アルキメデスの大戦

本作の冒頭２０分くらいで、本作のキー部分であるところの、戦艦大和撃沈のシーンがあるのですが、そこらへんが、ハリウッド顔負けのコンピューターグラフィックを駆使して予算の大半をかけたる本作の見どころだと思います。

その延々と続く、戦艦大和対アメリカ航空戦隊の戦闘のワンシーンで僅か１分位のシーンで、とてもただ事とも思えないくだりが見て取れます。

戦艦大和の砲撃手が、やっとの思いで一機のアメリカ戦闘機を打ち落とすのですが、その敵機のパイロットは墜落する戦闘機からパラシュートで脱出するのです。
しかし、そんな戦闘が繰り広げられてている海に降りてどうなるものか。
誰も助けになんか来ない冷たい海の中で、凍え死ぬか、サメにでも食われるか、もし、この何時間にも及ぶ戦闘ののち、我々が勝ったなら、まあその時まで流れ弾にもあたることなく生きていたなら、捕虜ぐらいにしてやってもいいいか、ざまみやがれ、と思っていると、一機の決死救助飛行機みたいなのが飛んできて、海面に着水しその、パラシュートで落ちた兵隊を救い上げ飛び去っていくのです。

その光景を目の当たりにした大和の兵隊は、只々ポカーンとします。

ああ、自分達日本兵は特攻に使われるくらい、切り捨てられる命なのに、敵アメリカは一人ひとりの兵隊の命をあんなに大切に思ってくれる国なのか。
そう思った時、その瞬間日本は負けたのでしょう。

戦意喪失ってやつですよ。

原作を読んでいないので、その辺は、原作者の気持ちなのか、監督の気まぐれなのか分かりませんが、

本作は、先の大戦で、日本が敗北したことを、フィクションで紐解いた一作ですが、実は作品の意図がこの辺りに感じられたように思いました。

人物設定もストーリーも面白く130分のやや長め作品ですが充分に楽しみました。

ただ細かい不満はあってセットがちょっと安っぽいのが目立ってしまったか。あとクライマックスでの菅田将暉と田中泯の演技が少し噛み合っていない気がしたのが残念。

だけど邦画で太平洋戦争を舞台としてのこのような完全フィクションストーリーの映画が製作されたことは凄く意義深いことだと思う。フィクションならではの映画内大和建造理由には感心しました。

出演者全員役に合ってたと思います。菅田将暉さんと柄本佑さんとのコンビも良かったし二人の演技が良かったです。映像もすごくて最初の戦闘シーンは圧巻でした。
山本五十六さんってヒーロー的扱いされてるけどこの映画で違う見方が見えてすごく考えさせられました。
実話ではないのだろうけど実話なのかなと思ってしまうほど見ていて色々考えさせられました。
見ていてすごく引き込まれたし面白かったです。

第二次大戦直前、戦艦大和建造を巡る軍部と造船会社との癒着、軍部内での権力闘争をめぐり、数学の力をもって軍部の不正を暴くというコミックの実写化。

主人公の天才数学者を菅田将暉、バディ役の海軍少尉を柄本佑、ほか、舘ひろし、國村隼、橋爪功、小日向文世、浜辺美波、田中泯、笑福亭鶴瓶、角替和枝などがキャスティングされている。

「これは、数学で戦争を止めようとした男の物語。」というコピーが謳われているが、これには疑問が残る。
大和が建造されなければ戦争は回避できるという論法にはならないわけで、そもそも建造費の見積に疑惑があり、それを数学で暴いたという話。
天才数学者の見つけ出した数式が最も重要な意味を持つのだが、計算のもとになる測量方法が結構杜撰で、メジャーを広げて手当たり次第に測っていくだけ。
これでは誤差が出すぎて、どんな正確な数式を編み出しても結果はだめだろうと思った。

とはいえ、映画としては面白く、２時間を超える作品だけど、一気に観ました。
特に、冒頭の大和の戦闘シーンは「男たちの大和」を彷彿させるが、血なまぐささ（＝戦争の悲惨さ）はなく、ちょっとあっさりしすぎかなと思うが、ある意味、この映画のハイライトかもしれない。

世の中の全てを数字で考える人
すごいと思うけれど、
危険だとも思う。