ステキな金縛り

　この映画もずっと気になりながら、なぜだか未見だった作品。三谷幸喜のこんな有名な作品を今頃初めて観るというような映画好きの方はめったに（once in a blue moon） おられないでしょうから、少々ネタバレ気味に書いています。ご容赦ください。

　落ち武者の幽霊が殺人事件の裁判で弁護側の重要証人として証言台に立つという、意表を突いたあり得ない展開を、大真面目に法廷劇に仕立てていて、面白すぎます。しかも落ち武者の幽霊はあの世とこの世を自在に行き来して、不信を抱く検事に幽霊の存在を納得させるべく、彼の愛犬（ラブちゃん、きちんとクレジットされています）の幽霊を連れてきたり、事件の被害者の幽霊が出廷して真犯人と対峙したり、最後には弁護士の心の支えになるようにと、若くして亡くなった父親の幽霊まで登場します。

　馬鹿々々しいながらも意外に説得力のある映画になっているのは、ひとえに豪華すぎる俳優陣のおかげ。そのうえ脚本も演出もとても丁寧で、さり気なく細部に凝っています。どうでもいいようなところにも名だたる俳優たちを惜しげもなく出演させるという贅沢さ。三谷幸喜ならではです。深津絵里が、自分の担当する裁判に遅刻してしまうというトホホな落ちこぼれの弁護士、宝生エミ役をとてもチャーミングに演じ、素敵な主題歌（Once in a Blue Moon）まで歌っています。映画は、彼女の声の良さが引き立っていて、台詞を言った瞬間から惹きつけられてしまうほど。

　個人的には、洋画のような非日常的な冒頭シーンがお気に入り。深夜、人里離れた山の道を１台の洒落た車が走って行く。雷鳴がとどろいて、ドラマティックな音楽が鳴り響き、向かう先には立派な洋館。若い女性がドアを開き階段を昇ると浮気をしているらしい男女の姿。女性同士が争い、取っ組み合ううちに、ひとりが２階から転落してしまう。床に広がるほっそりした手足と美しく華やかなドレス。次の瞬間目覚まし時計の鳴る日常的場面に転換し、あたかも夢の出来事なのかと思わせて、実は事件の発端だったと、随分後になってから分かる。とても凝っていてお洒落です。

　判決の後、誰もいなくなった法廷にエミの父親の幽霊が現れるシーンは、ちょっとセンチメンタルで、くどいかなとも思うのですが、父親を演じているのは何と草なぎ剛で、その意外性に思わず見入ってしまいます。この辺りの配役の妙は凄いなあと感じます。エンディングクレジットの写真も何気ないようで後日談のストーリーになっており、これだけで後編の映画ができそうです。落ち武者の幽霊、更科六兵衛の慰霊碑も建ち、速水＆宝生という法律事務所の写真もあって、病死して幽霊となった速水との事務所ということは、幽霊も働く斬新な事務所なのでしょうか。また、エミは本編で喧嘩別れした恋人と仲直りして結婚し、めでたくベビーも誕生しています。どの写真にも六兵衛が写っているところをみると、まだまだ地上に出没し、裁判でも活躍しているのかもしれません。

深津絵里はシリアスからコメディまで、何でもこなしてしまいますね。
今回は、見事なコメディエンヌぶりでした。
しかも、主題歌まで歌っていて、その声が可愛らしいんです。
一緒に歌っている西田敏行の歌声は堂々としていましたね。
笑いのツボって、本当に人それぞれだと思うけど、私は三谷幸喜の軽妙な滑稽さが好きです。
落ち武者が証言台に立つけど、落ち武者の姿が見えて声を聞くことが出来るのは限られた人だけ。
裁判員も傍聴人も、裁判長までもが、ほとんど弁護士・宝生エミによる通訳を信じる他はないのだから、よーく考えたらヘンテコな話です。
でも、三谷ワールドでは、そんなふうに真面目に考えちゃ駄目なんです。
ドップリ浸って楽しむことですよ。
三谷幸喜に起用されると、役者の皆さんが“素”なのか演技なのか分からないくらい形振りかまわず頑張っちゃってるのが、別の意味で楽しいです。
豪華な俳優人が、チョイ役でも個性を発揮しているのがスゴイです。
特に中井喜一が、愛犬のラブと再会した喜びのあまり、あんなふうになってしまうなんて、そこまでやってくれる？と、意外な笑いを誘います。
もちろん、落ち武者の役は、西田敏行以外には考えられないほどの名演でした。
笛やハーモニカのピーという音を色々と使い分けてくれて、お茶目な幽霊でした。
実にタイムリーなことに、私は最近フランク・キャプラ監督の「スミス都へ行く」と「素晴らしき哉、人生！」の両方を観たばかりでした。
ですから、エミの部屋の棚に「スミス都へ行く」のDVDがあったのを見て、“アルプス一万尺”の意味がすぐに分かりました。
エミの父親が草�g 君だったのは、しっくり来なかったけど、この際、気にしないことにしましょうか。

今までの三谷作品の中では断トツつまらなかった。発送はユニークだが意外と内容が薄い。三谷作品はかなりみるが、どこかで見たことがある他の監督作品のシーン(まさかパクリじゃないよね)が時折感じられるのは、私だけか？それに、この作品はキャスティングがチョイ役まで三谷フャミリーで豪華だったが、まさにオーシャンズのごとくで人を揃えて脚本欠いた感がした。ちなみに深津絵里ってそんなにいいかい？？？

やはり三谷幸喜監督はコメディ映画づくりがうまいですね。この作品もよくできてます。

でも前半はなんか、設定が明らかに『トリック』のパクリ的な感じで進みますね。台詞にもそれが表れているし、タクシー運転手（生瀬勝久）の役柄なんか『トリック』へのオマージュではないかと思われる。阿部ちゃんが出てるから、なおさらそう思うのかもしれないけど、主役の深津絵里が仲間由紀恵に替わっても違和感がない感じ。
西田敏行はやってくれましたね。コント調のコミカルな演技が全開で、この役を他の誰が演じられるってくらいのハマリぶり。
そのほかにも、有名俳優をいろいろとチョイ役で使う贅沢さが豪華。
ラストはもう一つ何かヒネリがあると思ってたんだけど、すんなり予定調和で終わってしまい物足りなさあり。
しかもやや冗長な感じで、もっと簡潔にスッキリまとめてほしかったですね。

この映画、近年の日本映画の中では出色の出来だけど、何かが足りない気も。
「しかばね荘」や「法廷」のつくり・様子が前時代的で、すべてエミ（深津）の見ている夢なんじゃないかと思えてしょうがなかった。
リアルじゃない。リアリティもない。コメディだけどファンタジー？
故スタンリー・キュープリック監督は写真家出身だが、彼は写真づくりについて「大切なのはリアルであることじゃない。リアリティだ」と語っていたそうである。それはたぶん映画づくりにも言えることなのだと思う。
う〜ん、舞台向きの脚本だからかなとも思うけど、三谷監督、もう少し“本当っぽさ”を心がけてくれなかったかな〜。

2011年。三谷幸喜監督・脚本作品。

奇想天外・・・良く聞く言葉ですが、まさにぴったり。
三谷幸喜ワールド炸裂でした。
終始法廷ミステリーです。
幽霊の落ち武者六兵衛(西田敏行)が、重要証人だと言う以外には、
立派に法廷ミステリーです。

駄目弁護士の宝生エミ(深津絵里)が、これが最後のチャンス・・・と担当した事件。
妻殺害事件の容疑者の夫KAN)のアリバイを証言出来るのは、
彼の泊まった旅館で、一晩中覆いかぶさっていたと言う「落ち武者」だけなのでした。

この幽霊・・・見える人にしか見えない・・厄介な幽霊です。
この幽霊をあの手この手で、証明して、証言させるアイデアが実に楽しい。
砂金が六兵衛のイニシャルを浮かび上がらせる装置は愉快。
ラストには二重、三重に仕掛けがあってホロリとします。
それにしても役者さんが達者。
そして豪華です。(勝訴のプラカード持ちが大泉洋とか・・・)
市村正親の陰陽師にも笑ったわ！！
久しぶりに大笑いのコメディ映画でした。