火垂るの墓

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　弱った妹を連れ、駆け込んだ病院。
「何か薬を！」と頼み込む兄。

「滋養付ける事ですな」と素っ気無く診察を止める医師。
その扱いに兄は憤る。
「滋養なんか何処にあるんだ！」

　正直、私は冷たくも
「あなたが追い込んだ」と言いたくもなった。しかし、彼は子供。


　戦争で追い込まれ、頭を使い自分を守ろうとする大人。
　その中に見え隠れするエゴ。

　父の安否を気遣い
「連合艦隊は？」と尋ねる彼。

「あかんあかん、そんなもん、とうの昔に沈んでもうて」
心ない大人の笑いと返事。

　国の為に戦い、子供を守れなかった父。
　母を腐らせた日差し。
　皮肉な現実。
　無念。

「又か」「こっちの奴も、もうじき行ってまいおるで」
と子供をほうきで突付く駅員。

　戦争は人を変える。多くの爆弾を落とし、多くの悲しみを生み、多くの悪を生む。
そんな混沌の中で盗みを働き、浮かれる兄。
妹の為に必死で生き抜こうとする兄。
最後の言葉　「節子」

　彼を責める事はできない。

　安易な選択。不器用な生き方。
裕福な家庭で過保護に育った兄の身に、突然訪れた混乱。

　人が人の上に爆弾を落とす。
　大人が子供の上に爆弾を落とす。

　もう起こしてはならない戦争。
　悲しい戦いが、少しでも無くなるのなら
この映画を、国境を問わず見てほしい。

　子供は宝。

　最後に
死が間近な彼へ、おにぎりを置き去る女性に
人への希望を感じ救われる思いがした。

何度となくテレビで放映された作品ですが、戦争の悲惨さや当時の情景を描いたアニメとしては秀逸の出来だと思います。14才の清太と4才の節子のあまりにも哀しく、そして過酷な日々を描いた作品です。戦争によって両親を失いながらも兄妹だけで懸命に生きようとする姿は涙を誘います。妹の節子が病気によって息を引き取る時に、兄の清太に対して「にいちゃん、おおきに」と言った言葉が今でも胸の奥に深く残っています。戦争さえなかったら、いつまでも幸せな日々が続いていたであろうと思うと涙がとめどなく溢れてしまいます。戦争をテーマにした多くの映画を見るたびに、この兄妹のことをふと想い出してしまいます。それほど心に強く残る優れた作品です。

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初めて見たのは子供の頃、友達の家で。もちろん号泣しました。
この作品は、夏になるとよく地上波で放送されますよね。

ゆえに何度か見ましたが、もう冒頭の駅のシーンで涙腺全開モードに入ります。先にあるのは悲しい末路と分かっているので、「もう絶対見るもんか！」と『フランダースの犬』と同じく私には封印映画になりました。

しかし、私の子供がアニメと言う事もあって地上波放送を見たがり、しょうがないので数年前見てしまいました。

ずいぶん昔に見た時は、清太と節子が居候する家のおばはんが酷く意地悪に見え、「ババァめ〜〜！！」と怒りながら見てました。

ところが自分が大人になってから改めて見てみると、違った角度が見え始めました。

おばちゃんだって、自分の家族の事で必死なんだよね。
親を亡くして転がり込んできた幼い兄弟は確かに可哀想だけど、清太は１４歳。妹の世話とゴロゴロするだけで、おばちゃんのお手伝いは何もしない。

だからと言って放り出していいかどうかは別の話だけど、「どうせ帰って来るに違いない」とおばちゃんは思っていたのかもしれない。

自分が母親になってみて、いろんな目線から見る事ができました。

だからと言って封印映画には違いありませんが(；・∀・)

本年（2018年）4月5日、高畑勲さんは82歳の生涯を終えられました。
本作は、これまでも終戦記念日（8/15）の前後に放送されることがありましたが、今回の放送で13回目だそうです。
『火垂るの墓』の原作者は、野坂昭如さん。
野坂さんは、「アニメで飢えた子供の表情を描き得るものか」
「自分の舌っ足らずな説明にも関わらず、高畑監督や描き手が、その想像力で正しく補ってくれたのは驚きだった」
というような感想を述べられたそうです。
この物語は、辛くて悲しくて衝撃的で、繰り返し観るには、それなりの覚悟が要ります。
しかし、一度は観ておくべき映画だと思い、娘たちが理解できる年頃になったら見せるようにしていました。
娘たちの感想は聞かなくても、強い衝撃を受けたことは分かりました。
節子とサクマドロップがセットで記憶されたようで、サクマドロップの缶を見つけると、「節子ちゃんのドロップだ」と言っていました。
娘たちには、二度と観たくない（観るのに耐えられない）アニメになってしまったようです。
私は、テレビ放映で何度か観ていますが、ちょっとずつ感じ方が違ってきました。
若いときは、兄の清太や節子の立場で観ていたように思います。
しかし、年を重ねて人生経験を積んだ今では、特に意地悪なオバサンに対する見方が変わりました。
チクチクと嫌味たらしいことを言うオバサンでしたが、自分の家族のことで精一杯な上、手伝いもしない清太たちが、お荷物に思える日もあったのでしょう。
他人に優しく出来るのは、多少の余裕（金銭的にも心にも）が有ればこそ。
何が良くて何が悪かったなんて、後になって言うのは簡単です。
でも、一つ一つを言葉にすると陳腐になるので、もう止めます。
辛い映画ですが、一度は観ておく価値があると思います。
原作の小説も今年は挑戦してみようかと思っています。
*最後に　高畑監督のご冥福をお祈りします*

　中学生の頃、神戸市兵庫区で生まれ育った父が「これ読むか」と「火垂るの墓」の文庫本をくれた。主人公が少年で、自分が生まれ育っている神戸、西宮が舞台で、近くの夙川や満池谷貯水池なんて馴染みの地名も出てくるということで、過去の悲惨な話だけど身近な感覚で読んだものでした。TVでみる変なおっちゃん（野坂さん）がこんな体験をもとにした小説を書いてんねんなぁ〜、なんて感心したりね。（おもちゃのチャチャチャの歌詞やバーモント・カレーCMの歌詞もこのおっちゃんの作）

　十数年過ぎて、サラリーマンになっていた僕は今度はアニメーションで「となりのトトロ」や本作に出会った。小説のときと違って、スクリーンを前にして堪え切れずにむせび泣いてしまった。学生の僕の頭がこしらえた主人公を遥か超越するスタジオジブリの映像と、辰巳努さん（清太）と白石綾乃さん（節子）のご両人のお声の素晴らしさが大きく影響したと思う。阪神地域に生まれ育った人間は、映画などで演者が話す関西弁を聞くと背筋がサム〜くなることが多いものですけど、ご両人のイントネーションは西宮育ちの僕にもとても聞き安くて良かった。

　自宅でこの映像をDVDで鑑賞できる有難さを思う僕ですが、今、息子は4歳で節子と同い年。清太は初めて原作と出会った頃の僕と近い年齢。そんな現在、本作品を再鑑賞すると「悲惨、哀れ」だけでない何か、涙を流してオシマイにはできない諸々を考えさせられますね。「戦争は悲惨」だけではない、共同体や情報交換の問題や、大人と子供の間で気づかれにくい差異だとか。
　悲惨、戦争悪だけならもっと適した題材や、映画は多いですしね。「ワシは、神戸の駅や新開地、三宮でようさんの人が野垂れ死にしてるとこ見てきたからなぁ」と今75歳で健在の父は昔から本作を観ません。清太達と同様、昭和20年3月の第一次の神戸大空襲を兵庫区で被ってから、第二次空襲、終戦、戦後の外国人、ヤクザ、兵隊帰りが入り乱れての混乱期を現場で体験してきた父には、「清太と節子の死」という結末は山ほど見た地獄図の小さな切れ端を象徴したものに過ぎないのでしょう。
　父同様の年配の方もいらっしゃるでしょうし、僕のようにまず感傷に浸ってしまう人もいるでしょうから、お薦め度の点数は難しいですね。昔なら5なんですけど、今は☆4つかなぁ。僕はいつか息子にこの作品を見せるでしょうが、ただの感傷に落ちないように、彼が中学生になるまでは見せないつもりです。