レイチェルの結婚

薬物依存で施設で過ごしていた妹キムが
姉のレイチェルの結婚式のため戻ってくる。

キムの犯した過ちが家族の亀裂を生んだようなので、
戻ってきて、すぐにうまくいくわけがない。

その辺が、ヘンにハートフルに仕上げたり、感動させたり
という大袈裟な演出みたいなものがなくて、
逆にすごいリアルに感じました。
とくにこれといって事件やドラマチックなことも起こらないし。

それでも、家族なんですよ・・・
っていことが言いたかったのかもしれないけど、
なんだかあまり心に響きませんでした。

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手持ちでユレユレのカメラからも分かるようにフェイク・ドキュメンタリーを意図した作品で、一家の姉レイチェルの結婚式の準備から後片付けまでの、実際に長過ぎると感じる風景と共に花嫁一家の心模様が語られるので、結婚式の参列者になったような気がしてきます。そう言えば、あまり親密ではない人の結婚式って実際退屈だったりしますよね。そこまで考えた上での演出なのでしょうか、もしそうだったら恐るべしです。

一見すると華やかで幸福な式に集う家族。久し振りに再会を果たすのは花嫁の妹キムで、何処かの施設から出所してきたばかりのよう。家族はキムの帰宅を素直に喜ぶが、彼女は気性が荒いのか我がままなのか、主役の花嫁もなおざりにキムのご機嫌を取ろうとするのでした、どこか腫れ物に触るように。
式の準備が整うと共に、少しずつ明らかにされていく一家の傷痕。その傷はかろうじて薄いカサブタで覆われていて、家族の皆がそれぞれに、そこに思いを溜め込んでおり、何気ない出来事や思いがけない一言が治りきらない傷に痛みを与えるのでした。
家族なのに、いや家族であるからこそ深刻な傷跡を注視することができないのでしょうか。
そして迎える式の前夜。キムの苛立ちは爆発するのでした。

皆それぞれにお互いのことを思っているのに、素直になれない妹、寂しいと言えなかった姉、ただひたすら心配して守ろうとするだけの父、愛するが故に家族から離れる母、の一家は、傷痕を直視することから逃げるがために、共に暮らしていても心に触れることを恐れるのでした。
触れて思い出すことで再発する痛みをやり過ごそうとして、何も無かったことにしようとする一家に訪れる嵐がキムで、激しくかき乱されることで一家は家族として再生するのでしょう。それは傷痕のカサブタを無理やりに剥ぐ行為で、痛みと混乱を一家にもたらすのですが、それは一時のことで、その痛みの対話により強い絆を一家は結ぶことができるのだろうと思いました。
飛びきり素敵なことが始まるわけではないのですが、その普通さがキムには何よりなのだろうと思わせるラストなのでした。

ヒロインを美しく写そうともせず男達もカッコいいわけではなく、結婚式の映像は和気あいあいで楽しそうなのですがやや冗長で、ひたすらリアリティを追求したかの作品で、ドラッグや多国籍、チラリと海外派兵もと、アメリカの今を切り取ろうとしたのかもしれません。
私の好みから言えば、パーティ・シーンを少し削って、登場人物の心象風景を増やしてほしかったなぁ。★４−

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１２０分を切っているのに、終盤はキムの行動が一体いつまでこの調子で続くのかと少し飽きてきましたが、まずまず力作だと思います。

そんなキムがアップになると、時々背後に父親や家族の心配顔が映り込みます。何も言われなくても感じるプレッシャーってありますよね。受け手側の問題もあると思うけど、子どものころから問題ばかり起こすキムを包みこんでいた家族の重い空気がひしひしとうかがえます。
優しく愛情深く、過保護な父親。誰より心を許し合った姉。
しかし、レイチェルが１５歳のときに起こした重大な事故についてはこれまでほとんどタブーとされてきたようです。

結婚式の前日、いらだったレイチェルが再婚先の実母を訪ねた時がクライマックスです。
父親が、まるで母親のように細かく気を砕くのに比べ、この母親はその後問題から逃げて、家族との距離をはかっているかのようでとても興味深い。母親の引け目のような心情が理解されます。
すでに彼女の中では自分が負う責任を自覚し挫折した後なのかもしれません。
もう少しだけこの攻防が観たかったように思います。
でもこの講釈の分量や方法が映画の品を左右するので、この物足りないくらいが絶妙な線なのかもしれませんね。


不思議なものですね、家族の愛情は十分すぎるほどあるかに見えるのに、自分の望む形でなくては受け止められない。さらに許しと愛情を求めてしまう。少し身勝手に見えるレイチェルですがその弱さが痛ましく、また、進む先にささやかな光が見え好感を持ちます。

おそらく人生は何年生きても、楽なものにはならない。
若い頃に心に痛手を負うと、一生に影響を与えてしまうのでしょう。
それでも、「性格による」と一括りに出来ない気もするけど、私はあまりバカなことをしなかった。
だから、自分の行動によって自らの人生を傷つけた主人公キムが、その傷を振り回して、家族を巻き込んで行くのは、見ていて腹立たしく、悲しく感じた。
自分の辛さを上手く誰かに伝えられないもどかしさもわかるけれど、求めてばかりではなぁ…。
振り回す役回りと、振り回される役回り。
現実にもいますよね。
傷つきやすい、っていうことを理由に振り回す役に回るのって、ずるくない？
お父さんが堪えきれずに涙を見せるシーンにはこちらもホロリと来てしまった。
お姉さん、やさしいなぁ。
お姉さんだって、努力もしてるし、ガマンもしてるんだ。
キムは思う通りに生きられない、不器用な人なのだろうけど。
それを容認できない自分は、自分と違うものを受け入れる器が無い、年齢ほどには成熟していないことも思い知る。

自分の人生を納得できるものにしよう、と誠実に生きていたって、病気になったり不慮の死を迎えてしまう人もいる。
人は弱いものだけれど、自分を大切に、身体も命も大切にしない人は嫌いだ。
そういう人は、自意識が強過ぎて、自分の不幸ばかり見つめている気がする。
よって、主人公に全く感情移入できず。
家族の優しさにはジーンときました。
ハンディカメラのゆらゆらも気持ち悪かったし、同様のテーマだったら「エイプリルの七面鳥」の方がずっとよかったな。

　アン・ハサウェイが良いね！　家族をいらいらさせる厄介者を快演してる。表面はこんな奴なのに、その内側は家族を愛し、悔恨の念に満ち過ぎて溺れかかってる位なのだ。
　我慢していた姉は終にきれてしまうが、激しくぶつかった後の溢れる姉妹愛が素晴らしい。実母の押し隠した感情の爆発、キムの自失行動、父親の困惑などリアルに徹した感情描写に、彼らの身内になったように揺さぶられる……