ソラニン

学生時代からの音楽への夢を諦めきれず、半ばヒモのような生活を送る男と、そんな男を支えるため、「君の代わりなんかいくらでもいる」といわれるようなつまらないOL生活に耐える女。
もう一度夢を目指して一歩を踏み出そうとしたとたん、男は交通事故死してしまう。

音楽映画だと思って観始めたので、前半のウダウグダグダには閉口しました。
しかし、どう生きるべきか模索する若者のモラトリアムの苦悩と、大切な人を失ったあとの再生を描いた映画だと思えば、これはこれでいいのかなとも思いました。

薬局の前に置かれたカエルの人形の口に、郵便を投函しようとする老人のエピソードも、初めは全く無駄だと思って観ていましたが、一応はちゃんと回収されていて、それなりにいいエピソードだと思いました。

宮崎あおいの歌は、正直あまり上手いとは思えなかったけど、映画全体の流れからすると上手い必要はなかったし、自分できちんと歌っていたところに好感が持てました。
同じコミック原作で音楽映画の「BECK」と比べてしまうのですが、その点「BECK」はあんまりだったと思います。

宮崎あおいは、「この映画の現場は楽しくなかった」と言ってたらしいですが、それでもあんなにきらきらした表情ができるのはさすがです。

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アチコチのレビューに「宮崎あおいを使っているのに・・・勿体ない」的なことが書いてあるけど、この映画は「どれだけ原作を忠実に映像化できるか」が最大の問題であって、宮崎あおいなんて別にKeyではないんだよね。たまたま芽衣子が宮崎あおいになっただけで、彼女は彼女なりに頑張ってたんじゃないかな。今回においては、宮崎あおいを起用することに映画の価値を引き上げる要素があるのではなく、出演者も言っていたが「原作のイメージを崩さずに映画化する」ことが大命題で、役者のオリジナリティなんて大した価値はない。それだけこの原作の価値自体が高い。

そういう意味で言うと、上映前から話題になったように、絶妙のキャスティングだったと思う。まぁ確かに少しずつみんなが小綺麗なんだけど（笑）今回のキャスティングで一番のハズレこそ宮崎あおい。ガリガリ過ぎて気持ち悪いし、普通さに欠ける。でもまぁ許せる範囲。もっともっと華やかさを消して、普通の女の子の演技をして欲しかった。まぁ彼女にはムリだろう。


逆に加藤のサンボ近藤のはまり具合は素晴らしい。これもアチコチのレビューで見るけど、これは加藤＝サンボ近藤の映画の如く、全てのシーンにおいて、しっかりと『加藤』になっている。まるで、「原作が先かサンボ近藤が先か」と思えてしまう程だ。しっかりアイちゃんの尻に敷かれているところ、七三の気持ち悪さ具合、近藤自身の大学6年生の経験則から発せられるリアルさ。どこをとっても、加藤が近藤で近藤が加藤なんだよね。素晴らしい。
本人もインタビューで「役者人生、最高のハマリ役」と言うくらいで、最初の役でいきなりこれ以上ないハマリ役に出会ったんだな。もちろん、プロのミュージシャンとしての存在感や安心感もあって演技も含め素晴らしい出来。原作ファンの誰も加藤のキャスティングには文句がないだろう。


原作を読んでいない人には、単なる映像の綺麗な青春映画。大した事件もなく、普通に仲間が自殺して、残されたものが仲間を思い生きる。そんだけのつまらん映画だ。なぜなら、このストーリーは、浅野いにおの描く絵と間があるからこそ活きるのだ。あの本の中だからこそ、みんなが泣いて、みんなが何度も読み返し、心に刻む。

そして、原作を読んでからこの映画を見れば、少し物足りなさもあるだろうけど、「なんで映画化したんだ！」と一般的な「乖離にキレる原作ファン」はそうそういないなんじゃないかと思う。なぜなら、シーンのカメラのポジションとか、原作と並べていいシーンが多いし、キャステングが悪くない。そういう部分に救われて、原作ファンの不満をそんなに生まない内容でできていると思う。


勿論だが、原作をしっかり読んでから見ることをすすめる。
だからこそ泣けるシーンがいくつかある。繰り返してみたくなるシーンがいくつかある。
読むと読まないでは大違いだ。

この年になると、『やりたくない仕事』とか『やりがいのない仕事』とか、やりたいことだけやって生きていけるほど甘くないよとか、今の若いこの嫌う言葉を言っちゃいますね。

生きていくのって大変だし。

でも、若いって、夢を見る特権もあるし、その夢がかなわなくても、ある程度年を取った時の、時間とお金があるときの、生きがいになるよって思います。
これは年とらないとわかんない感情ですね（＾＾；；）

芽衣子は重い、重いよ。
種田君だって自分の限界がわかったんだからそれは受け止めてあげようよ、、と思いました。

最近注目の桐野健太くんがとてもいいです♪

メラニンの親戚

　素敵でやや悲しいラブストーリィ。ラストのギター演奏しながら歌うライヴシーンも含めて、あおいちゃんが文句なしに素敵だ。高良君も先行きが怪しくなり始めた青空のようなキャラをナチュラルに表現した。
　中盤より後の方で「あんた　いいやつだよ」というセリフは印象的だが、あおいちゃんが素敵なアニメキャラに見えて30代以降の女優人生にやや不安を感じた　笑


※レーティングは、A+,A,A-＞B+,B,B-＞C+,C,C- の9段階。