ヒメアノ〜ル

高校時代に壮絶なイジメにあって精神がぶっ壊れ、殺人を平気で犯すようになった森田。
バイト先の先輩が熱愛しているカフェの従業員・ユカと密かに交際中の岡田。
森田の凄惨な犯行、岡田のコミカルな恋愛事情が並行して描かれ、やがて交わっていきます。

最初の４０分くらい岡田のパートが続き、まったりモードだったのが、
岡田の後姿と共に「ｈｉｍｅａｎｏｌｅ」ってタイトルが浮かび、
不穏な雰囲気が一気に充満！

森田役が好演っていうか、なりきってて怖い…完全に目が死んどる！
普通の人には無敵の殺人鬼なのに、ケンカ慣れしているお兄さんたちには
歯が立たない森田がちょっと哀れ…
精神がヤバイだけでは勝てないのかｗ

森田の犯行シーンが無駄に生々しくて不快。Ｒ１５ってことか…
犯行シーン以上に、イジメのシーンが酷い！
どんな学校なんだ。世紀末過ぎんだろ。
これ、森田がイジメたヤツだけ殺していたなら、情状に持ち込めるんじゃないかな。

犬の命を奪わなかった森田。
ラストシーンが切なく考えさせられます…

森田君はこんなことする人じゃなかったよね？
物語の中で岡田君は森田君にこんなセリフを言います。
こんなこと、に関しては深く言及しませんが
岡田君、人は誰でもこんなことをするんだよ
そういう可能性は誰もが秘めているんだよ、と思いました。
人間の心の森の奥深くに進んでいけば
次第に方向感覚も進路も見失い
抜け出すことが出来なくなる。
岡田君は森の奥深くへ行ったことがない人で
森田君は森の奥深くへ行ってしまった人
きっと森の奥は深い闇で
光が届きません。
そこへ行ってしまった人は
同じ世界の別次元というか
同じ空間にいても
同じ世界にはいないのだと思います。
そういう人間の怖さ
人間の闇が描かれた物語でした。
稲中卓球部で大ヒットを飛ばし
人気漫画家になった古谷さんの漫画が原作。
稲中以降のほとんどの作品が
人間の心の闇に迫る
日常に潜む闇に迫るもので
正直、読後の後味は悪いものが多いです。
その辺も上手く表現できていたのではないでしょうか。
とても引きこまれました。

森田剛くんの存在感が際立ち
濱田くんとの対比も取れていて
物語としてのバランスもいいです。
古谷作品でも何気ない日常トークが結構大切な部分ですが
映画の中でもムロさんと濱田くんのやりとりのテンポや
二人の醸し出す雰囲気がとてもよかったです。
一体濱田くんは何歳まで高校生役を無理なく演じられるんでしょうか？（笑）
今回も馴染みに馴染んでいました。
佐津川ちゃんと濱田くんのパートも微笑ましくてステキです。
ドキドキを感じられると思います。

金子修介の「スキャナー」がまるでつまらないので早送りアウトに
した後 こちらの冒頭の工事だか清掃だかの現場の会話シーンを
見ると 映画だなあとしみじみ感ずることになる 要するに人が会話
するシーンをどう撮るかにおいて「スキャナー」も「シビルウォ」
も映画してないってのが一発でわかるでしょ

人間同士の間に働く情緒には二種類あって それが求め合う力と
避けあう力であるとしたのは アーサーチャップマンって精神科医
であったような記憶なのだが そんなお話ね

人の関係と 物語の進行が絡んでゆく様を 的確に10分で語られる
のだが 展開はさっぱりわからない気持ち悪いストーカー二人に
挟まれるボクちゃん しかしその岡田くん以外みんな変

35分のデブのいじめられっ子エピソードは弱いと思うんだけど
おう43分で何とタイトルが出て 突如 森田君が主役に躍り出る
するとイジメは重要なファクターか 50分からセクスと暴力の
テーマが 山下敦弘「鬼畜大宴会」のように冴えてくる

森田君に比重がかかり過ぎの後半で イジメのテーマがクローズアップ
され 前半のある種の抽象性の度合いが現実寄りに薄められてしまう
のは残念だが しかし主人公の小さな生き方は全体の物語に筋を
通らせて 実は岡田君のフラジャイルさが このえいがの確信である
とわかる

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ラストシーンの「お母さん麦茶持ってきて」になぜグッとくるのか後付けで気づくワナ。
原作未読なのですが、テーマは「反社会性人格障害者の悲哀」だそうで、森田は虐めが原因でおかしくなったのではなく、ナチュラルボーンキラーだったのだとか。

前半の明るいカフェで、数年ぶりに再会した森田に安藤に強要され致し方なくの体で岡田が話しかけ、凶悪な風貌の森田が意外と穏やかに答えるシーン。ここだけを取ってもラストでは岡田がいかにゲスかが露呈します。
この軟弱で優柔不断な弱者っぷり全開の岡田のゲスさに関しては枚挙にいとまが無く、ユカはユカで初合コンに凄まじくイタいブスを同伴し狙いの岡田をゲット、森田にヤサをしられた時の対処の早業は、これまで一体何人ストーカー（彼女の被食者のなれの果て）いたんだよと思えるほど。

ユカとの初デートの際、岡田は彼女に絡むチンピラにはスルーを決め込んだくせに、ラストバトルでは、手回しよく警察を呼び、到着のタイミングを見計らって窓から落ち、警官は岡田にナイフを振り上げる森田を目撃するという全てが岡田の思惑通りに進みます。かくしてユカはのほほんとヒーロー＆彼氏気取りの岡田を踏み台にして更なる被食者を探してゆくのでしょうねぇ。
弱者の仮面を被り、自分以下の最底辺の人々を捕食しながらのうのうと暮らす、この2人こそが現代日本の標準的な下層階級なんだと思います。

けれど、その明るい前半では、観客はネジが緩んだ安藤とちら見えする森田の醸す凶悪な空気に惑わされ、2人のゲスさに気づかないまま一転、ナチュラルボーンキラー森田が本格始動。
殺されるのは、多分誰もが一度は鼻につくと思ったであろう”勝ち組”の人々。
悲惨な高校時代を過ごしつつも高級ホテル勤務（横領に関してオヤジがそこまでするはずないなど言ってるのでともすればホテルオーナーの御曹司？）でリア充のデブで気弱なホテルマン、お節介な正義の鉄槌男、いいコートを着て森田に舌打ちをして通り過ぎるＯＬ、美妻（仮）の待つ豪邸に高級ロードバイクで帰宅するビジネスマン等々、彼がとどめを刺さなかったのはもともとポンコツの安藤だけなんですね。

そしてなぜか森田が白い犬を避けるシーン。
車は大破し森田は足を潰され、記憶は高校入学当時（虐めを受ける以前）に逆行、「借りてたゲーム返さなきゃ」「おかぁさーん、麦茶持ってきてー」．．．。
なぜグッと来たのか、一瞬「良き思い出」への脊髄反射かと思ったものの、いくつもの奇妙な点を思うにこんな仕掛けがあったのかと驚かされました。
森田は、岡田が辱めに加担し嗤った事を憶えてないと言うが、ならば岡田はその瞬間、森田が白い犬を避けた理由を憶えていたのだろうかと思わずにおられません。

「トリハダ」でお馴染み（失礼）佐津川愛美はこういう裏表のある役では天下一品、幼い頃は超絶美少年だったのにｗなぜか強面に成長してしまった森田剛の影と悲哀に満ちた殺人者も見事です。

監督としては、大人の判断で「反社会性人格障害者の悲哀」と言う部分はあえて外したそうですが、原作をよく読み込んでいて本当ならどこを描くべきかを完全に把握しつつも、どうすれば大人の気配りの行き届いた作品と成し得るかを考え抜いた作品だと思います。
原作は、森田がユカに執着する理由（キッカケ？）があったり、結末も全く異なるらしいので、とりあえず原作買いに本屋に走るとします。

昔「ランチの女王」というドラマで森田剛くんがDV男を演じていたことがありましたが、当時からそういう役がすごくハマるなーと思っていたので、今回の映画もかなり期待していました！
もう期待を遥かに上回りすぎて凄かったです。正直、こういったテイストの映画は妙にリアルに捉えてしまうので苦手でしたが、森田剛くんの熱演ぶりには感動すらしましたし、ただ「不快」だの「怖い」という感想で終わらせてしまってはいけないと思いました。