第三の男

　　残されたハリーの恋人アンナと知り合ったことで、彼女への興味も手伝い、ぐんぐんと事件の真相に迫っていく展開がスリリングでした。
第二次大戦後のオーストリアは、アメリカ・イギリス・フランス・ソ連の占領下に置かれていたそうで、その頃の雰囲気もよく出ています。
恋人アンナの旅券が偽造である件や、闇取引が後を絶たない時代の暗部も、作品を盛り上げていました。

テーマ音楽は耳に馴染むあの曲!　
エビスビールのテーマ曲が「第三の男」のテーマだったとは〜
チターと呼ばれる楽器の音だそうですが、軽快さがなんとも映画のテンポに良く似合っていて素晴らしいです。
耳に残り、なにより、ラストのあの切ない情緒いっぱいのシーンに余韻を残して響くのがいい！

どのシーンをとってみても絵になる映像の魅力と、サプライズの用意された先の読めないストーリーは、名作と呼ばれるのも素直に頷けてしまいます。
終盤の逃走劇も秀逸です。
反目しあう少佐とマーティンの、少しずつ変化していく関係にも注目。
そして、ハリーを忘れられないアンナに惹かれてしまった、マーティンの恋の行方も目が離せません。
ハラハラと落ち葉舞う並木道で、遠くから歩み来るアンナをじっと捉えた長回しはかなりグー。
すれ違いの余韻がたまりませんでした。

オーソン・ウェルズってこんな顔だったんだ。ラストの風景と音楽が合っていた。

話も面白いし役者もいい、演出も音楽も非常によく出来ているといった、非の打ち所のない作品です。だれがどのようにいつ見ても面白いので、まだ見ていない方は絶対見た方がよいでしょう。いろんなところで余りにも語られている作品なので、いまさらそれに付け加えることもありませんが、教科書みたいな映画です。有名なラストシーンはやっぱりいいし、セリフがいちいち名セリフですし、オーソン・ウェルズの迫力は凄いです。映像も実に綺麗で、これを見るとウィーンに行きたくなります。

　
　あまりに有名なアントン・カラスのチター主題曲。
　大戦後、疲弊しつつも帝政・古都のたたずまいを
　失わないウィーンの暗い品格。
　プラーターの観覧車。

　カメラアングルや陰影礼賛、オーソン・ウェルズの名演など
　語り草になっている往年の名作。

　ハリーの恋人役アリダ・ヴァリは「夏の嵐」
　（ヴィスコンティ）の主人公。
　

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　序盤は、親友の死に立ち会った人物達に話を聞いていき。そして親友の恋人とのやりとりが続きますが。これがちょっと退屈でした。45分過ぎに事件の目撃者の門番の死をきっかけにしてやっと転がり始めるといった感じでしょうか。それでも、第三の男が暗闇から姿を現す有名なカットが出てくるまで。ここに来ないと動きが遅いようにも思えます。

　事故現場に居合わせた第三の男は誰なのか?　から第三の男の正体。第三の男の目的、悪の論理。ちょっとわかりずらかったのは、ハリー・ライムの目的で。映画に登場するまでの背景が全くわからないので主人公と20年来の親友というだけの情報しか与えられないので、主人公が盲目的にハリーを信じるのがわかりずらかったです。

　とは言いつつ、話の強弱のつけ方は最高で。緊張感あるシーンが続くかと思いきやコミカルなシーンが差し込まれたりして意外性を感じる作りになっていました。タクシーで拉致されたと思ったら講演会ってくだりは最高です。
　今見ると、陰影を強調した映像にやたらと斜めの映像はちょっと狙いすぎでしつこい印象を受けました。
　
　それに、ペニシリンを安く売りつけ使用した人たちは廃人になってしまうことを知り犯罪は許せず友だちを売ることになりますが。ヒロインの存在により、何故か主人公が悪くなるような展開がものすごい切ないです。

　何といっても、この映画はラストカットが素晴らしくこれだけのために100分間見てよかったと思えるくらい美しくそして悲しいショットで最高でした。