大いなる陰謀

邦題が最低。その一言に尽きる。

中身は素晴らしい。戦場の場面は美化しすぎだが、レッドフォード、メリル・ストリープ、学生役、、、と、名演技が光る。

邦題とパッケージで、この映画をまったく誤解して、借りない人、借りてがっかりする人、が大勢いると思うが、

若い人にこそ観て欲しい、「今生きている自分と社会とのかかわりを考えさせられる」映画。
台詞がとても素晴らしいし、見終わったあと、涙しかでなかった。

無自覚、自己中心的、悪いことはすべて他人のせいにして生きている人には、この映画の良さはちょっとわからないかも。

この数年で一番感動した。

取り敢えず言いたいのは…
散々叩かれている通り、この邦題は誰がOK出したんやと、いっそ怒りすら覚えるほど、全くもってそぐわない！！


で、感想。

『フィクション』と思えませんでした。

政治的な駆け引き（トム・クルーズ）、社会的立場への野心（メリル・ストリープ）、こんなことのために、志し高い、未来を担うに相応しい、若く尊い命が失われるのかと思うと泣けてきた。
理想と現実の歪みを前に、一人の人間に出来ることの余りの少なさに対する無力感（ロバート・レッドフォード）に気持ちが沈んでしまいましたが、それでも何かせずにはいられないのは、『世界＝社会＝人間』に関わりながら生きていく、世捨て人ならざる一人として当然のことなのか。


タイトルから、なんとなくサスペンスかミステリと予想していただけに、不意打ち喰らって劇場で落涙。
でも、観ておいてよかったです。

これ、中学校とか、高校で教材に使っても良いんじゃなかろうか、と素人考えかもしれませんが、ふと思いました。

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俳優人の豪華さに惹かれて観てみたあたしは、途中うつらうつら寝てしまいました。
というのも、政治家とジャーナリスト、大学教授と学生、この二つの場面が、
物語構成上比重が大きく、ひたすら会話劇なのでほんと眠くなってしまって・・・

アメリカが仕掛けた大義なき戦争、アフガニスタンで秘密裏に開始された作戦を
政治家の思惑によりジャーナリストにリークし、情報操作しようとしているシーン、
兵士たちの命を掛けた過酷さとは別世界のように、いいスーツを着て、
コーヒーを飲み、不敵な笑みを浮かべながら雄弁に作戦を語っている落差に、
改めてぞっとしてしまうし、兵士たちのラストにはずっしりと重い余韻が残りました。

それと同時進行で展開される、大学教授が怠惰な学生に向かって指導するシーン、
昔の教え子の行動が物語る尊い意志と、学生の社会全般への無関心さが表現されていて、
わたしたちも思い当たるところがあり、考えさせられます。
日本人という大きな括りで言ってしまってはいけないのかもしれないけど、
国が決める税金値上げとか不平不満は募っても、抗議したり訴えることをしないよなぁと。
社会を変えようとか良くしようとか、そういう意識はかなり低く、どこか無関心で無反応で、
国の言いなりみたいに感じられる。もっと言えば、国民のためにいる政治家の、
自分の出世や保身、私利私欲ばかり考えた横暴を許してるわけです。
もちろん、あたし自身も何かしてるわけではないから、同じなんだけれども。
そんなことを、しみじみ感じてました。

CMでは音楽もかなりドラマチックに感動的な流れで使われていたから期待しすぎたのかな。
実際本編は会話劇の応酬、彼らの演技の迫力には押されたけど、心は動かされなかった。
自分自身で考えて初めて意味を成す映画なので、ちょっと荷が重い。
尺も短く無駄な描写はないし、メッセージ性も強いから、決してつまらない映画だとは
思わないけれど、でも、どうも満足はしないのよねぇ〜。

映画の形を借りた政治告発もの（ムーアのようなドキュメンタリーでもありません）。
こういう映画ができるっていうところがアメリカの懐の深さ。
（日本で同様のことをやろうとしたら、どっかから何らかの圧力がかかってできないでしょう）

ただし、何らかの起承転結を期待して観ると、ひどくがっかりします。

原題はLIONS FOR LAMBS。訳すの難しそう。
でも邦題「大いなる陰謀」はやや、ぎょうぎょうしすぎな気が・・。

アクションシーンなどは時折挿入されるものの、基本室内での主要キャスト数人の対話劇です。対話するシーンがずっと続きますが、キャストが豪華でなんとか持っています。
地味ですが考えさせられる作品です。かなり政治色メッセージの強い作品なので、ロバートレッドフォードが監督だということで、普段の彼の妙に爽やかなイメージと違って驚きました。
あちらの俳優さんは政治問題に興味を持つ方が多いです。日本は議員になりたがる人は多いですがね。。

胡散臭いハッタリエリート男役・・トムクルーズにハマってました。アメリカのエリートってなんで皆真っ白な歯むき出しで笑うんでしょう。
メリルストリープはどう観てもかくしゃくとした高貴な老婦人と言った感じで、気鋭のジャーナリストには全く見えなくて笑えました。演技はいつもどおり上手いですが。

この手の作品としては非常にスマートなまとめ方で良かったと思います。お涙頂戴でもなく、観る者の判断にゆだねる形で、対テロ戦争の矛盾を逆説的に描いています。しかしちょっと退屈な作品でした。

米世論の大半は対テロ戦争に対して支持しているらしいですが、こういう作品を見ると、良心的な知識人の中には反対意見も多いのでしょうね。