万引き家族

　評価の良い噂で楽しみにしていたが、観終えて、うーむという感じだった。万引きという発想は面白いが、現在の監視社会でバレないのもおかしいと思う。しかし絆や愛情というワードを前面に表出させながら、家族の正体を明かさず、推理的な面白味を出すあたりは、是枝監督のテクニックともいえる。
　とはいえ作り手の思いが強いせいか、メッセージ性は届いても、ドラマ的な面白味が足りなかった。路線から外れない確実性が、物語の広がりを狭くしている。ただ、樹木希林や安藤サクラの演技は感情が表れていて印象に残った。
　問題提起にはなっているが、解決策が描かれないもどかしさがある。これならドキュメンタリーでも良いと思う。「三度目の殺人」の方が迫力はあったかな。映画はもっと不真面目でも良いのでは無いかと思う。★★★☆

「万引き家族」（2018、AOI pro／フジテレビ／ギャガ、カラー、120分）。
是枝裕和監督（1962生）はこの作品で、第71回カンヌ国際映画祭の最高賞パルム・ドールを受けた。脚本も書いている。
年金生活も底が見え、年金を受ける人が死ぬと、一家は生活困苦になる。でも、生きていく「すべ」はある。その「すべ」は「わらしべ」もように細くても、守るのが人間の本性。この映画の「柴田初枝」（樹木希林）の強さ、淋しさ。彼女の年金に寄生して、万引きを「業」とする若い世代の情けなさ、みじめさ。それだけで終わらない。
この映画には、二つの側面がある。年金受給予備軍として書いておきたいことがある。
【１】 一人の年金暮らしでは最高二人までしか生きていけない
年金は、毎月の労働ともに積みたててきたもので、勤続年数に応じて月額が決まっている。今は「介護保険料」で１割ほど天引きされる。引かれた月額で、満額20万円くらいのものだろう。年金の受給開始の65歳までに「２０００万円」程の貯蓄がなければ生活は苦しくなる──前・財務大臣・麻生太郎の発言だったが、これが現実の問題である。若い人は早いうちに自宅を買ってローンを完済したほうがいい。マンションよりも、狭い古屋でも一戸建てがいい。賭博好きの人は今すぐやめたほうがいい。これは経験と伝聞と観測で言う。死んだ老人を床下に埋めて、年金を受給し続けても、民生委員の国勢調査で発見される。
【２】 生きていけない場合、「万引き」で生きていけるか
問題外。しかし、この映画は、ここから始まっている。ちょっとでも労働すれば良いのに、母の年金と「万引き」で暮らす「治」（リリー・フランキー）と若い妻「信代」（安藤サクラ）の交接途中、しとしと雨が降ってくる。真面目に将来を考えれば絶望的な状況なのに、なぜか明るい楽天性は、「映画」では救いかもしれない。この一家には、あけすけな会話があり、ネグレクレト（育児放棄）された子供「ゆり」（佐々木みゆ）がいる。とてもいいかげんな家族なのだが、他の「万引きしていない家族」よりも幸福に見せたのは、監督の脚本と、達者な俳優の上手。「わあ、すごいシミ」と死期を悟った「初枝」（樹木希林）は、一計を案じた。
僕らの貯蓄した年金を、厚生労働省の役人が横領していた事件があった。こいつらこそ、年金と万引きで生きている、この疑似家族を見習えばよい！　執行猶予がついて、今はのうのうとしているだろう。

つまんなくて最後まで見れなかった

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

実際にあるんでしょうね、こういう底辺層の家庭。
作中のような、血の繋がりのない疑似家族がいてもおかしくない。
そして、親の虐待、ネグレクトの問題。
全世界に共通の問題なのだろうけど、舞台は日本。日本にもあるよね。

こういう人達の犯罪レベルの意識は低いパターンが多い。
この疑似家族は“盗み”レベルの意識だけど、他方を見れば、人を傷つける事に何の罪の意識を持たない人種も存在する。
そんな人達でも、人情に厚かったりする。
この疑似家族も、だからこそ弾かれた子供を保護してしまう。
それが、後に傷口を広げる事にもなるのだけれど…

万引きを繰り返しながらも、楽しそうに明るく懸命に生きる疑似家族。
その家族を決して肯定していない描き方に好感が持てた。
やがて崩壊する疑似家族。
楽しかった思い出は残るかもしれないが、その先にあるのは空虚感。
そして、本当の家族の元に“無事に”帰れたりんちゃん。
親のネグレクトが再び…りんちゃんの先を案じてしまう。

“絆”って何だろう?
いろいろ考えてしまう。
日本においても、社会の闇は深くて答えはない。

疑似家族を演じた、樹木希林、リリー・フランキー 、安藤サクラ 松岡茉優 、城桧吏 、佐々木みゆが本当に素晴らしい。
安藤サクラはもちろん、松岡茉優も体当たりでJK風俗やってたし。
リリー・フランキーはヤサぐれたダメ親父が似合う。お兄ちゃんの城桧吏も自意識が芽生える少年役がピッタリだった。
樹木希林は安定感。セリフが聞き取れなくても安定感笑。
りんちゃん役の佐々木みゆちゃんがいい!!実にいい!!
AmazonのCMで初めて見て、いい雰囲気持った女の子だなと記憶してて。
だからこそ、りんちゃんを案じてしまうんですよね…

見終わってもザワザワする作品。
ですが、柄本明演じる駄菓子屋の親父に世間の温かさを感じました。

是枝裕和監督の作品を観たのはこれが２本目。前に観たのは「誰も知らない」（２００４）で、これもちゃんとした親にめぐまれなかった子どもの不幸を描いていた。が、それよりは、この「万引き家族」の方が多少よくできているかも。安藤サクラが愛情豊かな極楽トンボ女をうまく演じていたし、 リリー・フランキー とかいうオッサンも情けない男のふらふらした心情をうまく演じていた。
が、結末がない。作者には何か言いたいことがあるようなのだが、本人も何を言いたいのかわからないらしい。
尚、樹木希林の役どころは奇妙なもので、何を思って生きているのかさっぱりわからない。フランキーやサクラとどういう関係なのかも不明だし、カルタの女王がなんで希林について来たのかも不明。
考えれば考えるほどへんな映画だった。