紅の豚

古き良き時代へのオマージュですね。
男が男で、女が女でいられた時代っつうのかな。そんな時代とそこで生きていた男女へのあこがれもあるよね。豚にしたのは、そんな気持ちをストレートに表現することへの照れ隠しのような気もするなぁ。
久石譲の音楽はどの作品でもすばらしいけど、この紅の豚に流れるあの曲は涙ちょちょぎれるほど心に沁みてきますよ。

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　宮崎駿監督の趣味が横溢している一編です。「カリオストロの城」でも書きましたが、この方は飛行機、車、船などの乗り物が好きで、それまでは表に出ないように背景として遊んでいて、分かる観客だけが「ニヤリ」としていたのですが、この作品では目一杯表現されているのが嬉しいところです。
　冒頭の空賊たちの大型飛行艇を襲撃する主人公ポルコ・ロッソ（タイトルの「紅の豚」という意味ですね。）の戦闘飛行艇の動きの素晴らしいこと。ちゃんと各舵の動きも表現されていたり、くるくると方向や姿勢を変える都度、陽光を浴びる機体の色の変化が表現されていたり、とにかく男の子の魂をくすぐる要素に溢れているのが嬉しいです。（男は幾つになってもこういう映像の前では子どもに戻ってしまうものなのです。）
　それと宮崎アニメにしては珍しく大人の男が主人公というのも貴重です。声を「刑事コジャック」（自分で書いてて古ぅ〜と思います。若い人には分からないでしょ。）の森山周一郎さんがあてています。時代と国がムッソリーニが政権の座につく頃のイタリアということで、確実に暗くなろうとする時代背景の中で頑なに自分の進む道を変えようとしない中年男。まさにハード・ボイルドであります。
　そういう意味でも、この映画は男（正確に言うと男の子）向けの作品です。本来は敵である筈の空賊たちもどこか憎めない男たちだし、途中でポルコに戦いを挑むアメリカ人カーチスもちょっと軽薄で女好きではあるが、卑怯なことはしないといった登場人物それぞれに魅力的です。
　あと、ポルコが戦争中に戦いの後、敵味方の飛行機が一直線になってどこかへ飛んでいってしまう幻想的なシーンはロアルド・ダールの短編に同じシーンがあったように記憶しています。残念ながら題名は忘れてしまいましたが。多分、監督も同じ作品を読んだことがあるのではないかと考えています。
　最後に忘れてならないのは、この作品を引き締める魅力的な女性たちです。ポルコの古い知り合いのレストランの女主人ジーナ、溌剌とした設計技師フィオ、この二人の前での男たちのだらしなさといったらありません。案外、男の映画のように見えて、実は女性が全てを仕切っているというのが本当のところかも知れません。
　色々ととりとめのないことを書き散らしてしまいましたが、監督もスタッフも楽しんで仕事をしているのが分かる作品というのは見ている方も気持ちのいいものです。未見の方は是非ご覧下さい。　

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宮崎監督レビューまだまだいきます。

さて、紅の豚。私的ジブリNO.1作品です。
スペシャルチューンの真っ赤な飛行機。
アドリア海のエース。
陽気できのいい空賊。
そして、男どもの集まる、バーアドリアーノ（だっけ？）

かっこいいとはこういうことだ

プロフェショナルな仕事
含蓄のある言葉
そして、女をまもるために戦う。
自分のプライドのために戦う。

かっこいいじゃないですか。
ただただかっこいい。今でも憧れる大人像です。

宮崎監督作品の中でもっともシンプルにテーマを置いてるんじゃないでしょうか？受けても迷わず、受け取れる。

と思うんですけど、いかがでしょう。
実はずいぶん前にこの映画は観ていたんですが、その時はあまり面白くないなあ、という印象でした。それまでのラピュタやカリオストロといった冒険活劇を期待してた部分もありましたしね。
しかし、何年かごとにＴＶ放送で観たり、今回もＤＶＤで観たりしていたら、なんかスルメを噛むかのごとくだんだんと味わいが理解出来るようになって、うお面白いじゃん、という感想に変わってました。
大人のダンディズムがテーマなので、やはり観る側も大人になって初めてこの作品の面白さを理解できるのかも知れませんね。
男は見かけじゃなくて、心意気と優しさなのだ。シブイぜっ、森山周一郎。

ストーリー／８０点　クオリティー／９５点　キャラクター／９５点
独偏満足度／８５点

　宮崎アニメの中で、なぜか『紅の豚』だけはず〜っと観ないままでした。宮崎アニメの中で一番！という声も耳にしつつ、なにか豚が主人公というところに変な拒否感みたいなものがあったのです。
　だいたい『紅の豚』を迷うことなく“くれないのぶた”と読める人がどれだけいるのでしょう。ふつうは“べにのぶた”になりませんか？こうやって書き込んでるときも“べにのぶた”と打ち込むほうが早いし。無粋なのはオレだけかな？
　ま、それはさておき、ようやく今頃観たわけですが、参りました。むちゃくちゃ良かったです。
　不細工な豚顔に森山周一郎の渋い声。さすがに最初は違和感ありますが、終わるころにはやみつきです。それにジーナ役の加藤登紀子が見事にマッチ。ストーリー展開も出てくるキャラたちもコテコテの宮崎仕様なんですけど、やっぱりあのラストシーンが彼らのその後をいろいろ想像できて素敵ですね。さらにエンディングで流れる加藤登紀子の歌が何とも心地良い余韻を与えてくれます。
　個人的には『ハウルの動く城』（←一般的評判は芳しくないですが）『カリオストロの城』についで好きな一作となりました。
　ただ、それでもまだ“べにのぶた”と読んでしまうのですけどね。