神弓−ＫＡＭＩＹＵＭＩ−

韓国が昔、清国に侵略された丙子の乱を題材に制作された映画。
まだ小さい頃、両親を殺された兄妹ナミとジャイン。
兄のナミは、父が殺される直前「友人を頼り逃げのびよ、妹を守れ。」と言い渡されます。
結局、この二つの父からの遺言を、ナミは愚直にも、父から受け継いだ神弓によって守り貫く結果となるのが、この映画全体のテーマとなるんですね。

逃げのび、１３年の月日が過ぎ、大きくなった兄妹ですが、父が汚名を着せられ死んだことから、勉学に励もうとも、武術に勤しもうとも立身出世のかなわぬことが分かっているナミは、
斜に構えて世の中を過ごすしかなかったのでしょう。だから、清国（吹き替えでは満州国と言われていますが）が侵略し、村人や妹を拉致するという非常事態がなければ、ナミの一生は
とるに足らないものだったかも知れないとも考えられます。
物語は、妹をたった一人で奪還するまでのナミの大活躍を描ききる形で終結に至るのですが、韓国で８００万人の動員を記録できたのは、弓を使ったアクションの面白さと、満州国への
報復の過程をスリリングに描いていったところが大きかったのでしょう。
でも、敵国の残虐さをかなり描いていること、そしてその報復として敵国の王子を火祭りにするという行為すら痛快なタッチで描き、先の戦争での日韓併合の歴史を彷彿とさせる形が
韓国のナショナリズムを奮い立たせる形でヒットしたのではないでしょうかね。先の戦争では、日本は満州国を傀儡政権として中国へ進出していったのですから、この映画の敵国も満州
としなければならなかったのでしょうか。

「極楽島殺人事件」から想像もつかない出来。
同監督ながら、まったく雰囲気が変わった戦闘もの。

大人がド真剣に走りまわすガチ鬼ごっこ。
これが大いに見もの。敵も味方もあっぱれなその一連の戦闘に感銘。

技術なのか、予算なのか、ちょっぴり甘酸っぱいVFXが混在するものの、
その出来によって緊張が途切れることはないのでご愛嬌。

弓つながりとして、これを見てからの『ハンガーゲーム』はひどい。
米国では、ハンガーゲームやアベンジャーズの影響で、弓の玩具がよく売れたと聞きますが、
私は本作の使い手たちを見て、ようやく“弓の魅力”をレゴラス以来感じることができました。

この戦闘スピードから味わえる緊張感や緊迫感は鑑賞前の期待値をクリア。
まずまず楽しめた韓国アクション映画でした。

本作が韓国で大ヒットした背景は二つあると思います。
一つは、単純に追跡アクション映画として面白いからですが、もう一つは、韓国人として絶対に忘れられない清に対する恥辱の歴史が背景にあることです。ソウルの三田渡に韓国指定史跡として現存する“大清皇帝功徳碑”がそれを物語っています。
1936年、明の衰退とともに勢力を増した後金のホンタイジが皇帝に即位し国号を清と改め、朝鮮に対して「臣下にならなければ攻撃する」と脅しますが、李氏朝鮮王朝第16代王の仁祖はこの要求を拒絶して戦いを選択します。
最終的には南漢山城で40日余り籠城したものの降伏し、三田渡において恥辱の“三跪九叩頭の礼”で許しを請うことになり、その後、日清戦争で日本が勝利し1985年の下関条約で朝鮮の独立を認めさせるまで、およそ250年もの間、清と朝鮮の主従関係は継続されたのです。

主人公にパク・ヘイルssi、追う側の将軍にリュ・スンリョンssi、主人公の妹に「王女の男」で注目されたムン・チェウォンssiがキャスティングされています。
邦題は「神弓」で、原題は「最終兵器　弓」ですから、弓をどのように扱うかが見どころとなりますが、これには国内で初めてという高速カメラが導入され、飛ぶ弓を正確に捕らえることでリアリティを演出しています。
また、絶壁を跳び越えたり、虎に襲撃されるなど、今までの韓国映画やドラマとは一味違う斬新でスピーディーなアクションシーンが視聴者を惹きつけます。
2011年最高の動員を記録したというのは頷ける作品だと思います。


おまけ：1636年〜37年にかけて起こった清の侵略は、韓国では“丙子胡乱”と呼ばれています。この“胡”の字が北西部の異民族に対する蔑称として使用された文字で、朝鮮側では“女真族が引き起こした乱”として扱われています。

　なかなか面白いアクション映画でした。
　父親が殺される序盤は、どうにもテレビドラマっぽく見えてしまいます。なんだかＮＨＫの大河ドラマのようです。これはどうしたことかな、たぶんデジタル撮影のせいか、照明が良くないのか。バストアップ＆手元アップなどを多用した画面構成もテレビっぽく、これは劇場で観たらどうだったのだろうと思います。
　映画的でないので、つまらないなあと思って見ていると、物語は13年後に。パク・ヘイルの飄々としてでも芯の強い感じ、ムン・チェウォンの美しさなど役者はいい感じです。
　結婚式の当日、清に襲撃され拉致される人々。この映画が韓国で大ヒットしたのは、かの国の悲劇的な歴史が人々の胸を打ったのかもしれないと思います。つまり、常に近隣諸国の侵略にさらされながら、内部がまとまらずに強い国をつくれず、いつも庶民は艱難辛苦にあえいできた朝鮮半島の哀しみです。そんな弱い民族が、強大な帝国に対して一矢報いるという物語――そして主人公の迎える結末に、韓国の歴史観を感じることができます。
　ところがというべきでしょうか、襲撃以後のこの映画は、歴史ものといっよりはシンプルな追跡アクションになって、そこが面白いところなのです。メル・ギブソンの『アポカリプト』によく似ていて、ひたすら走り続けます。
　たとえば絶壁をジャンプしての渡河のシーン。追手も次々とジャンプしてきますが、対岸には別の敵がいて弓で威嚇するので主人公は動けないというシーンはアクションもよく練られています。結局主人公が隙を見て逃げるというシーンの終りがちょっと甘い感じがしますが、追手の将軍リュ・スンリョンとの因縁のできるシーンでもあり、なかなか魅力的な場面になっていると思います。
　主人公が清の王子を捕えてからの時間経過の表現の甘さや、トラの登場シーンなど時々疑問が残る演出もないではないですが、充分楽しめるアクションの秀作でした。65点。

逆輸入イケメン俳優大谷亮平が出てた。彼の演技は良かった。