだろう。

こういう映画を見ると、日本でもどんどんカミングアウトして政治に参加するべきだと、軽々しく言えない。ミルクのように立ち上がることも必要だが、周りの人々を大事にするのも同じくらい重要な事だ。その点、コミュニティの広がりは、家族のようでいいなと思った。

最後に映る、ミルク本人の笑顔を見たら、やりたいことやれて幸せだったんだなとホッとした。

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ミルクと同時代に日本にも東郷健というゲイ・アクティビストがいました。国政選挙、都知事選と泡沫候補と揶揄されながら何度も立候補していました。粋な着流し姿(公の場ではふさわしくない）の東郷健の政見放送を観た記憶がありますが、その政見放送はいろいろな意味でとても人の気持ちには届かない内容でした。
東郷と異なりミルクはネクタイ、スーツ姿に変身しストレートの心にも届く選挙演説に磨きをかけた結果、見事に地方政治の場ながら政治家になり得た劇的経緯はショーン・ペンのチャーミングで知的な演技もあって魅せました。
ショーン・ペン少々老けましたが演技の角が取れて理屈が奥に引っ込んだ役者として円熟期じゃないかしら。

ドキュメンタリの「ハーヴェイ・ミルク」ではミルクの暗殺の背景がいまいち掴めなかったのですが、犯人ホワイトの私怨だったことが分かって、マイノリテイの星になったミルクの志の高さをより感じることができました。
ラストは残酷なシーンなはずなのに、監督自身のミルクの死への万感の無念の想いがあふれていて美しく迫るものがありました。