凍える牙

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

韓国でのタイトルが『ハウリング』だったせいか、私はハリウッド映画『ハウリング』のリメイクだと勝手に思い込み
内容もそれに準じたものだと思ってたのでちょっと肩透かしをくらってしまいました。

途中で違うことに気づきましたが（笑）

ストーリーに気づくとこの狼犬のあの綺麗なブルーの目をみると泣きそうになってしまいます。チルプンだったかな。
動物ものはだめですね。すぐ涙腺が。。。


内容も相当きつくて辛いです。
娘を廃人にしたものたちへの復讐映画ですが
それを自分が愛情育てた狼犬を殺人の道具としてしまうところに泣ける。

女性蔑視にも腹立たしくて、そこも見るのが辛い。

けれど、うだつの上がらないソン・ガンホ演じる刑事とバツイチで孤独な新人刑事イ・ナヨンの二人がやっぱりいいですね。
イ・ナヨンさんのこんなアクションってあまりみる機会がないんじゃあないかしら。
バイクも乗りこなしていて驚きました。

脚本も良いからか、いろいろなミステリー要素であきさせず、狼犬の能力に言葉を失います。
テレビで活躍のナム・ボラさんやイ・ミンホ君の顔もありました。

ソン・ガンホは韓国を代表する演技派俳優で、「大統領の理髪師」では
国家権力に翻弄される小市民の床屋、「殺人の追憶」では俗っぽい田舎の刑事、
「渇き」では聖職者の吸血鬼等、様々な役割を演じていますが、
どんな役も上手く演じています。
今回の役割も、エリート街道から落ちこぼれたベテラン刑事の役で、正にハマり役で
哀愁漂う、いい味出しています。

この作品は乃南アサ原作の「女刑事・音道貴子」シリーズの直木賞受賞作品の
「凍える牙」で、本来はイ・ナヨン演じる女刑事に比重がかかるのでしょうが、
ソン・ガンホがメインとなっているので、いささか男くさい演出となっています。
（イ・ナヨンは戸田恵梨香に似てるなあと思いながら見てました。）

内容ですが、「狼犬」（昔、ムツゴロウ動物王国でみたような．．．。）が、連続殺人犯
で、この狼犬を追いかける事が物語の中心となってますが、
その過程で邪険にしながらも、新米女性刑事と信頼関係を築いて行く、２人のやり取りなどが
ほほえましく、物語の進行を面白くしています。
主人の恨みを晴らそうとする狼犬の健気さも、何か物悲しい印象を与えています。
後、韓国だからなのか、男性中心の職場と言うことで、女性の扱いが酷かったり、
そういった社会的問題も含まれており、全体的にはハードボイルドな味付けの映画です。

原作も元々ミステリー性は弱いのだが、この映画は細部がすべて浅い。男性中心社会やその中での醜い出世競争、仕事と家族のあり方や家族との接し方、犯罪者の暗黒面、被害者の苦悩、どれも浅い。バイクの追跡シーンも格闘アクションも欠伸が出る。
結局のところ、下手に社会や家族・動物愛を下手に描き込もうとするからダメなのだと思う。ミステリーならミステリー、アクションならアクション、ファンタジーならファンタジー、ホラーならホラーでよいから、まずは映画としての娯楽性を徹底してくれ。すると、結果としてストーリーの中に埋め込まれた社会風刺や寓意も浮かんでくると思う。個人的には、「シュリ」や「オールドボーイ」、「グエルム」の感動は韓国映画からなくなって久しい。

先に原作を読んでいて、そのイメージを映画でもう一度、という気持ちでみると、たぶんガッカリします。
原作は原作、映画は映画。
ソン・ガンホ 、 イ・ナヨン の掛け合いを楽しむ映画なのでしょう。

この映画は有料放送にて昔見ました。最近になって原作を読んだので、もう一度映画観ました。
どうも映画の女刑事さんは、ひ弱過ぎる印象でラストのチルプンとのシーンが生きていない気がする。
小説を映像化するのって、取り上げる部分と、削る部分のバランスが難しい。
小説のラスト、疾風を追い音道刑事がバイク追走するシーン。木立の中ぬかるみで転倒し再度バイクに
またがりライトを点けた時、目の前に疾風が・・。まるで音道を待っているかのように。そして再び
走り始める犬と人。ココはしっかり描いてほしかった。
さすがに韓国映画なので、首都高速とか日本の地名は使えないけれど追走シーンの臨場感がなく
もの寂しい。