インサイド・マン

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　前評判でスパイク・リーも大人になったものだとかキャストが豪華でとか褒められていたので期待しましたが、そんなに退屈はしないものの、全般に中途半端な印象を残しました。
　緻密なようでいて、最初から警察の無能をあてにしている計画。強盗団の薄味で知性の低そうなキャラ。でも成功してしまう不思議。存在感は十分だけれど、いまひとつ意味のないジョディ・フォスター。いい場面のないウィレム・デフォー。敵味方間の友情の成立めいた、不可解なラスト。スタイリッシュで粋な犯罪映画を目指したのかもしれませんが・・・。

　でもいちばん気になったのは、やはり３９２の中身です（以下重大なネタバレ）。
　真の問題が重大な戦争犯罪にあるということは、子どもを含め人質をひどく脅迫し暴行し、一昼夜監禁するという凶悪犯一味、ことに首領のクライブ・オーウェンに義賊風味を与えてしまいます。金も狙いだけど本当の目的は告発にあるんだから、そんなに悪いヤツじゃないんじゃないか・・・と。
　また優秀なる弁護士にして交渉人となるジョディ・フォスターは金のためならなんでもする嫌な野郎、いや女史として登場しますが、彼女も依頼人の過去の罪を知り、あからさまな侮蔑の表情を浮かべることで、免罪符を手に入れてしまいます。本当は悪い人ではないのね、職務に忠実な人なのね・・・と。
　強盗団にやられっぱなしの刑事デンゼル・ワシントンも、本当の悪たる銀行会長を告発することで、なにかを成し遂げたようなつもりになっています。
　こうして言わば協力して真の悪を断罪した登場人物たちは、それぞれその働きの報酬も得るわけです。
　それでいいのかな？　
　主要な登場人物たちの数々の愚かな行為を免罪するために使われるゆえに、金庫の中身つまり戦争犯罪の証拠は、マクガフィン（ヒチコック＆トリュフォー『映画術』参照）ではないと思うのですが、普通の映画を目指したスパイク・リーがかえってその演出の荒っぽさと、そのマクガフィン感覚の欠如を露呈した結果になったのではないかと感じました。５５点。

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最近、どんどん株上げてるクライブ・オーウェン。味が渋く、深くなってきましたね〜デンゼル・ワシントン、妙に軽めなノリノリ悪戯小僧な感じの刑事役。ジョーディ・フォスターも、凄腕で、かなり自信過剰な弁護士役。それぞれが、自分の持ち役を嬉々として演じている様子が伝わってきました。S・リーらしいリズム感。まるで踊っているみたいな動き、早口台詞回し、そしてスピーディーな場面展開。もたもたしてたら置いてきぼりをくらいます。ジョークのノリ、皮肉満載なる政治ネタ。きっと、あの彼をモデルにしてる？な〜んて思わせぶりも。暗黙の事実・・・？でしょうね。
これまでの銀行強盗と交渉人とのお手本パーターンは一切あてはまりません。第一の仕掛け、犯人も人質も皆な同じ格好。第二は、かさばるキャッシュには見向きもしない。目的は、貸し金庫の中身。そして第三、ラストの大ドンデン返し。ほ〜〜なかなか粋な展開みせてくれるじゃア〜リマセンカ！！と感嘆とほくそえみで終了。
時間の流れに、尋問シーンを挿入させ、観客の頭をわざと混乱させる魂胆かいな？と、思いきや、これまた完全脱出のお手本見せ。
スパーク・リー再起を掛けた１本ながら、新星ラッセル・ウィルスの脚本勝ち。さらなる期待で次回作スリラーが待ち遠しいかな。
突込み所はいっぱいなれど、一見の価値、大いにありでしょう。

　ラヴァ様、拙サイトにお越し下さり、ありがとうございます。
うわ、危ない危ない、写真を公開したままだったことを忘れていたので、早速わたしのアルバムだけ非公開にしておきました。ラヴァ様には顔を知られてしまったので、もう悪いことはできませんね。東京出張のおりには映画館をウロウロしているのですが、もし見かけたらお声をかけてくださいませ。

　さて、本作についてですが、これは久々にヒット！という感じの知的犯罪もの。よふかしさんが「存在感は十分だけれど、いまひとつ意味のないジョディ・フォスター」と、まさに言い得て妙な批評をされていますが、その「無意味な」弁護士役がよかったですね。よふかしさんのレビューはかなり厳しいのですが、確かに不審な点や詰めの甘さなど感じつつ、わたしはそういうのは気になりませんでした。

　そして、よふかしさんが「マクガフィン感覚の欠如」とおっしゃる、「非情に重要ななにか」を指し示す、貸金庫の中身についてですが、これが確かに弱いのです。犯罪の動機付けとしては腑に落ちない点が多々あります。しかし、これはあえてスパイク・リーが観客に不審な視線を浴びせられることを覚悟で放置したのだとわたしは解釈しています。納得できない不審点が残るほうが、作品鑑賞の上では余韻が残っていいのではないでしょうか。ジャック・ラカン→ヒチコック→スラヴォイ・ジジェク→内田樹、をつなぐ「空位の呪縛」「抑圧されたものの代理表象」に思い至りますね。などと書き始めると映画から離れてしまうので、これ以上展開しません。

　※参考文献
　　　　内田樹著『映画の構造分析』
　　　　スラヴォイ・ジジェク著『汝の症候を楽しめ』

　ちなみに、よふかしさんのレビューもいつも参考にさせていただいております。この場をお借りしてお礼申し上げます。

　
　では、本作の感想については拙サイトより以下にてきとーに切り貼りします。
　

　デンゼル・ワシントン、相変らずかっこいい！　デンゼル、今回は何度も剃髪の頭を撫で回し、また麦藁帽を被ったりと、後頭部で演技してました。後頭部の演技で観客の目を惹きつけることの出来る人はたぶん、今回のデンゼルと「レオン」のゲイリー・オールドマンぐらいだね。

　ジョディ・フォスターがうまいね、野心の塊のような弁護士をジョディは実に生き生きと演じている。こういう「悪女」役のほうが似合うんじゃないの？

　スパイク・リーらしい味付けは、エンタメ作品のなかでもきっちり効いている。人種差別ネタのジョークで笑わせるブラックユーモアは健在、人種のるつぼニューヨークらしい逸話を挟むことも忘れない。アラブ人を見たらテロリストと思えの世界はここにもはびこっている。実はシーク教徒だったりするのにね。

　スパイク・リーは差別する側もされる側も等しく突き放して風刺する。たいへん印象に残った科白がいくつかあるが、それはここには書かないでおこう。ぜひ実際に映画をご覧になってニヤリと笑ってほしい。

　オタエさんがおっしゃるように、とにかく脚本がうまい、この作品は。書いたのはラッセル・ジェウィルス、初脚本だということだが、とてもデビュー作とは思えない面白さだ。優れた映画は細部にこだわる。その点、皮肉とユーモアがちりばめられた台詞の数々には満足させてもらいました。

　そして、犯行が着々と進む場面に未来時制の取調べ場面を挿入するというフラッシュ・フォワード的手法を取り入れたところも憎い演出だ。大胆にも観客にネタをばらしているのだからね。

　暴力シーンも派手なアクションもないクライム・ムービーに退屈してしまう人もいるかもしれない。それがヒットしない原因だろうか？　ま、大人向けのエンタメ作なんでしょう。

　結局のところ、この映画には「善人」は登場しなかったことが興味をそそる。誰も彼もが野心家で金の亡者でアグレッシブな人々ばかり。いかにも生き馬の目を抜く東部に生きるビジネス（ウー）マンらしい。いちばん良心的だったのは実は犯罪者ダルトン・ラッセルだったりして？

久々のヒットですね。これ。
面白いっす。

結局、ほとんどが銀行強盗のシーンではあるんだけど
その部分と脱出してからのバランスが絶妙です。
銀行強盗シーンではちょっと長い気もしたんだけど
終わってみれば必要な長さだと納得。

結局、犯人達が何者かはちゃんと描かれてませんが
そういうことも忘れちゃうぐらいの面白さってことです。

ただ、ジョディ・フォスターだけは役違いって感じでしたが。
クレジットにはデンゼル・ワシントンが真っ先にくるのでしょうが、クライブ・オーウェンでしょね、やっぱり。この作品は。

最近、クライブ・オーウェンいいっすねーーーーー

と半信半疑で見ましたが、一筋縄ではいかないなかなか魅せてくれる映画でした。人種問題を盛り込んでいるのも、リー監督ならでは。
masamuneさんがおっしゃっているように、特にデンゼル・ワシントンがいっぱいしゃべっているのに、字幕が追いついていないので、たぶん私にはよくわかっていないところがたくさんあると思いますが。野球ファンではないので、エンドロールでも笑えませんでした・・・。
ジョディ・フォスターは「フライトプラン」の肝っ玉かあさんより、こっちのお高くとまった女のほうがずっとよかったです。ジョディが持ってたバッグ、欲しいなあ。

余談。
この映画、吟遊旅人さんと私がよくニアミスしている映画館でみましたが、後半画面がぶれてものすごく見にくかったのです。文句をいったのに、「すみません、映写機の調子が悪くて・・・」ですまされてしまいました。払い戻しも、ただ券もなし！