ジャッカルの日

私見だが、サスペンス映画群の中ではかなりの上位にランク付している名画。
フレデリック・フォーサイス原作の映画は、７４年「オデッサ・ファイル」（ロナルド・ニーム監督）、８０年「戦争の犬たち」（ジョン・アーヴィン監督）も観ているが、やはり本作がナンバー・ワンであろう。

フランスのド・ゴール大統領暗殺をもくろむ殺し屋ジャッカル（エドワード・フォックス）の行動を描いたサスペンスで、特にもの凄い緊迫感で迫るラストは特筆に値する。
アルジェリアの独立が認められて以来、軍部を中心にした保守過激派OASは、常にド・ゴール大統領の命を狙っていた。（ＯＡＳ＝一種の秘密軍事組織と勝手に理解）
何度も暗殺に失敗し、追い込まれてきたOASは、暗号名をジャッカルというプロの殺し屋を雇うことにする。フランス公安当局はOASの不穏な動きを察知して捜査を始めるが、ジャッカルは巧みに公安の目をくぐり抜け、ド・ゴールの身辺に迫る．．．

この映画は単なる娯楽映画とは一線を画し、ドキュメンタリーのような落ち着きを醸し出しながら、深く静かに展開していく。この味わいがなんともいえず、いい意味で心地よい。

偽造された身分証明書、精巧な狙撃銃、髪染めと眼鏡、そして傷痍軍人に隠された○○．．．
フレッド・ジンネマン監督の徹底した演出が冴えわたり、エドワード・フォックスはこれらの小道具を駆使し、孤高の狙撃者を演じて、彼の俳優人生を決定づけることとなった。

森で狙撃の練習をする場面のフォックスは、アスコット・タイとシャツのラフな服装だが、全般的にはスーツをビシッとキメて、いかにも英国紳士風である。
その彼が、膝から下が切断された傷痍軍人に扮して登場するあたりは、反骨精神逞しいといわれたフォックスの片りんをみた思いだ。

この映画に関する某紙の記録によれば、様々なエピソードが残されている。
ド・ゴール大統領には、彼の物まね専門の俳優（エイドリアン・カイラというらしい）が扮し、ロケ撮影中に彼を見た通行人が、何度も振り返ったという。
又、フランス内務省内部の撮影に成功したこと、警察当局の協力を得て、パリのモンパルナス広場を３日間、すべて交通止めにしてのロケに成功したこと、等々である。

「英・仏映画」だけに出演俳優の大半がイギリス、フランス出身の俳優で占められているが、他にもレバノン、南アフリカ、中国、ドイツ、ベルギーなどの出身俳優が顔を揃え、国際色豊かな作品となっている。
そういえば監督のフレッド・ジンネマンはオーストリア出身である。

この面白さとリアルさは、原作のＷ・フォーサイスが実際にド・ゴール大統領の報道記者をしていた経験からくるものでもあろう。

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　昔なんで自信ないんだけど。

　この映画は原作に引っ張るように作っていると思う。もしくはドキュメンタリータッチなんで、それは当然説明不足になるんで、

　〈どうしてジャッカルが暗殺に失敗したのか？〉という肝の部分がわかりにくいと思う。

　以下、ネタバレ。


　この映画の射撃なんだけど、この映画のままだと、単なる射撃ミスで、これは確か原作だと

　さらにネタバレ防止のため、コメント欄につづく。（原作読まないという気になる人だけ進んでね）

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　この原作は日本にフレデリック・フォーサイスの名を知らしめた記念すべき作品です。そして映画の方も原作の緊迫感を再現した傑作となっています。
　本作の成功の鍵は主演のエドワード・フォックスの起用でしょう。この役者さんはどちらかというとバイ・プレーヤーであり、あまり有名でなかった。（イギリスではどうか知りませんが。）そのせいで変な先入観がないために、ジャッカルという殺し屋が存在感のあるキャラクターとして観客に受け入れられたのではないかと思います。
　そして、このジャッカルという男を徹底的なプロフェッショナルとして描いているところも物語にリアリティを与えていると思います。武器や偽造パスポートの調達は金に糸目をつけずに一流のプロに依頼し、ゆすろうとした相手をいともあっさりと殺してしまう。この後も関わりあった人達に秘密が漏れたり相手の持っているものが必要であった場合には次々と手にかけてゆきます。ためらいも無く人を殺す描写が一流の殺し屋であることをより強調します。
　さらにドゴール大統領を守る警察の側も単純な正義の味方ではありません。必要となれば暗殺を計画した反政府勢力のボディ・ガードを拉致し、拷問する。情報の漏洩が発覚すると関係者全員の盗聴を行うといった手段を選ばない面も描きます。
　そうした描写により、物語はプロ対プロの対決という様相を呈してクライマックスに向かって緊迫感がどんどん高まっていきます。実際には標的のドゴールは暗殺されなかったことは皆知っているのにジャッカルの行動に手に汗を握るのです。一流のプロが周到な計画を立てた暗殺が何故、どのようにして失敗したのか。終盤近くのそのシーンにはレヴュアーもあっと声をあげそうになりました。
　その辺りはさすがにネタバラシをすると興ざめですから是非、ご覧になって下さい。タイトルですが、ジャッカルが偽装のために、あるものに組み込むことのできる特注のスナイパーライフルを発注し、出来上がった銃の試射をする場面が非常に格好よく、当時、あのライフルが欲しかったのです。

暗殺者【ジャッカル】もちろんコードネームで　実在を噂された伝説のスナイパーの物語。

派手なドンパチも無く　人間離れしたスーパーマンや秘密兵器も登場しない。地味な作品なのですが　逆にリアリティがあり　「どこまでが真実なのか？」って製作当時から話題になっていました。

Frederick Forsythの名著の数々
『ビアフラ物語』『ジャッカルの日』『オデッサファイル』
『戦争の犬たち』『シェパード』『悪魔の選択』
『第四の核』『ネゴシエイター』『神の拳』
『イコン』『ハイディング・プレイス』『カリブの失楽園』
などなど　みな味わい深い作品で　けっこう映画化されています。
映画もいいんですけど　秋の夜長に　たまには読書でもいかがですか？　読み応えある作品ばかりです。　

リメイク版の『ジャッカル』は　別物になっていますので　比較することは無意味だと思います。

女性が色仕掛けのスパイと有閑マダムだけというのがチョイと時代を感じます。