チェイサー

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身じろぎも出来ない２時間でした。

ネオンの下の白金の闇、街灯点る灰色の闇、モノクロの昼、そしてまた漆黒の闇に目を凝らします。
闇に浮き上がる人間の白い顔と影、そこここにこびり付く黒にしか見えない血、濡れ鼠の全身、耐え難い湿度。
凶器の乾いた金属音、うるさい程の雨音、極端に少ないＢＧＭ。
暴力に次ぐ暴力。
じれったい程鈍くて回りくどい、元警官と警察側の思考と動き。
犯人の容赦無い残酷。
神経にこたえるシーンの連続です。

印象的なのは「追う」場面。
私には、ひたすら登り坂に見える焦燥感。
そして母親の死を悟った少女の、歪んだ「泣き顔」。
全身の慟哭、でも聞こえないその泣き声が、胸の奥に痛くて痛くて……。

折角闇から逃げ出したのに逃れられない運命と、もう逃げる気力も助けを求める気力も失せた、哀れな彼女の姿。
雑貨屋の奥に向けた元警官の叫びに、ボロボロでなお犯人を打ちのめし、狂わんばかりに彼女の生首を凝視する彼の眼に、身体中が瘧ってしまいます。

とことんの悲劇を「誘う」雑貨店のおばさんの存在は、被害者にも関わらず「思慮浅い無神経な女」の典型を見せつけられる思いがします。

この作品にモデルがある事実が、なおの事哀しい。
当時の報道に一瞬「切り裂きジャック」を連想した記憶がありますが、そんな趣もロマンも（殺人には不謹慎な言葉ですが）無い、ただ冷血なだけの事実です。

近年の日本映画にこの重さ、迫力はあるでしょうか。
食わず嫌いだった韓国映画ですが、目から鱗の衝撃でした。

久し振りの韓国大作！
宣伝で見たときから凄く楽しみにしてました。

まず、この作品。
有名な俳優さんは多分出ていません。（少なくとも私は知らない人ばかり。）
しかし、この作品に至っては出演者など気にする必要ないと思います。
なぜなら、ストーリーがもの凄く良く出来ているからです！
見なくても、その出来栄えのよさは宣伝から簡単に想像する事が出来ました。
それだけ、自分の中で期待をしていた作品なのです。

中身が「連続猟奇殺人」なので、惨殺シーンが多く苦手な方にはオススメできません。
しかしながらこの惨殺なシーンが、映画全体にわたり極度の緊張感を作っているのです。

韓国で稀に発生する事のある「猟奇殺人」。
それが、あまりにも頭の中でリアルにリンクして、なんとも言えない状況を作ってくれます。
容赦なく映画の中に引きこまれます！

この殺人犯に囚われた自分の仕事仲間。
助けたくても居場所がどうにもつかめない。

容疑者は警察で取調べを受けるも、証拠不十分で後に釈放される。
そして囚われた仲間に、釈放された容疑者の魔の手が再び襲いかかる。
そして、容疑者がそこに辿り着く前に助ける事が出来るのか？

かなり熱い作品でした！
終始にわたり、ドロドロとした何とも言えない雰囲気が漂いすぎてます。
しかし、それがこの作品の見所なのです！
好きな方には是非オススメします！
物凄く面白かったです！！

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暗くて　じめっとした、見ごたえあるサスペンス。
主人公は元刑事だが、決して良い人ではない。今は裏社会に生きていて
デリヘルを経営していて、揉め事は暴力で解決しようとする人。
でも一本筋が通っているところはある。
（↓かなりネタバレしてます）

いなくなったデリヘル嬢を探すのは、最初は仕事上の
金銭的な目的だったのだが、デリヘル嬢ミジンの娘に出会って
人間らしさを取り戻す。
やはり無垢な子供の存在は大きい。（この子役が上手くて可愛い）

でも、せっかく逃げたのに。
せっかく彼女を取り戻そうと必死に奔走してたのに。
人生にはラッキーな偶然もあれば、必死の努力が報われないこともあるのだ。

多くを語らず、映像で見せる演出もよかった。
アクションシーンも迫力があった。
水槽の首は安っぽくて、やりすぎな気もしたけど^^;

キャスティングもよかった。
主人公を演じていたキム・ユンスクの顔が
桑田圭祐に見えて仕方なかったけど…

かなり驚いたのですが、韓国って被疑者を普通に事務室に
手錠かけただけで座らせておくんですか？！
甘すぎるよ。大丈夫？？
監視が女性一人だけだったこともあったし。

泥臭い、韓国ならではのドラマだった。
これをハリウッドリメイク？無駄なのでは…

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アジアが舞台なのに、怪しく湿った夜の街の描写が、ヤケに垢抜けていて、そのオープニングだけで「韓国凄い！」と思わせます。日本映画界も頑張ってほしいなぁ。

内容も衝撃！！実話を基に、オリジナルの脚本で仕上げたのでしょうが、そのジメジメした描写とリンクして、何ともハラハラ、ドキドキ、イライラ、ガクブル…
観る側の期待や感情なんて、全く意に介せず、ノンストップでブチキレまくるストーリー。
そのラストですか！？あ、あり得ねぇ！！フィンチャーも真っ青の性格の悪さ！？救いが…

落ちぶれた元刑事で、デリヘル元締め役のキム・ユンソクと、草食系人畜無害風外見とは裏腹な異常猟奇殺人犯を演じる、ハ・ジョンウの演技対決が見もの。
ああ、確かに『ダーティハリー』の立ち位置に似ています。相対しながらも同じ狢というか…
主人公ジュンホが、人間らしさを取り戻すきっかけとなる、ミジンの娘を演じるキム・ユジョンが、何とも健気で可愛く、ジメっとした空気に唯一違う雰囲気の明かりを灯してくれますが…
それにしても、何とも重い、理不尽な持って行き方なのか…

「二度と観たくない」これは褒め言葉です。
★★★★

村上龍主催のビデオニュースを発信する「RVR」というサイトがあり、
そこでクァク・キョンテク、チョン・ユンチョル、イム・チャンサンの3人の韓国人監督との対談が
配信されているのですが、これがなかなか面白いんです。そこで話題の1つにあがっていたのは、
韓国映画界では新人監督に比較的大きな作品をポンと任せる風土があるということ。
その代わり失敗するとなかなか映画界には復帰できない、なんて冗談混じりに話してますけども。
任せる限りは全部任せる。その代わり失敗したら干される。
だからこそ、初監督作品を最高傑作にするくらいの意気込みで取り組む。
シビアな世界ですけど、チャンスが多いというのはいいことです。

本作は韓国では知らない人はいない程の有名事件を扱った作品ですし、
確実に興行成績をあげることが見込まれてもいたでしょうから、
そのプレッシャーたるや、相当なものだったんではないでしょうか。
しかし、新人監督ナ・ホンジンは新人とは思えない見事なクライム・サスペンスを作りだしました。
ひと際すばらしいのは前半部の夜の追走劇です。
漆黒の闇の中で犯人を追い詰めるジュンホ。
毎度のことですが、韓国映画は雨や闇を使った映像作りがうまいですね。
映画の中盤で犯人は捕まるのですが、その後のじれったいことと言ったら！
ハラハラを通り越してイライラになってきます。

この焦燥感を楽しめるかどうかが、本作の分かれ目ではないでしょうか。
これまた毎度の事ながら韓国警察のいい加減さが顕わになりますが、
20人も人を殺したと自供する男を部屋の片隅で手錠ひとつでほったらかし。
ほんまでっか？と誰でも突っ込みたくなります。
ほぼクロ間違いなしという猟奇殺人犯を泳がせる時もあまりに手薄。
そりゃあ、危なすぎやしませんかい？
というわけで、後半部は警察の無能ぶりに私のイライラも頂点に達してしまいました。
それでも、これでもかと突き付ける迫力は満点。
情け無用の展開がこれまた「ザ・韓国映画」でございます。