ゼロ・ダーク・サーティ

「ゼロ・ダーク・サーティ」（2012年、米国、カラー、157分）。
キャスリーン・ビグロウ監督（1951年生）。
全米同時多発テロ（2001年9月11日）の首謀者とされるウサマ・ヴィン・ラディンの捜索と殺害を描いた映画。作戦は2011年5月2日に行われたので、テロから9年８か月近くを経て、米国は首謀者とされる人物を殺害したことになる。
作戦は、アフガニスタンのジャラーラーバード基地から離陸した２機のステルス・ヘリによって行われ、パキスタン領空内に侵入し、ヴィン・ラディンが潜伏していると「推定」されたアボッターバードという町の３階建て、高さ3〜5.5ｍの塀に囲まれた、要塞のような邸宅付近に着陸する。後のもう１機は失敗して近くに墜落する。作戦成功後、米軍の「ネイビー・シールズ」（海軍特殊部隊）は、墜落機を爆破し、ヴィン・ラディンの遺体と、住居にあったファイル（ハード・ディスク、紙媒体など）を接収して、墜落機の乗員とともに、ジャラーラーバード基地に帰還した。

この「ネプチューン・スピア作戦」（2011年5月2日）の現場の作戦は混乱を窮めたものだったようだ。ステルス・ヘリ・１機が墜落、周辺住民が大騒ぎする。作戦決定から決行に至るまで一日、そこに彼がいることを「マヤ」以外は誰も保証できなかったからだ。
この映画では描かれなかったが、当日の現場作戦のリアルタイム映像（監視衛星、現場至近映像など）を、ホワイトハウスの地下にある「シチュエーションルーム」で、オバマ大統領やヒラリー・クリントン国務長官、バイデン副大統領、ゲーツ国防長官、マレン統合参謀本部議長らが見ていたのかもしれない。全員が映った１枚の写真がある。これには諸説があり、断定はできないが。

現場作戦に至るまで、なぜ9年８か月もかかったのか……。
それは、ヴィン・ラディンの逃亡が巧妙で、組織が親族中心に固められ、機密が漏れなかったことか……。それをＣＩＡの若い女性「マヤ」が破るのだが、彼女がいなければさらに５年かかっただろう。「マヤ」が使う監視システムは、彼女と同年代の「スノーデン」が開発したものではないか？　そして、それ以前に、拷問があったことも、この映画で書かれた。

2001年9月11日〜2011年5月2日の9年８か月中に、米国の戦争は、アフガニスタン、イラクへと拡大したあと、世界テロ戦争というパンドラの箱を開けた。
2001年9月11日の大統領は、ブッシュ・ジュニアであったが、2011年5月2日の大統領はバラク・オバマである。オバマの平和主義で、戦争が縮小しただろうか。むしろ、テロが拡散したのである。「9.11」の唯一の責任者はブッシュ・ジュニアだろうか。違う。米国は、共和党・民主党の政権交代を繰り返した国家である。「9.11」は、ジュニアの直前のビル・クリントン政権の政策で国防が弱くなったときに準備された。動機は、クリントンの直前のパパ・ブッシュの湾岸戦争時代にあるのかもしれない。さらに直前の共和党のレーガンがイラクのフセインを優遇した時代、その直前の民主党のカーターがソ連のアフガン侵攻を止められず、モスクワ五輪をボイコットしただけで終わったこと、さらに、ニクソン、ケネディのアジア、中南米政策の失敗に遡るだろう。

一人の人物を殺したとしても、何も解決しない。4000人殺され、お互いに毎日もっともっと殺し続けている双方にとって。

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この映画「ビン・ラディン暗殺」をめぐる「実話に極めて近い」オハナシだそうですが、私はこれは「真っ赤な嘘ッパチ」だと思います。
オハナシの主役はマヤ（ジェシカ・チャスティン）というCIAの「有能な分析官」と言うんですが、彼女が「ビン・ラディンの隠れ家」の特定情報に関する評価会議で「確率100%」と「主張」し、彼女の上司や同僚は「60%」と発言する場面があります。この場面が「事実」では無いことは「100%」確実です。「情報分析」が必要なのは100%確実「では無い」ことを「推測」する為であって、「推測」である以上「100%」は「あり得ない」ことくらい、その方面に疎い私にだって分かります。たとえ彼女が誰よりも情報を精査し誰よりも真剣に分析に取り組んだのが「事実」だとしても、「100%確実」などと発言するような「分析官」が「優秀」であるワケが無い。だいたい本当に「100%確実」と言える「根拠」を彼女「だけ」が「発見」したのならその「根拠」を皆に示せば済む話で、それ以上の「分析」も「評価」も不要ですから「会議」やって「評価」が分かれる、なんて事態は起こらない。従ってこの場面（または彼女の「キャラ」設定）は明らかに「フィクション」ですが、それがバレてしまうと、この映画全体の観かた自体が変わります。そしてこの後に続くオハナシの「ウソ臭さ」が完全に「真っ赤なウソ」に感じられるんですね。何とCIAのみならずオバマ大統領までがこの「思い込みが強いだけ（かも知れない）」一介の分析官の「主張」を信用して実際の「襲撃」を実行したら、「ラッキー」なことに彼女の「推測」が正しくて「念願の」ビン・ラディン殺害に成功して、めでたしめでたし、ってオハナシなんですね。
「リスク分析」は今や一般投資家でも大流行ですが、その「基本原理」は「起こるかも知れない危険」の起こる「確率」と「起こってしまった場合」の「損害額」を掛け合わせて「リスク」を評価するというものですが、往々にして（素人は）「確率」または「損害額」のどちらか一方のみ議論してもう片方を忘れることが多い。しかしプロの、しかもCIAの分析官や軍の幹部、まして大統領がその「基本」を忘れるワケが無い。9.11.テロの「首謀者」（ということになってる）ビン・ラディンを殺害することはアメリカにとってほとんど「国家目標」でしたが、数年前の「イラク・大量殺戮兵器」で大恥かいた（イギリスなんかCIA情報に「騙された」ブレア首相が辞任に追い込まれた）CIAにとって「殺してみたらビン・ラディンじゃなかった。だってウチの分析官が100%確実だ、って言うもんだから」では「100%」済まない。つまり「間違った」時の「損害」の大きさは途方も無い。そんな重大事に大統領まで「一介の女性分析官の『確率100%』を信じて「ラッキー」に「賭けた」なんてオハナシが「実話に近い」なんてあんまりアメリカをバカにし過ぎだと私は思いますねぇ。
別にアメリカ政府に肩入れするワケじゃありませんが、私の「推理」はこうです。
アメリカにとって最大の「リスク」は「いつまでたっても『復讐』出来ない政府に国民が愛想を尽かすこと」ですが、と言って闇雲に攻撃しても「殺したハズ」のビン・ラディンがひょっこりマスコミに登場して「あかんべ〜」でもされたら、それこそオバマの生命が危ない（怒り狂ったアメリカ人に「暗殺」されかねない）。結局ビン・ラディン暗殺は「手段を選ばずに」「どんな汚い手を使っても」「秘密裡に」やってしまって、その「実行ストーリー」は「別に」用意する、という「戦略」が水面下で進んでいたんじゃないか？で、この映画の脚本はCIAが作ってキャサリン・ピグロー、マーク・ボールの「ハート・ロッカー」コンビにアカデミー賞と引き換えに「押し付けた」。きっと実際に「思い込みの強い」「あまり優秀じゃない」女性分析官が（何人か)いたんでしょう。作中CIAがなかなか「決断」しないでマヤが苛立つ、ってシーンがありますが、あれは実際に「秘密裡に」ビン・ラディンを「始末する」のに時間が掛かってたんでしょう。勿論あの「正式な」襲撃で殺されたのは別人です。もしかしてあの家も中にいた人たちもCIAが用意したのかも知れない。
なんか書いてるうちにこっちの方が「面白い」オハナシに思えてきましたねぇ(笑)。

出だしの拷問シーンが面白かったが、それだけって感じもある。
高卒でＣＩＡにリクルートされて、以後、ビンラディンを追い続けてセックスもせずに１０年以上もの歳月を費やした主人公にとっては、ビンラディンを殺したことが人生最高の出来事だったろうし、大統領からは金メダルももらったのだろうけど、だからどしたの？ っていう感じがどうしても残る。
ビンラディンは、象徴というかスターというか、日本で言えば、よくテレビに出てくるコメンテーターのようなものにすぎず、彼を殺したからといってアラブのテロリストがテロをやめたわけではない。米国がテロのターゲットにされるのは、ビンラディンが悪いのではなく、米国が悪いのである。
ビンラディンは、もともとＣＩＡの下で働いていた男だったらしい。反米の旗を掲げて以降も、実働部隊の指揮官として行動したのは若かりし頃の数年間のことでしかなく、９１１の頃にはそういう存在ではなかったらしい。実際に、９１１が起きた直後には、その作戦への関与を否定していたそうで、これが９１１の首謀者だと言い出したのは、事件の１年後のことだそうだ。米国政府が事件をビンラディンの仕業だと決めつけて、そのような報道ばかりするので、テロリストたちからすっかり祭りあげられてしまって、本人もそれを否定しきれなくなったのだろう。その当時のビンラディンは、宗教的な指導者を自任した者でしかなく、実働部隊の指揮官ではなかったのである。９１１は米国政府の自作自演だという説があるが、私は、そっちの説を信じている。あのような大規模な作戦はあれ以前にもあれ以降にもなく、アラブのテロリストがやれるのはせいぜいバスやトラックを使った自爆テロぐらいのもので、複数の旅客機を同時にハイジャックして同時にそれぞれの標的に向かわせるなんてことは不可能だったと思われる。だいたい、アルカイダっていう呼称自体がＣＩＡが勝手につけた名称で、実際には、そんな組織はないという話もある。ビンラディンの次のナンバー２とされるアイマン・ザワーヒリーという眼科医がいるが、実際にテロ作戦を指揮していたのは、このザワーヒリーだったらしく、彼が率いていた組織には別の名前があり、ビンラディンは、その組織の顧問みたいな者としてネット上にメッセージを出すだけの者だったと思われる。
なんにしても、ＣＩＡは諸悪の根源みたいな組織であり、これの自慢話などに拍手を送る気にはなれない。
っていうか、米国政府くそくらえ！ って言いたい。

この人は、中身は完全に男性ですね。
実はこれ、2回観に行きました。
短絡的だけど、1回目観たときは、監督は右派なの？と、ややイライラした感覚が残りました。
「ハート・ロッカー」では、「仕方ないでしょ」と投げだしたように見えて、なに？肯定？と思ったからかもしれません。
で、続けてこれを観て、うーん、やっぱ肯定なのか、と感じました。
よふかしさん同様、何の感慨もない映画でした。

2011年5月にアメリカが、ビンラディンを殺害するまでを描き出す。
若くて優秀なCIAの情報分析官、マヤは、膨大な資料を詳細にあたっていき、ビンラディンの連絡係らしい人物を突き止める。
すべてを投げ打って仕事に没頭するマヤ。
CIA内部での葛藤、仲間の死による私怨など、内外の事情もかいていく。

主人公のマヤは、たぶん、ビンラディンを殺すことに憑りつかれていた人なんだと思う。
「確保」じゃない。
「殺害」。

いくら考えても米国の考え方は偏ってて幼稚だと思うし、
個人的には、復讐に燃える人は醜いと思うし、
ラストの涙も、目的を達成して空っぽになってしまった人間の空しさなのかね、と思い、
やっぱりあんまり好きな映画ではありませんでした。
ただ、ドキュメンタリータッチなので、後半の敵を追い詰めていく画像はとてもリアルで、息を詰めて見入ってしまいました。
憎しみは連鎖する。
この監督は、何を言いたいんだろう……？

マヤのモデルになった女性諜報員は、今は左遷され、あまり良い待遇を受けていないとどこかで読みました。
米国だし、軍隊だし、女性が優遇されるのを良く思わない人間ばかりなんでしょうね。
マヤさん自身は、目的は達成できたから納得してる…ってところなのでしょうか……

ビンラディン射殺のニュースが出た数日後には
キャスリンビグローがそれを映画化するってニュースに出て
「ハリウッド仕事速いなｗｗ」なんて思ってた映画。

アカデミー賞はジェシカが獲るんじゃないかと思ってましたが残念でした。

元々ビグロー監督作は好きなんだけど
2回観ればもうお腹いっぱいというか、
買って手元に置いて何度も観るタイプの映画じゃない。
しかし、この緊張感の密度がスゴイから
気づくと見入ってしまうのよねえ。
（初期作品はそーでもないのもあったけど）

物議を醸した拷問シーンから
ＣＩＡ基地での爆弾テロ事件
男性だらけの中、自身の視点をしっかり持って
ターゲットへと行動する主人公マヤ。

このマヤのモデルになった人が実際どんな人なのかと思ったら
何人かのモデルとなる人をまぜたキャラクターだとか！？
そうだったのか。

まるでＮＨK、ＢＢＣ、ＣＮＮの長編特番を観ているような感覚にもなりますが、
「怪物」に迫るにつれてただでさえハンパ無い緊張感が
終盤になってよけい張り詰めてくるからスゴイ。

観ててしんどくなるくらいです。

ビンラディンの暗殺のくだりはまるで
ホンモノの映像を見せられてるようなリアルさ。

そこに劇的な演出なんかは全くないんだけども。

暗視カメラや手ぶれ映像を駆使したのも臨場感が増す要因。

で、この10年にわたる大仕事を終えてさぞかし盛り上がるかと思いきや
ここもまるでドキュメンタリー、そんな映画的なものはありません。

最後に主人公マヤが流す涙、背負った任務の大きさや
過去のいろいろな出来事を考えると
とてつもないことが終わった感が感じられ、
それ以外にもなんともいえない感情が押し寄せているんだろうというのが伝わり、
観ているほうまで苦しくなりました。

これは長尺にもかかわらず、まったくダレることがなかった。

でも、さっきも書いたように何度も繰り返し見るような映画じゃないわ・・・
張り詰めっぱなしの緊張感と、マヤの心情想像するともう、しんどくて疲れますｗ

ビンラディンの最期があっけなかった。

でも、あーゆー感じだったんだろうな。

本作では顔もまともに映さなかった。

はたして、その怪物を射殺した、それで終わりだろうか。

ここで終わるとは当然思えない。

近年に起こった事だけに
いろいろあらためて思い出して、なんともいえない気分になりました。