夜行観覧車

石田さんが良い

役者は良い。音楽も悪くない。でもなんか惜しい

vol5

一人の主婦のささやかな夢が叶った。
てっぺんに登り詰めると、その上はない。
維持か堕ちていくか。

わたしの夢は家族のしあわせ。
そう思って身の丈ちょっぴり背伸びの一軒家を購入したところから崩壊が始まる。
その崩壊の仕方が、見ていて辛くなるくらいの壊れっぷりで
ここからの立て直しなんて可能なんだろうか。
と息を詰めて見入る。

隣家で起こった事件も、一体誰が犯人なのか。
なぜしあわせを絵に描いたような一家があんな凄惨な最後になっちゃうのか。

そのあたりのちら見せにも引っ張られ、吸引されていく。

ああ、面白かった。

杉咲花ちゃんがまだあどけなさが残っていてかわいい。

vol4

湊かなえの特徴は、誰かに語らせておいて、ほうほうと聞き入ってきた頃に
がらっと違う人物に語り役が変わること。
語り役が変わることで、物語の見え方がまるきり違ったものに見えてきて
読者はあれ？あれ？
と引き込まれていく。

語り役が次々と立ち替わり入れ替わりし、読者は物事全体がつかめてくる。

これをドラマではどう表現するのだろう、と思っていたが、なかなか脚本家は
うまく表現していた。
簡単な手法でいて、あまり見なかった切り口で面白い。

物語も佳境に入ってきて、母娘の関係も壮絶なものとなってくる。

何もかも心に押し込めて、自分さえ我慢すれば丸くなるのよね、
だから黙ってわたしが我慢する、
という態度で生きてきたあやかの母。
彼女を演じるのが鈴木京香。

もう、わたしなんかはちらっと自分の母親が重なったりして余計に見ていて
イライラしちゃったんだけど、あの娘の心配そうな顔で覗き込むやつ、
あれ、やられる方は余計にイラつく。
母親的にはどう振る舞っていいのか、困って本当に心配で期限を取ろうと反射的に
ああなってしまうのだろうけど、やられる方はそんな顔で見てくんな！
ってなるんだよね。

困ったね。

鈴木京香演じる母親は、夫に対しても娘に対してもどこか遠慮していて、
相手を逆撫でしないようにしないように振る舞う。
でもそれが逆に相手を苛立たせる。

わたしはこんなに頑張ってるのに。
こんなに我慢しているのに。
何で分かってくれないの？

がやっぱり爆発するんだけど、そのシーンで見せた鈴木京香さんの表情が
もう、見たことのない彼女の顔で、こんな顔になるの？！
ってびっくりするくらいの怖いすごい表情で、この女優さんすごい！
と初めて思った。

映画であそこまでできるのは何となく分かる。
テレビドラマであそこまでの表情が出るなんて。
いやあ、鈴木京香かっこいいなと思った。

杉咲花ちゃんもすごいんだけど、鈴木京香さんのあの表情はもうこびりついて離れない。

vol3

女だから描ける女特有の僻みや妬み。
そして群れてねちねちとターゲットを攻撃して蝕んでいく。

私立高校受験に失敗し、坂の上の高級住宅地から坂の下の公立高校への通学は、
苦痛と屈辱以外の何ものでもない。
そこへ加えて、中学からの同級生女子軍団からの陰湿な嫌がらせ。

もう見ていてぞわぞわする。
おぞましい。

あやかの母は母で、高級住宅地の奥様方の中で浮きまくり、異分子が紛れ込んでこの地域を
汚すものとしてチクチクといびり倒される。
もうそのやり口やら何やらが一つ一つバカバカしくて、そういうプライドの張り合いでしか
自分を表現できないのかとうら寒くなる。

みんな暇なんだろう。
みんなばかなんだろう。

でも、やっぱり人間だからわたしもあんなひどい仕打ちを受けたなら相当に傷つくだろうし、
ドラマだと分かりながらも見ているだけで辛くなる。
その中で唯一手を差し伸べてくれるのが近所の一家だ。
その一家の奥さんは石田ゆり子なんだけど、彼女の存在が本当に救いだ。

それにしても石田ゆり子はきれいだなあ。
汚くならないなあ笑。

でも完璧で理想のような一家、と外からは見えるおうちでも
実情は全く違うものだったりする。
何か、不安感を起こさせる。