欲望

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観ながら浮かんだのは、例えばケネディ大統領暗殺現場の謎、
あれは弾道解析に照らせば草むらの方角にも狙撃者がいるのが道理。
ここではバネッサ・レッドグレーブの視線の先。これに注目。

モデルの撮影にも飽きて街に出たカメラマンは
公園でいちゃつく男女（中年紳士風と若い女）の写真を盗み撮りしていた。
それに気付いた女（レッドグレーブ）が必死にネガを取り返そうとする。
カメラマンを追跡し身体まで差し出して。
何故そうまでするのか・・・。現像写真の中に何かを発見したカメラマンは
その箇所を際限までblow up（原題・引き伸ばし）てみるが拡大する程にイメージは抽象化する。
果たしてカメラは真実を捉えていたのか・・・映画が導き出した答えとは。

これは既成の概念でしか物事を捉えようとしない人間への皮肉のようにも見える。
プロペラ、ギター・ネック・・・パントマイム集団。
コートの外に転がるテニスボール、カメラもカメラマンも
そして既に観客も眼で追っているという錯覚。
やはり人は真実をみる気など、さらさら無いのだというように。

デビッド・ヘミングス（イントロダクションにトーマスとあるが初耳です）は
例えばソダーバーグ監督「sexと嘘とビデオテープ」の主演ジェームズ・スペイダーにように
ミステリアスなプレイヤー。作品に不可解な奥行きと膨らみをもたらす。

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論文のような映画というより「映画の姿をした論文」のような映画。
テーマは「全体の意味から切り離された部分の無意味」であるが、ラストシーンでミステリーのどんでんがえしのように「無意味になった全体」が提示される。
ギターのネックはギターという意味から切り離されると意味を失う。デモのプラカードも同様。
一方、ボールのないテニスは無意味であり、ボールが虚無であるのでテニスが虚無になる。部分がなくなれば全体も虚無になる。
世界全体の意味から切り離されてしまえば世界の部分としての「私」も同時に無意味にならざるを得ない。世界が空虚にみえるのは「私」が空虚であるせいだけれども、それは世界が空虚になったからだ、と結論しているように思える。
「夜」や「日食（邦題「太陽はひとりぼっち」）」では空虚で無意味になったジャンヌ・モローやモニカ・ヴィッティーが、それまで意味と価値を世界に与えていた太陽の死によって、無意味で無価値な瓦礫の山と化した街をさまよっている。
それ自体が謎である事件全体の一部を「クローズ・アップ」しても無意味にしか到達できないのであり、「私」の空虚を埋める事はできないのである。

いわゆる起承転結というような物語性を期待するとがっかりすると思いますが、イントロのサスペンス調の展開には引き込まれます。ところが事件性を思わせるテーマが表示されながら、話が進むにつれ、その事件が実際にあったことなのか虚構なのか、判然としなくなります。見たり触ったりしたものは実際に存在すると疑わない、そんな感覚が危うくなるというか、揺さぶられるような不安な感覚を味合わせてくれる、今見ても古びない傑作です。あとアントニオーニの作品全般に言えることですが、絵がとてもいいです。

途中で止める。映像はさすがにきれいだが、展開がよくわからない。何が言いたいのか、どうしたいのか。だからひねりの前にやめた。

音楽はh ハンコック。舞台はイギリス。ファッションは６０年代のミニスカートのワンピースが多くて・・・。イギリスの町もそのままが描かれていて、特にかっこよくとったみたいに作ったかかっこよさではなくて、そのままを生かしている・・・みたいな図になっていました。ストーリー性よりもそのビジュアルのほうが取り上げられそう。

ファッションは凄く参考になった。