アメリカの夜

ここでもトリュフォーはド直球に映画を信じ切っていて全く迷いが無いのだ。映画こそ人生で、人生こそ映画なのだと。
だからこそ、僕のような捻くれた映画好きの胸をも打つ。

しかし、あなたはそのうちスタジオで映画を撮ることになりますよ、と50年代の若きトリュフォーに言ったら吃驚した顔をするんじゃないだろうか。
ドルリューの名曲はウェス・アンダーソンが「ファンタスティックMr.FOX」でも引用していたな。

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「映画好き」にも二種類あって、「映画」という「表現形態」そのものが好きなヒトと、私のように「映像、音声付き小説」としてのみ好きなヒトにはっきり分かれると思う。無論前者は後者を包含するから、後者は「映画好き」の中では狭量・偏屈な少数派なんでしょうね。

この映画は正に「前者」のための映画です。「前者」には自ら映画製作、またはそのマネゴトに関与した敬遠のあるヒトが多いが、レビューの大半が言っている通り「メイキングを映画にした」ような映画なので、そーいうヒトたちには何とも「愉しくて堪らん」映画なんでしょう。しかもあの「トリュフォー」ですから。「映画への愛が溢れている」「映画を愛する人ならこの映画の素晴らしさが分からないハズは無い」・・・。
分からんでも無い。が、やはり「小説」「ストーリー」として私にはモノ足りないと言わざるを得ませんね。まぁフランス映画はほとんどそうですが。
原因は明らかで、この映画で唯一「ストーリー」を形成しているのはジャン・ピエール・レオー演ずる若い俳優アルフォンスの行動なんですが、そのキャラクターは殆ど最近の日本の一発芸人そのもので、リアリティも無いけどコメディアンの芸も無く、ただのＫＹです。トリュフォー自身が演ずる映画監督フェランが彼を「パメラ」に起用した理由が全く分からない。映画作りって大変だけど、意外に「いい加減」なとこもたくさんあるって「内幕」見せられたあとだけに、このアルフォンスのキャラ設定もトリュフォーの映画「アメリカの夜」の「いい加減さ」そのものなんじゃないか？と思えてしまう。このアルフォンスの存在以外には「ストーリー」何にも無いんですからねぇ。
ま、カタいこと言うなよ。愉しけりゃいーじゃん、って言えば全くその通りですけどね。ジャクリーン・ビセットが大変キレイで（特に背中が）魅力的だっただけに、残念な映画だと正直に言わせてもらいます。

スタートの街並のショットから、計算された構図、色彩など映画の世界を作るトリフォー。その映画裏まで映画とするトリフォー。
この出だしで傑作であること間違いなしだと確信。

しかし、その確信は徐々に揺らいだ。

それは、しつこさだったのではないかと思った。

「浜辺のカフカ」の中で村上春樹が書いているのを引用すると、
―ハイドンの音楽からフランソワ・トリフォーの作品にも通底するものとして「柔軟な好奇心に満ちた、求心的かつ執拗な愛精」―
とある。

求心的というのがこの作品にどれほどあるのかわからないが、柔軟な好奇心に満ちた執拗な愛精は感じたように思う。

つまり子供のようにしつこい愛情を受け止めるだけの寛容な心を持ち合わせていないと言うことなのか。確かに子供は苦手。

石頭になる前にもう一度観賞してみたい。それにしてもフランソワ・トリフォーという名前は実に気品のある名前だと思う。

特典インタビューの中で言われていたけど、
事象でなく、人物を描いているから、この作品は古くさくならない。人が集まって何かをするということ、映画を「つくる」ということを実によく描き出していて、「映画づくりに対する愛情」が作品全体から感じられてくる。
自分の人生や会社、仕事に対する姿勢や見方に、何ていうか影響を与えてくれたと思う。
淡々とした中に描き出される、大きな意味でいう「愛情」は、映画好きな人なら一度は見るべき。

映画が好きで好きでどうしようもないんですね・・
ジャクリーンビセット、こんな可憐な時もあったのかあ。かわいいです。
ところで、他のトリュフォー作品入荷して下さい！！