依頼人／ザ・クライアント

11歳の少年を主人公にした、軽めのサスペンスという印象です。事件の発端はサスペンスらしく印象的に描かれるのですが、その後の展開はかなり軽めの演出です。少年家族の命を狙うマフィアの恐怖を際立てているわけでもありませんし、少年から証言を得ようとする主席検事やFBIも一塊として描かれ、大人らしいドロドロした思惑を感じさせません。むしろコミカルさを漂わせることを狙った演出ですね。見終わった印象としては、テレビドラマのサスペンスでも見たような軽い印象で、私としては物足りなさが残りました。

イントロダクションには「法廷サスペンス」と書かれていますが、法廷を舞台にした駆け引きが展開されるわけでもなく、映画が描くのは母と子の絆のようなヒューマンな部分です。サスペンスに期待してみると裏切られる作品ではないかと思います。

ベストセラーの映画化で期待もあったのですが、少年の達者な演技もあるだけに、もっとサスペンスとして徹底しても良かったのではと思います。マフィアは姿を見せない暗殺者の描写だけの方が余程怖さを感じただろうし、大人たちのドロドロした思惑が描かれれば描かれるほど、子供の奮闘ぶりを応援する気持ちは高まったと思います。また、大人を大人らしく描いてこそ、子供の純粋さや母性愛は際立ったのではないかと思います。

期待していただけに落胆も大きいかも、5段階評価は、2。

依頼人／ザ・クライアント（１９９４年・アメリカ、カラー、１１９分）

この映画は実に見ごたえのあるヒューマン・サスペンスで、スーザン・サランドン、トミー・リー・ジョーンズ、ブラッド・レンフロの３人のパッケージが見事にかみ合わさっている。

１１歳のマーク（ブラッド・レンフロ）と８歳のリッキー（デヴィッド・スペック）の兄弟は、自宅近くの森で、車の排気筒にホースを繋いで自殺しようとしている男を目撃する。その男はマークに気づかれたことから、マフィアに殺された上院議員の死体の隠し場所をマークに告げ、ピストル自殺する。衝撃を受けたリッキーは精神的ショックから植物人間状態となり入院する。マフィアが動き出す中、連邦検察官のロイ・フォルトリッグ（トミー・リー・ジョーンズ）は、ＦＢＩと共にマークを追求する。マークは自分と家族を守る為、全財産の１ドルで女弁護士レジー・ラヴ（スーザン・サランドン）を雇う．．．。

原作はジョン・グリシャムで、彼の著作が映画化となったものには法廷サスペンスが多く、９０年代を中心にヒット作品として語り継がれてきた。
９３年「ペリカン文書」、９３年「ザ・ファーム法律事務所」、９６年「評決のとき」、９６年「チェンバー／処刑室」、９８年「相続人」、０３年「ニューオーリンズ・トライアンル」等である。
この内、「評決のとき」は本作同様、ジョエル・シューマカーが監督に就いている。

たった ‘１ドルで少年の弁護を引き受ける’ という女性弁護士の設定が心憎い。
演じたスーザン・サランドンは、慈愛に溢れる大きな瞳が強い説得力を持ち、幼い少年を必死で守った。
１９４６年１０月４日ニューヨーク生まれの彼女は、本作出演時４８歳くらいで、遅咲きながら既に４度のアカデミー賞にノミネートされていたトップ女優。本作が翌年の「デッドマン・ウォーキング」でのオスカーに繋がっていったことは言うまでもない。

対するトミー・リー・ジョーンズはスーザンと同級生。
彼は１９４６年９月１５日テキサス州生まれで、スーザンより１９日間早く生まれている。
この頃の彼は ‘飛ぶ鳥を落とす勢い’ で、前年の９３年「逃亡者」でアカデミー助演男優賞を受賞するなど、出演作品の大半がヒットしていた。
個性的なマスクと深みのある演技が好きで、彼の出演作品を選んで観ているが、まだ３１本にすぎない。
現在は７２歳のはずだが、今後ますますスクリーンに登場してほしい２人である。

ブラッド・レンフロについては、早死に残念の一語に尽きるが、彼を見出したキャスティング・ディレクターが、エドワード・ファーロング（９１年「ターミネーター２」の少年ジョン・コナー役）を見出した人物と同じ＜ウィキペディアより＞という事実を知り、納得感もある。

今では名優として知られるようになった、ウィリアム・Ｈ・メーシー、アンソニー・エドワーズ、ウィル・パットンといった脇役の顔も見逃せず、ハワード・ショアのスコアも心に染み入る。

９０年代を懐かしむには最適の１本であろう。

＊ ちょっと強引で、ありえない話の持っていき方ではありましたが、意外に楽しめました。それなりにハラハラできて、クスリと笑えて…面白かったです♪♪

　悪者もどこか抜けてて、周りの大人が子供に振り回される…、
　なんだか『ホームアローン』を思い出しました。もちろん、本作は、家の中が舞台ではなく、あちこち動き回りましたけど…（笑）

　その大人達をさんざん振り回した、主人公の男の子…、
　口が達者で生意気なクソガキなんだけど、どこか憎めないキャラでした(=∩_∩=)

サスペンスで、面白い
借りてよかった

面白さ：★★★☆☆
（アメリカ国民は法律でがんじがらめになっているのがよくわかります。弁護士に比べて検事・裁判官の権力が強大なのも）

対象年齢：高校生以上（多少残酷な場面がありますが、それよりも子供（小学生）が喫煙するシーンがあるのが気になります）

食事中に見られるか：やめておいた方がよいでしょう