アメリカの夜

ラスト映像で町並みを初めて上から映すのですが
そのちゃちさにびっくり。
たったあれだけの世界の中にたくさんのクルーが
キャストが情熱を注ぎ込み観客の感動を誘う
ひとつの世界を作り出すんですね。
メイキングのようでありながらも　ドラマがあり、
ドラマ仕立てではあるけれども　映画を作り出す人たちの
愛情がありったけ詰め込まれている。

このところトリュフォー作品が立て続けに届いてますが
観ていて心が暖かになったのはこの作品がはじめて。
もうちょっとこの監督のものを見てみたいですね。

裸足のラヴァースさん。すっかりご馳走になってます。
結構律儀なんですね。随分前の約束を頑なに守って
らっしゃるようで。。。

余りにも評判が良い為返って敬遠していた作品ですが、歳月を重ねる毎にそういった余計な偏見から少しずつ解放されてきた、といった頃合いで漸く観賞しました。で結論は、ヌーヴェルヴァーグのとか何とかの能書きが不要な単純に面白い名作でした。
トリュフォーが監督して主演して、しかも監督役なわけですから、普通に考えるなら「オレ様」映画になっても可笑しくないのですが、周りの出演者と一緒に溶け込んでおり、知らない人は、それがトリュフォーだと気付かないまま、気にならないまま最後まで楽しめる内容で、他の作品でも云えますが、トリュフォーは常に作家性よりも娯楽性を優先する監督だったんだなあと実感しました。
ジャクリーン・ビセット、ジャン・ピエール・レオーをはじめ、多彩で個性的な出演者のそれぞれのキャラクターの溌剌さと分かりやすさ。様々な角度から繰り返すショットと音楽の相乗効果。モノを創造することの困難と、それをみんなで成し遂げることの楽しさ。ラストシーンでは、小道具係か何かになったつもりでトリュフォーに向かって手を振っている自分がそこに居ました。良いモノは良い、ということです。敢えて文句をつけるとしたら「映画に愛をこめて」って邦題は余計な一言かと思います。それは映像が語るべき事ですから。

1984年10月21日。フランスを代表する世界的な映画作家がこの世を去りました。彼の名はフランソワ・トリュフォー。
この映画を見て、あまりにも有名な彼の経歴を改めて拝見しました。
”アメリカの夜”は、映画というより彼の映画に対する情熱のドキュメンタリー映像という感じでした。
彼がどれだけ映画を愛しているかが、この映画をみると、
ほんのりと優しく伝わってきます。タイトル通り、
”映画に愛をこめて”そのものでした。
彼の、映画を愛する心を表現するとき、
それは炎のような激しい情熱ではなく、
優しく広く深い情熱のような印象を受けます。
52年というその短い生涯において、彼が遺していった数々の作品。
この映画を見て、他のトリュフォー作品も少しずつ堪能していこうかなと思い返しています。
それから、いい忘れてました。
ジャクリーン・ビセット！本当にｂｅａｕｔｉｆｕｌです。
彼女が画面にでているだけで、映画が華やかになります。
それほどにオーラを醸し出しています。
まさに存在自体”女優”なんだなぁ・・。
まだ見てないかたは、美しいジャクリーンとともに、
トリュフォーの世界を覗いてみては如何でしょう。

非常に勉強になるとともに、映画作りのあれこれをじっくり観させてもらった。少し、いろんなことが起こりすぎるという気もするが、それぐらいのデフォルメでちょうどいい按配にしあがったのかもしれない。

映画への愛に溢れたフランソワ・トリュフォーの傑作。
あるメロドラマ映画の撮影風景を通し、映画作りに集まった人々の人間関係やトラブル、仕事ぶりなど、様々なエピソードを織り交ぜながら、トリュフォー自身の映画製作に対する愛情、苦悩を浮き彫りにする。

南フランスのニース。映画スタジオで「パメラを紹介します」というロマンス映画の撮影が始まる。
ハリウッドからやって来た主演女優のジュリー（ジャクリーン・ビセット）は、病み上がりでいつ倒れるか分からない。男優のアルフォンス（ジャン・ピエール・レオ）は、記録係りのリリアーヌ（ダニ）との恋愛で演技に集中できず、出番はほったらかし。監督のフェラン（フランソワ・トリュフォー）は、トラブル続きの現場に悩まされるが、映画を愛してやまない彼は、撮影終了までひたすら情熱を傾けていく。

映画製作そのものを描く映画、とはいっても、トリュフォー監督はドキュメンタリーには興味がないと公言している。事実に基づきながらも、撮影現場のスタッフや俳優たちが、それぞれのドラマやロマンスを抱えながら展開するコメディ・タッチの群像劇、それが見どころだ。

それにしても撮影現場でのトラブルの多いこと。
往年の名女優セブリーヌ（ヴァレンティナ・コルテーゼ）は、アルコール中毒でセリフが覚えられず、同じシーンで間違いの繰り返し。
スタントマンと駆け落ちする記録係りのリリアーヌ（前述のダニ　⇒　女優名）。
撮影したフィルムが現像所の停電でボツになってしまう。
妊娠３ヵ月で水着になるのを嫌がる脇役女優ステイシー（アレクサンドラ・スチュワルト）。
言うことをきかない子猫への演技指導。
そして、ベテラン俳優アレキサンドル（ジャン・ピエール・オーモン）の交通事故死。
次から次へと降りかかるトラブルに、トリュフォー扮するフェラン監督が、どのように映画完成にもっていくかという興味は、確かに存在する。
（結果的に、映画はまるで魔法のように出来上がっていく）

映画製作の裏側を描いた点で、非常に興味深いことは確かだが、アメリカ映画ならまったく異なった毒気のある作品となっていただろう。サスペンス映画に様変わりしていたかもしれない。

世界中で作られている映画の裏側で、今も繰り返されている様々な「真実」を、軽妙なタッチで描いているのはさすがトリュフォー監督。
ラストに近づくにつれて、人々の気持ちがまとまり盛り上がっていくような、ありふれた展開にはなっていない。それどころか、映画を作り上げようと本当に専念しているのは、トリュフォー自身が演じている‘監督’だけである。

若手俳優アルフォンスを演じたジャン・ピエール・レオ。
５９年「大人は判ってくれない」（トリュフォー監督）で、１２歳の主人公アントワーヌ・ドワネル少年を演じた彼も、本作では２９歳になっている。当時の面影は感じられない。

懐かしきヴァレンティナ・コルテーゼもいいが、やはりジャクリン・ビセットの優雅な美貌。
６８年「ブリット」、７０年「大空港」ですっかりファンになった一人。
優しい顔だちと、吸い込まれそうな青い瞳に、この映画でも魅了されてしまう。

トリュフォー監督の一言によれば、‘真実’と‘真実らしく見えるもの’のどちらに、本当の真実が存在するのかを描きたかったとのことだ。