キング　罪の王

ある一人の青年の出現により、それまで幸福に暮らしていた神父一家が、取り返しのつかない不幸のどん底に突き落とされて行くという、怖ーいお話です。
その青年が生まれつきの悪人でも、筋金入りの凶悪犯でもなく、ただ普通の、海軍を除隊したばかりの大人しそうな青年だということがなおさら恐ろしい。
よく事件がおきると、犯人を知る人は「とても悪い事をするような人には見えない」と言うが、まさにその通り。

いかに神を信じ日々祈りをささげていても、不幸から逃れることは出来ないのだ。
一度狂い始めた歯車は、とことん悪い方へまわっていく。
信心や宗教は本当に人を救ってくれるのだろうか。

何がこの青年をここまでの凶行に駆り立てたのか。
単に父親に対する復讐だけでここまでするのか。
そこら辺が私の中で未消化で残ってしまいました。

このまま終わるなよ〜〜
と願いつつも
想像どうり後味の悪い結末。
まぁ、内容が内容なだけに、、

あえて復讐の感情を表現せず
罪と懺悔に焦点を当てているので
ガエル氏相当な難役をこなしてます。

キリスト教の事はよくわからないけど
B級映画に出てくる牧師って
罪深き人が多い気がする。

この復讐劇は大昔に観たアラン・ドロンの「太陽がいっぱい」に似ていると思った。
勿論復讐の対象やシュチュエーションは違うけど同質なように思う。
兄を殺されたと分かった妹は出会って日も浅い殺人者の恋人を信頼するものであろうか？それだけは疑問だ。
「太陽がいっぱい」は完全犯罪を成し遂げたと思った矢先思わぬ落とし穴が待っているのだが、この作品はあくまで復讐の結末を父親に認知させることにあるのだろう。
それにしても観て良かったと思える作品ではない。

父親が、あんなふうにエルヴィスを拒まなければ、こんな惨事は起きなかっただろうに・・・と思うと哀れです。
全ては父親が撒いた種なんですが、破滅でしかありえない結末には、私も父親に同情してしまいました。
どうでもいいけど、１６歳の娘役演じた女優さん、当時２７歳だったそうな・・・。びっくりです。

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　果たして、懺悔すれば罪は償えるのか、許されるのか、全てがチャラになるのか。。。
　
　初めてエルヴィスが父親に会いに行った時、無残にも「懺悔して許しを得たから、、、」と父に言われ拒絶されてしまう。
　この時の父の言葉が最後までエルヴィスを突き動かしていくことになったのだろう。

　それからの彼の行動は、表情からすると、本当に無邪気で全く裏が無いように見える。まるで妹を本気で愛しているのように思えるし、愛する妹に会えなくなってしまう胸の痛みを分からせようと思って兄を刺し、「痛いだろ」と言ったのかと思ってしまうほどで、表情からでは彼の気持ちの深さが量れない。

　しかし、表情からでは計り知れないが、カメラのアングルからは、彼がじっくり獲物を狙っている緊張感がひしひしと伝わってくる。
　なのに、明るい音楽が流れ、目の前で起っている出来事を重たく感じさせず、アメリカでの問題を日常的に思わさせられる。
　
　ついに一家と暮らすようになったある日、神父である父が教会の人の前で自分の過去の罪を打ち明け、エルヴィスを「罪の子」と呼ぶ。父親に「罪の子」と面前で呼ばれた彼の気持ちはどれ程であっただろうか？
　こんなに人の気持ちを少しも分からない人間が神父であることの恐ろしさに驚かされる。
　しかし、エルヴィスは喜びに満ちた笑顔を浮かべ、照れくさそうに「よろしく」と言い神父と抱き合う。
　
　これを期に、エルヴィスの復讐は終焉へと突き進む。

　果たして、どこまでエルヴィスが復讐の結末を想定できていたかは、私には分からない。
　
　しかし、この罪の連鎖の始まりは、父親がエルヴィスの母である娼婦を妊娠させ、捨てたことにあるのだ。その場を逃れても、きっと「罪」は巡り巡って我に返ってくるものなんだと思う。そして初めて人は、その自分が犯した罪の重さを思い知るのだろう。
　「神」を信じ、祈り、懺悔する意義とは？深く考えさせられる映画だ。