真夏の方程式

容疑者Ｘの献身に続くガリレオ劇場版第２弾。
海辺の町に向かう電車での湯川先生と山�ｱ少年の出会いから哀しい結末まで、ほぼ原作通りに進みます。
捜査する岸谷刑事役の吉高さんはちがいますけどね。

夏休み、海辺の町で起きた事件。事故なのか殺人なのか。
湯川先生は苦手な子供・山�ｱ少年との交流と被害者が元刑事ということから謎解きにかかわっていくのです。

謎解きの実験・検証は物理学を要した難しいものではありません。むしろ夏休みの宿題としてペットボトルのロケット発射が微笑ましくていいシーンでした。
東野圭吾さんもパンフレットのなかで
映画では、私が頭で描いた映像が見事に再現されています。いえ、私が想像していたものよりも美しいものに仕上がっているといっていいでしょう。
そしてその映像に引っ張られるように、これまでのガリレオ・シリーズとは趣の異なる物語が、情感豊かに表現されていると感じました。
と引用させてもらいましたが、見終わると夏への感傷を思い出すことでしょう。
それにしても民宿の娘役の杏さんは役の上とはいえ見事な日焼けでしたね。あれは良かった。リアリティ感じました。


ラストに少年と湯川先生は駅で別れのひとときがあります。観客も片棒を担いだんじゃないと伝えたい切ないシーンでした。

評価７７点(１００点満点)
おなじみ東野圭吾原作のガリレオシリーズの劇場版で物理学教授湯川学(福山雅治)が登場するが本作は謎解きよりも登場人物の織りなす人間ドラマの比重が高い。
開発計画に揺れる美しい海辺の町で真夏の夜に起きた不可解な殺人事件の裏側に潜む真実は水晶の輝きをもつ玻璃の海とは対照的に哀しく暗いものだった。
いつものガリレオ先生と異なるのは、今回は湯川の方が警視庁の友人から依頼を受けるよりも早く積極的に事件解明に動いていることと、大嫌いな子供と過ごす時間が多い、
一緒に動く女性刑事が吉高由里子に変っていること。
「ある人物の人生が捻じ曲げられるかもしれない」という危惧で湯川は、この殺人事件の被害者元刑事からつながる１６年前の事件から湯川が宿泊している旅館の川畑夫妻と娘の成美が抱えるそれぞれの秘密を明らかにしてゆくのだが、そこにはお互いを深く愛する故の真実があったのだ。
本作はこうした人間ドラマに科学技術と環境保護というもう一つのテーマを絡ませている。海底開発に反対するグループに強く肩入れしている成美に湯川は言う、「全てを知ったうえで結論をだせ」いかにも物理学者らしい言葉だがこれは成美の今後の人生にも大きな指針となる。
知らず知らずのうちに事件に関わった無垢な少年を気遣う湯川の優しさもなかなかよい。
湯川にとって玻璃の海辺での一夏はホロ苦いものになったようだ。

『容疑者Ｘの献身』が鮮やかだったので期待したが、本作品はＴＶドラマのスペシャル版みたいな出来映えだった。
夏、海、秘密、殺人事件……、個人的には好みのシチュエーションだったのに、これはダメだった。(溜息)

――海底資源の調査を監修するために海沿いの町にやって来た物理学教授の湯川学。緑岩荘に宿をとるが、宿泊客は彼を含めて２人しかいなかった。
ところが、翌朝、もう１人の宿泊客が、海岸で遺体となって発見される。堤防から足を滑らせ、岩場で頭部を強打したように見えた。
しかし、遺体の男が、警視庁の警部だったことが分かり、俄かに捜査は熱を帯びて来る。やがて、彼の死因が一酸化中毒であったことが判明。他殺となれば、犯人は誰か？　彼がこの地にやって来た理由は？
緑岩荘を営む家族や16年前の殺人事件、服役した犯人、捜査を担当した刑事……、彼らを繋ぐ糸は何なのか、さまざまな疑問が飛び交う中、湯川はひとつの結論に辿り着く。
……というお話し。

全部が全部、中途半端で、演出が的外れだったように思う。

家族が、それぞれ秘密を抱えているところが、事件を複雑に見せるトリックのはずだが、これが全く活かされていない。

娘が、父親と母親に隠していたこと。
娘と母親が、父親に隠していたこと。
母親が、父親と娘に隠していたこと。
父親が、娘と母親に隠していたこと。

それに、町にやって来た警部も、警部が追っていた男も、世間や周囲に口を閉ざして来た。秘密を抱えていたわけだ。

それぞれが、相手を思う気持ちから口をつぐんでいたわけだが、その思いが全く伝わって来ない。だから、単なる“お涙頂戴モノ”でしかなかった。

然も、ミステリーであるにも関わらず、正しい解決がなされない。この居心地の悪さ。もしかしたら、これが原作者の意図であるのかも知れない。
でも、ダメでしょ。
個人的には、娘は昔の事件について自供すべきだと思うし、甥っ子には曖昧な言い方はせず、キチンと伝えるべきことを伝えるべきだ。なのに、駅の待合室の遣り取りは何なんだ……。

主演は、話題の福山雅治さん。相変わらず一本調子のお芝居だが、あれはキャラクタなのだろう。善しとしなければいけないのかも知れない。

開発反対派の先頭に立って玻璃の海を守ろうと気炎を上げる娘役には、杏さん。日焼けした肌が似合う人だなぁ。スキンダイビングのシーンは、お見事。本作品の見せ場は、ここだけだった。

母親と父親役には、風吹ジュンさんと前田吟さん。
風吹ジュンさんも、だいぶお歳を召されたなぁ。
前田吟さんは、『男はつらいよ』のヒロシさんのイメージが強くて、どうもダメですね。
彼の甥っ子に対する気持ちがハッキリしてなかったなぁ。片棒を担がせた彼は厳罰に処すべきだ。

原作は、東野圭吾さん。彼の作品って、事件そのものはありきたり。けれど、それを取り巻く人たちの関係から人情の世界を描き出す。言ってみれば、『渡る世間は鬼ばかり』と大差ない。きっと質的には同じなのだろう。

ただ、頭のいい方なのか、固定観念や先入観に対して、レトリックをもって覆してみせる手腕はさすが。
今回は、監督さんのコミットメントが失敗だっただけのこと。また頑張れば、いい。

オススメ致しません！（或いは、スキンダイビングのシーンだけ観て下さい）

※ペットボトル・ロケットは、危険だからという理由で学校で禁止になったのは、ずいぶん昔のこと。いいのかなぁ、こんなことをして……。
時に、携帯電話が空を写していたら、もう１回やり直すのだろうか？　確実性が低いな。
それに、ビニールとペットボトル越しで、内部は水滴で曇るから、海の中は見えないと思うぞ。(笑)

容疑者Ｘの献身で映画を先に見てしまい、後で原作を読んだ。
その時、原作の方がかなり面白かったので、順番について後悔した。
今回はちゃんと順番通りに見た。

感想としては、映画というよりスペシャルドラマで良かったのでは。
割と原作に忠実で、２時間にまとめているが、ただそれだけな感じ。
容疑者Ｘの献身に比べて、トリックや殺人の動機もやや無難で、イマイチ。
テレビで見るので十分だ。

福山雅治の演技は微妙だが、スーツ姿がさすがにかっこ良い。
杏の少女時代の子役が、すごく似ている。

映画館にて。（もう随分前なもので、忘れないうちに…笑）
朝いち上映の割には予想以上に混んでいた記憶があります。
確か夏休み前、『ポケモン』だの『忍たま』だのお子様向けが幅をきかせ、大人の選択肢が極端に少なかったせいでしょうか。

ＴＶ版は数える程しか観てないんですが、尺が長いだけの「特番」的印象は拭えません。
「誰かが誰かをかばってる」って簡単に読めてしまう、ミステリーというよりお涙頂戴の愛情物語。
謎解きの「泣き」の部分が間延びして、終盤かなり退屈でした。
結局真相は隠したまま、いくら苦しんだって「口を拭ってる」状態に変わりは無いんですもんねぇ。
到底「少年の将来をねじ曲げない」説明が出来るとは思えない、なんとなくあやふやなお話に思えました。
あくまで主役ふたりのキャラクター頼りで、これが駄目だとどう仕様も無い。
福山雅治はともかく、吉高由里子の喋りがひっかかるようでは、どだい無理だったのかも知れません。
ふたりの掛け合いにあちこちからクスクス笑いが聞こえましたが、なにが面白いのかさっぱりでした。
何故こんなに人気があるのか……湯川ってあくまで傍観者、一切窮地に立たないし、何があってもコタエない「安心感」故でしょうか。
他レビューを拝見するに概ね高評価なのが意外で、自分の観る目が無いのかも、とも思うのですが。

美しい海とあの男の子は良かったです。
でも、『容疑者Ｘの献身』の方が（まだ）上だったかも。