ぐるりのこと。

橋口亮輔監督の6年ぶりの作品。

橋口監督の映画はどの作品も心にしみて、じわじわと人間の愛おしさとか面白さを伝えてくれる。
心の動きや人と人のつながりを、繊細に丁寧に観せてくれる。
観終わった時、なんだかすごく身近に感じてしまう。
すごく色んなことを考える余韻のある作品が多く、その時の自分の環境や心の状態によって、
与えられる思いは様々である。
そして、最後には優しい生きるための希望をくれる。

自分の中の大好きな監督の中の一人だ。

そしてこの作品。

「ぐるり」とは、自分自身の身の回り。
自分を取り巻く様々な環境のこと。

社会では大きな事件がたくさんあるけれど、人それぞれにも色んな事件がある。
それは当の本人以外には小さなことに見えるかもしれない。
でも、当の本人にしたら、大きな大きな出来事。
そして、いろんなことがあるけれど、近くには誰かがいてくれる。
時々、めんどくさかったり、うざかったりするけれど、いつもそこにいてくれる。

何があっても離れない。
そんなぐるりをもつ夫婦の日常は羨ましくもあり、いとおしさを感じる。

生きているといろんなことがある。
いいことばかりじゃない。
消せない過去や忘れたい出来事、
どうにも出来ない現状ややるせない思い．．．

だけど、そんな経験の元に今の自分がいる。

でも、誰かが傍にいてくれるだけで、少し気持ちが軽くなる。
そして、喜びは多くなる。

この作品を観て、ある友達はリアルだと言った。
ある友達は理想だと言った。

そして、今の自分は少し切なく思った。
家族や友達はいる。
だけど、まだ最も近いぐるりにいつも一緒にいたい・・いれる・・大切なひとはいない。

またそういう人が出来た時、感じることも違うと思う。
その時に2人でまたこの作品を観たいと思う。

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　「めんどうくさいけど、いとおしい。いろいろあるけど、一緒にいたい。」
　
　これは本作のキャッチフレーズですが、作品の質感を語るうえで非
常に優れたフレーズだと思い、引用しました．普段あまり意識しない
“人とのつながり”というものが、やはり私たちの生活の根幹をなすも
のなのだと改めて感じさせてくれる、とても良い映画でした．

　私が感じたこの作品のテーマは、人と人とのつながり、特に夫婦の
つながりとはどういうことか、ということでした．本作でそれがどのよう
に扱われ、描かれているのかを個人的感想を交えてまとめました．

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　本作の主人公である夫婦は、好きだから一緒にいたいという非常に
純粋な、だからこそ強固な“思い”を共有することで、破滅的な状況か
らなんとか抜け出します．この“好きだから一緒にいたい”という純粋な、
ある種ファンタジックとすら言える結論をどこまで観客に受け入れても
らえるか、それが本作のチャレンジであり、個人的には本作はそれに
見事に成功していると思います．

　本作は夫婦それぞれの視点を巧みに入れ替えながら、2人でいる
からこその食い違いも描いたうえで、それでもこの2人が一緒に生きて
いくことの意味をまさにキャッチフレーズ通りに描いていきます．
　
　食い違いということで言えば冒頭の規定日Sexなんて男からすれば
勘弁してよというものですし、ハイライト的な雨のシーンも最終的には
思いを伝えられたから良かったものの、最初はなんかわかったような
ことを言って余計に傷つけてしまう、気持ちが聞きたいのに正解を言お
うとしてしまう、というのをちゃんと描いています．そこがしっかり描けて
いるからこそ、純粋な思いへの着地が欺瞞的でなく受け入れられるの
だと思います．立ち直った後の翔子は本当に美しく、観客はカナオが
もう一度翔子に恋をする心情をともに体験します．なるほど好きだから
一緒にいるんだよねというのがすとんと胃の腑に落ちるのではないで
しょうか．

　また、夫婦間のやり取りだけでなくその周辺の設定や演出もとても
丁寧で、最終的な帰着への説得力に厚みを増しているように感じま
す．翔子と家族の関係からは翔子がカナオの自分(たち)にはない心
の広さに惹かれることや、どうしてそこまで“ちゃんとしたかったのか”
が読み取れますし、人とのつながりを消失する居た堪れなさ、悲しさ
の象徴として重大事件の犯人とそれに立ち会う仕事という設定が効
いています．他にも蜘蛛(=命)に対する過剰な反応など非常に納得度
の高い場面ばかりです．

　もし敢えて気になったことを言うのであれば、リリー・フランキーという
人の存在感についてはあるかも知れません．もちろんこの人でなけれ
ば本作の独特の質感の多くは失われてしまうでしょう．ただ明らかに
普通じゃない人に淡々と普通の人を演じられると「そんなに達観でき
ねぇよ」とちょっと置いていかれる感覚があります．この人は慟哭しな
いの?と思います．一か所でもカナオがリリー・フランキーを飛び出す
瞬間があれば、と欲を言えば言えなくもないです．

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　予想通り書くのが非常に難しかったですが、良い映画を観たという
感覚だけは断言できるところです．是非円の中にいる人と一緒に観て
みてください．

リリーフランキー演じるさえない夫と木村多江演じる「がんばる」妻。どこにでもある夫婦の物語です。親とのこと、子供のこと、夫婦のこと、仕事のこと、当たり前の日々が当たり前でなくなること、幸せってなんだろう・・・って思えてることが幸せなのかもしれないと感じられる作品です。もちろん、既婚者にお勧めです。自分の体験じゃないんだけどなぜか自分のことのように見れてしまうのは、主演の二人が醸し出す夫婦の生活観に自然とシンクロしているからでしょうね。

リリーさんは、そのまんまではまり役。
素敵な人だなー。

「ちゃんと」って…。

いくつかの事件の法廷シーンがあるんだけど、裁かれている人って「カナオのような人に出会えなかったんだろうな…」なんて考えてしまいました。

『ぐるり』＝『自分のぐるりに居る人々』かな？