沈黙−サイレンス−

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　キリスト教が弾圧されてる日本で行方不明になった師匠を追いかけて日本にやってきた神父さんの地獄めぐりの話。

　外国のスタッフさんが異文化を描くとたいてい失敗するのが当たり前だと思っていましたが、普通に本格時代劇として違和感なく見ることができました。それだけでも凄いと思います。そして、冒頭からキリスト教徒に対する拷問が描かれて見るのが辛い160分でした。

　当時の人々がいかに辛い日常を送っていたのかを主人公の目を通して体験体感させて、何でそこまでして人間を拷問できるのだろう。やられる方は棄教せずに拷問に耐えることができるのだろうか。またすぐに裏切って、また罪を告白して苦悩してという様々な人間がでできて、本気で人間って何なんだろう。何でこんなことしているのだろうと辛い映画で退屈せずに見ることができました。

　主人公がお奉行様や師匠から日本にキリスト教が根付かない理由を語られますが、「おてんとうさまが見ている」となんとなく思いながら見ている、特に宗教を信奉していない日本人のボクからしたら「そうだよなー」と彼らの方が正論に感じました。

　ただハリウッド映画だからか仕方ないので突っ込むのは野暮だとは思いますが、登場人物全員が英語しゃべりだしたりしてしかも劇中ではポルトガル語として描かれているらしいので、そこらへんで入り込めない部分もありました。お百姓さんから門番からみんな英語ぺらぺらでした。それに主人公の創造か妄想かキリストらしき声が語りかけてきて、全然沈黙ではなかったです。それに主人公が最後に決断する理由も人を救うため。という理由が安直すぎるのではないかと思いました。しかも本当は信仰を捨てていないみたいなエピローグもキリスト教圏から見た描かれ方だから仕方ないのかと感じる描き方でした。人のために犠牲として棄教するのかしないのかではなく、本当に心が砕けてしまうほど追い詰められた人間の苦悩を見てみたかったです。

　にしても日本を舞台にした映画なのに日本で撮影できないのが悲しい作品でもありました。
　

キリシタン弾圧といえば江戸幕府が悪いことをしたかのような印象を持ちがちですが、
そうではなく、キリスト教が広がる危険性をきちんと把握していたからこそ弾圧したのでしょう。キリスト教を受け入れたがために侵略され、占領された国のことを知っていたのでしょう。
正しい判断をした先人に感謝です。

それにしても、映画に出てくるキリスト教徒は自分たちが絶対に正しいと疑うこともなく、
他国に乗りこんでまで布教する姿は異常としか思えませんでした。
自分たちだけでひっそりと信仰しとけばいいんだよ。

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「観た」と軽々しく言ってはイケない様な気分になる重く重く厳粛な気持ちにさせられる作品でした。何か所かでトイレ休憩ははさみつつも全てを観終えてセミの鳴き声で終わりを迎えた時、キリスト教徒でもない自分がやった事も無いのに十字を切ってアーメンと言いそうになって止めました。
宣教師２人は自分達の恩師でもあるフェレイラ神父が日本で行方不明になってる事を聞き、「きっと棄教したのだろう」と言われたのを納得出来ずに中国経由で日本に密航します。でも辿り着いた先には超貧しい中、ひたすらにキリストを信仰する漁師や農民がいるばかりで、しかもその信仰が表沙汰になったら恐ろしい拷問と処刑が待っているというハードな場所。
フェレイラ神父の事を聞いても知らないの一点張り。彼等の世界は狭く小さい為、自分達の世界以外で知ってる人間はイッセー尾形演じる恐ろしい奉行イノウエ様だけだ。でもこのイノウエ様、何となく可愛らしい。恐ろしい事を口にするかと思えば、椅子から立ち上がる時は両サイドから抱えて貰わないと上手く立てない。それでよく馬に乗れるもんだと感心した。
キリスト教弾圧の歴史は日本の切っても切れない黒歴史だ。同じ国の人間が同じ国の民によくもそんな恐ろしい事が出来るもんだと改めて思った。
ほぼ主演だったアンドリュー・ガーフィールドが死んで桶の中でそっと手に握ってたのが、その貧しい農民から貰った手掘りの小さな小さな十字架だったのを見てホッとした。
政治は表向きの信仰は奪えても、心の中の信仰までは奪えない。

キリシタン弾圧に関しては学校の歴史の時間で学んだ程度。宗教に関しての知識がないので内容の本質的な部分の意見は避けます。
映画を観る前は物語に入って行けるかとても不安でした。
結果、まず感じたのは、こんな言い方はきっと間違っているのでしょうが、エイタテイメント作品として観て、正直とても「面白かった」です。
冒頭からぐいぐい引き込まれ、時間の経過も忘れるほど
スコセッシ監督作品は苦手な部類なのですが今回は没入感が半端なかったです。ある場面で不意に「ガチャン！」と大きな音がするのですが本当に身体が飛び上がるほどビックリしたのですもの。

先日、浅野忠信さんが出演しているトーク番組を見たのですが、この映画のことにも触れられていて、
最初はキチジロー役のオーディションを受けていたのだとか。
その時、スコセッシ監督自ら読み合わせをしてくれ自分のセリフを忘れるくらいのめりこんでくれた。落ちた時「ああいう人と映画を撮らなかったら俺の人生が嘘になる」と、諦めずに見事通辞役を射止めたとのこと。
そして受け取った台本が６ページまるまる英語のセリフだったのだそうですが。掴みどころのない笑顔でロドリゴに棄教を迫る、物語のキーマン役を見事に演じていたと思います。

でもやはりキチジロー役には窪塚くんでしょう。浅野さんではない。
イッセー尾形の不気味さ、塚本晋也の一途さ。
日本人キャストが豪華で、全員とても良いです。
登場人物の誰一人に対しても感情移入出来ませんが、共感という意味では全員に対して出来るような。
時間をおいてまた観てみたいです。

ところで、映画の最後のほうに着ていたロドリゴの着物の柄が細かな十字架に見えたのは私だけかしら？

16歳のまだ世間知らずの頃、この映画の原作、遠藤周作「沈黙」を通り一遍の感動をもって読み終えた。ただ「何故、神は沈黙されているのか」、そのテーマは深く心の中に残った。
その後、カトリックの短大に進んでキリスト教を学び、神父様や宣教師に講義を受けることになり、キリスト教の骨子を知ることとなる。しかし所詮、恵まれた子女が集うお嬢さん学校、かつて読んだ「沈黙」を思い出すこともなく、次に「沈黙」に出会うのは35歳、駅前で時間つぶしに入った書店だった。立ち読みで読んだ「沈黙」は激しい拷問の描写がただただ残酷に感じられたのだった。その頃は人生もかつてのような輝きを失い、この世を生きてゆく怖さのようなもののわかっており、信条のために人を殺したり殺されたりする人間の残酷さを実感として感じることが出来るようになっていたので、その時はこの小説から目をそむけることとなった。それとは別にそのあと、キリスト教徒であった三浦綾子氏の全集を丹念に読む時期があったのだが、私自身はキリスト教は頭で理解しても、信仰に入ってゆく機会も縁もなかったのだった。
それからさらに27年、テレビを見ていて偶然、マーティン・スコセッシが2016年に「沈黙」を映画化していることを知った。マーティン・スコセッシといえば私は20代のころ「タクシードライバー」をベータのビデオで100回近く繰り返し見てビデオごとビデオデッキお釈迦にしてしまったほどのファンだったので、今回慌ててこの作品を見ることとなった。

映画は小説と比べて淡泊だなという印象を持った。小説では迫害を受ける宣教師たちが「神は何故沈黙されているのか」についてもっと激しく苦悩する印象だったし、そのゆえの「沈黙」というタイトルであったと思う。これは余談になるが、何度も転んでしまうキチジロウは私の中では、もっと卑小な小男をイメージしていたので、窪塚洋介はハンサム過ぎて違和感があった。それはともかく、今回、最初に遠藤周作を読んでから46年、もう随分年をとってしまったが、何故、神が沈黙されているのか、それは神頼みの域を出られないからであって、ただただその存在を信じることにしか真の信仰はない、存在を信じられれば”踏み絵”なぞどれだけのものか。転んでも転んでも戻ってくるキチジロウの存在もそういう意味では、ただの心の弱い人物以上の意味を持ってくるのではないかと思ったことだった。