恋人たちのパレード

舞台がサーカスというのが良いのです。
楽しいのに物哀しい、華やかだけどうら寂しい。
脚光を浴びるスター曲芸師や人気者の動物たちがいて、彼らの成功を支える裏方スタッフがいる。
共に旅をしながら生きて行く共同体。
彼らの人間模様やサーカスの表と裏を見ているだけでも興味深くて心躍った。

「ボスの女に横恋慕」はドラマの定石で、メロメロメロドラマを楽しんだけど、
私はあの団長がちょっと可哀想に思えた。奥さんのこと大好きなだけじゃん。
短気で感情のコントロールが効かないのは困ったチャンですが、奥さん逃げ出すほどの
極悪人じゃあなかろうて。
まぁ、最後のキレっぷりは尋常じゃなかったんで、結果的には納得の展開なんですが（苦笑）。

人も動物もうじゃうじゃ出てきて屋外シーンも多いのに、意外と作品世界は小さい。
このサーカス団が一つの社会で全ての出来事がこの中で起きるからだ。
主人公が語る人生は、そう考えるとひどく狭い小さな世界だ。
でも、とても幸福そうに見えた。

明治時代に来日したアメリカ人動物学者のモースは「日本には貧乏はあっても貧困はない」と言ったそうだが、
きっとその頃の日本人は、小さな共同体の中で助けあいと触れあいを持ちながら
自己を確立していたのだろうと思う。
誰かと自分を比べて羨むこともせず、自然な自己実現を果たしていたんじゃないだろうか。

貧しくとも幸福な生き方というのはあると思う。
この映画にもチラッとそんな世界観が見えて心地よかった。


余談。

クリストフ・ヴァルツが象に命令する時、最初は杖でブシブシ突いて残酷な感じだったんだけど、
自分が以前に動物園で見た象のショーでも似たようなことをやっていた。
象に乗ったお兄さんが観客の目の前を歩きながら
「触っても大丈夫ですよ〜。でも象さんがビックリしちゃうんで優しく触ってくださいね〜、優しくね〜、優しく〜」
と言いながら自分は持ってる杖で象さんの目の上をブシブシ突いてた。
象さんの額には穴が開いていてタラ〜リと血が流れてる。
なんだかイヤなものを見てしまったと、すっかり気落ちしてしまったのでした。

評価７７点(１００点満点)
思ったよりも面白い作品だった。
キーワードは「恐慌」「サーカス」「禁断の恋」で舞台は１９３１年のアメリカ、世界大恐慌のあった時、ポーランドからの移民の子であるジェイコブスは名門コーネル大学で獣医学を学び、
卒業を目前にして両親を失い、父親の借財で家を失い、大学も中退して鞄一つでさまよう。
たまたまもぐりこんだのが列車で移動するサーカスの一団、ショーに出ていた白馬の羊蹄炎を指摘したところから団長のオーガストの目に留まりサーカス団に雇われることになる。
オーガストの妻でショーの花形芸人マリーナとも顔なじみに。興業的にアップアップだったサーカス団を救ったのがロージーというゾウさん。何故かポーランド語を理解しジェイコブスの
意をくみとる。ゾウの背中にまたがる美女、たちまちサーカス人気は盛り上がる。
しかし団長のオーガスト、激しやすくいったん火がつくと止めようがない。猜疑心が強く嫉妬深い。ゾウを虐待したり平気で役に立たなくなった団員を列車からほり出したりもする。
マーリーは幼い頃オーガストに拾われてその後妻となったようだが、ある意味列車で移動するサーカスしか知らない世間知らず。
オーガストはその性格上、独占欲が強くマリーナを所有物のように扱う、そんなマリーナを虐げられていると感じたジェイコブスに同情と思慕の念が芽生えるのは当然の流れというもの。
オーガストの嫉妬心に火がつきついに二人は、、、、。よくあるパターンなんだがサーカスという特殊な世界、そして本当の主役ゾウのロージーが絡んでストーリーを面白くしている。
原題は「ゾウに水を」ではあるが本編では酒好きのゾウさんで実に微笑ましい。背景に大恐慌と禁酒法(アル・カポネの時代)があるのも重要なポイント。
このストーリーを老いたジェイコブスに語らせる手法にも好感が持てる。
略奪愛に成功した御仁、カップルにお薦め。

驚き！
吸血鬼役で世界の女性を虜にしたロバート・パティンソン
やっかみなのかなんなのか（笑）
これまで１ミリたりとも彼をカッコイイと思ったことはなく
むしろその逆だろうと、信じて疑いませんでした。
それがどうでしょう。
カッコイイじゃないですか。
男前じゃないですか。
どーしたんだ、オレの両の眼。
どーしたんだ、オレの両の脳。
そう心配になるほどすんなりと「カッコイイ」と受け入れやがった（笑）
あの吸血鬼役のビジュアルが苦手だったのかなんなのか・・・
ま、そんなことはいいとして
サーカスを舞台に
許されない恋を描いた物語。
回想で始まる展開と
許されない恋と
サーカスという
楽しくも儚さが裏側に隠れている設定で
こういうことなんだろうと準備していた「予想の結末」
その予想をサラリと裏切る結末。
そこにスパイス効かせるゾウの存在
そうきましたか・・・・
イイ意味で裏切られました。
ストーリーの中に「サーカスは錯覚」なんてセリフがありましたが
ホント、錯覚してました。

サーカス
イイですね。
言葉の響きからイイです。
楽しさを与えて去っていく
この「去っていく」というのがミソで
祭りの後感がたまらなく切なく儚い。
サーカス。
映画向きの題材ですね。
ドラマはたくさん転がっていそうです。
現にサブキャラたちのストーリーもちょっと気になりました。

久しぶりのリース
なんか痩せすぎてるなぁ・・・・

クリストフ・ヴァルツは適役ですね。
ウマイ。

評価がよさげなので借りました。

元サーカス団員のおじさんの回想として始まる物語。

回想シーンの中での主役は
サーカスの獣医を務める男。演じるのはロバートパディンソン。
それに
サーカス団の団長にクリストフヴァルツ。
その妻にリースウィザースプーン。

この三人の三角関係がほとんどですね・・・・

回想に入る前（だったか？）に
サーカスで大事故が起こると
早々に言ってるので
さて、ここで何が起こるんだろ？
と思いながら観てて、
まあまあ予想通りだったんですが、
予想外はその過程でした。

まさかの象がファインプレーするとはね！

サーカスという幻想的な舞台設定でありながら
悪いやつには罰が・・・というところ、
不倫の恋というところ
意外にもナマナマしいストーリーでした。

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大恐慌時代のアメリカ、旅回りのサーカス団、横暴な団長とその妻で一座のスターの美女、そこに闖入するインテリ・イケメンの若造。かなり凝った設定ですが、要は「女１男２の3角」という「定番中の定番」なメロドラマです。この「女１男2の３角」パターンはフィクション（小説、戯曲、映画）の世界で数え切れないほど多用されていますが、それには立派な理由があって、読者、観客の多数を占める女性にとって「女１」というのが「堪らん！」のでしょうね(笑)。演じる女優のほうも「堪らん！」らしく、パープルローズさんが指摘されてる通り主演のリース・ウィザースプーンはこのところ３作連続してこのパターンの作品に出演してますね（「幸せの始まりは」、本作、「Black & White」何れも2011~12年公開）。私の贔屓No.1オードリー・ヘプバーンには「麗しのサブリナ」（1954年、ビリー・ワイルダー監督）という名作があり、「明日に向かって撃て」（1969年）のキャサリン・ロス、「バンディッツ」（2001年）のケイト・ブランシェットなどこのパターンにハマった時に一層の輝きを発する女優もいるし、何より1人の魅力的な女性をめぐる2人の男の闘いのドラマはカネや権力を争う「力ずく」の闘いより余程面白いので、私も大好きです。
もう一つ本作の「売り」は「原題」にも登場するElephant（ゾウさん）ですが、これも昔からオハナシに適度の「間」を取り緊張を緩和する、言わば「閑話休題」として犬や猫などの「ペット」を登場させる手法が用いられていたのが、最近は「人間たちの」ドラマ（本題）がネタ切れ（閑話）するんで「休題」が「本題」のようになっちゃう、という傾向を逆手に取って、折角「サーカス」を舞台にしたんだから「大サービス」しちゃえ！ってことで「ゾウさん」なんでしょう。もしかしたら「ゾウさん」が先で「サーカス」が後だったのかも知れない(笑)。
私がガキの頃は日本にもたくさんサーカス団があって、近所の八幡神社のお祭りには境内に大きなテント張って興業打ったもんです。さすがにゾウやライオンはいなかったけど、曲芸のオネエサンの派手な衣装とスラリと伸びた脚にドキドキしたのを覚えてます。今のAKBの子よりも余程地味で露出度も低かったけど格段に妖しくてキレイだった（記憶がある）。いくらアメリカでもそれより30年も前の大恐慌時代に、あんなハダカ同然の舞台衣装が許されたんだろうか？なんてツマラン心配しましたが、クソ真面目な大学生ジェイコブ（ロバート・パティンソン）が初めて見たマーリーナ（リース）に一発で悩殺されちゃうのは理解出来る(笑)。己の野望と欲望に目が眩んでいるオーガスト団長（クリストフ・ヴァルツ）のマーリーナへの執着も分からんでも無い。「男2人」の間に徐々に高まっていく緊張感（と言うより、オーガストの心の中で渦巻く怒りと悲しみが混合して沸点に達して行く過程）の描写はクリストフの好演もあってなかなかドラマティックです。
しかしこのクライマックスが全てをブチ壊して作品全体を思い切り安っぽい「少女マンガ」（いや、最近の少女マンガはそんなに「安上がり」じゃないそうですけど）にしちゃいます。オーガスト団長はただのキレ親父でマーリーナを殺そうとするし、それを阻止するのはゾウさんのロージーで（もう「マンガ」そのもので大笑い）、なんとオーガストは都合よく死んじゃいます。ここで（観客は）すっかり忘れていた冒頭の爺さん（年老いた現在のジェイコブ）が再登場して「ジェイコブとマ−リーナは結婚して平和で幸福に暮らしましたとさ」ってハーレクインよりお手軽な「あとがき」くっつけてさらに「値を下げて」ます。
やはり「女1、男２の3角」がメロドラマとして「面白い」のは、「女１」が2人の男にとって「争う」価値があるほどの十分な魅力があって、2人の男も「女１」にとって「甲乙つけ難い」ほどに魅力的である場合なんですね。好みの問題かも知れないけど、私にはリース・ウィザースプーンに「女１」は無理があると思える。「男２プラス動物１（しかも特大）」でもやっぱりダメだなぁ(笑)。