とんび

　原作未読、テレビドラマにもなっているそうですが、観ていません。瀬戸内海に臨む海沿いにある広島県備後市という設定の、郷愁を誘う昭和の飾らない街並みや懐の深い大らかな海といったロケーションが素晴らしいです。頑固で意地っ張り、有り余る愛情がありながら素直に愛情表現のできない不器用な父親の子育てと、そんな父親に反撥しながらも、地域の人々に温かく見守られて立派に成長し、父親の想いを受けとめて社会へと羽ばたいていく息子の姿を情感たっぷりに描いている。父親であるヤスこと市川安男を阿部寛が渾身の力で熱演し、豪華な共演陣が物語をしっかりと支えている。ややもすればセンチメンタルに陥りやすい内容を、ときおり時系列を前後させることで、むしろ過剰にならずサラリと描いていて、好印象。

　親の愛情を知らずに育ち、地元の運送会社で働くヤスは、彼にとっては望外の、美人で気立ての優しい美佐子と結婚し、息子の旭に恵まれる。幸福だったのも束の間、旭が３歳のとき、美佐子は旭をかばって事故で亡くなってしまう。地域の人々に助けられながら、ヤスは男手ひとつで愛情をかけて必死に子育てをする。小学生になった旭は、母親の事故の真相を知りたがり、ヤスは悩んだ末に、旭を傷つけないよう自分のせいだと噓をつく。それ以降ふたりの間には不協和音が生じるが、ヤスは悪いことは悪いと身を挺して旭の行動を糺し、辛い反抗期を乗り切っていく。

　愛情をかけた子どもの成長は嬉しくもありまた寂しくもあるもの。成績優秀で東京の大学に進学する旭を、ヤスは本心とは裏腹に、二度と帰ってくるなと送り出す。20歳になった旭は思わぬことから母親の事故の真相を教えられ、自分のために父親が優しい嘘をついたのだと、ようやく事実を知ることとなる。その後旭が就職して、彼らしい恋を貫き、彼自身が父親となっていくまでが、様々なエピソードを交えつつ描かれている。エンディングは重要だと思うのだけれど、わざわざ令和にする必然があったのかどうか。そこだけ疑問に感じる。

『フーテンの寅さん』的な 昭和の人情モノでした。

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ＴＢＳドラマを観た上で鑑賞したけど、どっちもそれぞれよかったなー。
阿部寛と安田顕のやり取りが面白すぎて、作品の主旨になってる父子愛はもちろん、こういう仲っていいなあと思ってしまった。

父子愛って、母子愛とはまた違った感覚で新たな感動があるよねー。
無愛想で不器用なヤスと息子アキラの関係は切なくて微笑ましくて時々焦れったい。
おれは親父と仲が悪かったから、こういう関係は本当に羨ましく思えた。

周囲の人達もいい人ばかりで、アキラはある意味幸せな環境で育ったんじゃないかなー。
みんなが母親代わりみたいな。そんな周囲に救われて、ヤスもアキラを育てあげる事が出来た気がする。
アキラが真っ直ぐに成長出来たのはそんな環境が証。

ただ、学生時代の北村匠海の髪型ってウィッグなんだろうけど、ヘアメイクさんヘタクソ過ぎじゃないか？あれ。
違和感ありすぎて気になって仕方なかった。
後、歳を重ねて中高年になった２人。メイクがヘタクソすぎだし声色は当然若いままだし、これも違和感ありすぎた。

まあでも、いい作品でした。
時代がそうだったのか、人間がそうなのか、ほっこりして日本人っていいなあって思えたなー。

ドラマもまた久しぶりに観たくなったし、ディスカスさんにお願いするかー。




おすすめ度 ８０％

地域のみんなが育ててくれて、意固地な父の愛情を一杯受けて、成長していく父子の物語。役者が揃っていて感動を呼ぶ。

原作小説はずいぶん前に読みましたが、とても泣けた小説でした。
数年前にTBSの日曜ドラマで内野聖陽さんが父親のヤスを演じ
息子は佐藤健くんが演じました。
連続ドラマだから、当然深堀もされていて、
内野さんのヤスが最高にうまくて、凄く良かったドラマの一つです。
で、今度は映画になりました。
阿部寛さんがヤスを、息子のアキラを北村匠海くんが演じています。

うーん、良かったのですが、正直連続ドラマほどの感動は無かったです。
やはり2時間ちょいでは
妻を失った父親と、母を失った息子の絆と再生を描くには
どうしても早足になってしまうので、薄く感じてしまいます。
とはいえ、それでもやはり最後は涙が。。。

近所の人たちに温かく見守られながら、皆に育ててもらったアキラ。
他人の子供を我が子のように思う気持ちが
古き良き時代を感じさせ温かいです。

あと、阿部寛さん、がらっぱちなヤスになりきって
相応しいキャスティングなんだけど
彼の台詞だけ聞き取りにくかったのが残念です(笑)
字幕が欲しかったな(笑)