フレンチ・コネクション２

　（少しネタバレ・・・かな？ラストについてのやや詳細な記述あり）　


　前作が実話を元に「ホンモノらしさ」で勝負していたのに比べると、こっちは徹底したエンターテインメント作品となっている。いい意味でとてもフィクションらしいのですね。舞台もフランスのマルセイユに移り、宿敵シャルニエの懐深くに入っていくドイル（ジーン・ハックマン）だが、登場シーンからいきなりタクシーの運ちゃんに小銭をふんだくられ、アウェイ感たっぷり。地元警察の担当刑事もアメリカから単身乗り込んできた無鉄砲な異邦人に冷淡で、次第に孤独感を深めていくドイル。フランス人の容疑者相手では得意の脅し文句、「ポーキプシーにいただろ？」も全く通用しない。ちなみにこれ前作で使われていたセリフで、ドイルのモデルとなった実在の刑事エディ・イーガンが実際に使ってた手なんですと。遠くの街で起こった凶悪事件の犯人としてお前の名前が上がってるゾ、という脅しで、訳の分からない質問攻めについ、いやいや俺はこの街でヤクをさばいてたさってゲロっちゃうという仕掛け。重罪でしかも冤罪で挙げられるくらいならドラッグの方で裁かれた方がマシということらしい。１のコメンタリーで初めてこの意味が分かったのだけど、本編内では説明が一切ないんですよね（苦笑）。

　ちょっと横道に逸れましたが、そんな具合にポパイの異名をとる熱血漢ドイルが、オレ流でガンガン突っ走って他を圧する実力を見せつけてた前作とは打って変わって、こちら続編の前半部では、勝手が違う場所で空回りしている彼の姿をしばらく見続けることになる。フランケンハイマーは「フリードキンと同じく自分もドイルを好人物には描かなかった」と言っているけど、こっちの作品の方が圧倒的にドイルに感情移入しやすい。異国に放り込まれ窮地に陥った主人公が、奇跡の復活を成し遂げて復讐を果たすという「下降と上昇」の構造によって、観客の心は加速度的にドイルという男に惹きつけられてしまうのだ。しかも、シャルニエ一味に捉えられ麻薬漬けにされたドイルが禁断症状と闘う中盤はかなり丁寧に尺をとって描かれており、説得力がある。あの屈強な男がこんな弱い姿を晒すかと胸が震えるようなシーンがいくつもある。まぁなにしろジーン・ハックマンが上手いので１秒たりとも飽きさせない。短いカットで繋ぐ最近の映画にはウンザリしている自分としては、こういう風にじっくりと役者の演技を見せてくれる粘り強いカット割りの作品には、「イェイ！」っと拍手したくなりますよ（笑）。ジャズのライブで各プレイヤーのアドリブソロの終わりに拍手する感じで、素晴らしいシークエンスの終わりには心の中でパチパチパチ。

　続編らしく火薬の量も増え（苦笑）、スペクタクルを加えたドンパチシーンもまずまずの見応えですが、特筆すべきはやっぱりラストでしょう。三人称視点のカメラと主観カメラ映像の交差で、観客はほとんどドイルと一体化して彼の息遣いを自分のものとしてしまう（音響がそういう効果を出している）。ゴール間近のマラソン選手のように最後の力をふりしぼり、獲物に迫るドイル。ものすごく身体感覚に訴えかけてくる画（え）作りになっていて、たぶんあの衝撃のエンディングで心拍数マックスになってんじゃないか（笑）。その後、仲間と落ちあい軽口たたいて和むなんてクールダウンのエンディングを持ってこなかったところは、流石フランケンハイマーですな。みんなこの衝撃で心臓麻痺おこしやがれぐらいの心持ちだったんじゃね？あのオヤジ（勝手に言ってます）。

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これは凄く面白い映画です。だいたい私が「ほとんど女優が出てこない」映画を褒めるなんてことは普通なら先ずあり得ないハナシなので、いかにこの映画が凄いかが分かります、と言ってもやっぱり分からないか（笑）。
元々今頃になってこんな古い映画（1975年製作）を観る気になったのは、偶々他の方のレビューを流し読みしていてこの映画の監督がジョン・フランケンハイマーで、「１」のウィリアム・フリードキン（「エクソシスト」の監督ですね）とは違う、ということを知ったからです。「１」が大変面白かった（1972年のアカデミー作品賞、監督賞、主演男優賞を獲りました）ので当然「２」も観たと思い込んでいたんですが何と初見でした。既に「１」の記憶も完全に曖昧なんですが、とにかくポパイ刑事の特異なキャラ、と言うよりジーン・ハックマンという男優の「これぞアメリカ男！」って感じがすごく良かったことと、オハナシの「運び方」が実に上手い映画という印象は持ちましたが、アカデミー賞総ナメにするほどの映画か？と思ったことも覚えています。それでてっきり「２」も「１」の「柳の下のドジョウ狙い」と思って観なかったのかもしれません。私はあの年（75年）社会人になったばかりでしたし、結婚もしちゃったので、忙しくて映画観るヒマが無かったということもあります。
で、今回の「２」の鑑賞でとにかく感じたことはフランケンハイマー監督の「したたかさ」でしたね。「続編が本編を凌ぐ」稀有な例、とどなたかも書いておられましたが、本編でオハナシの設定の面白さと主人公ポパイ刑事のキャラの立ち具合は既に100％「完成」の域に達している。それなら続編はツマラン小細工や付け足しをせずに、徹底的に本編の設定と人物のキャラを「利用」し、「深化」させてやれ、と「居直った」のだろうと思えます。はっきり言えばこの「２」は２つの場面だけで出来ていると言ってもいい。ポパイ刑事がマルセイユの麻薬王シャルニエの捕虜になり監禁されて麻薬中毒にされる前半と、ラストのシャルニエを執拗に追いかけてとにかく走る場面の２つだけ。どちらも極端にセリフは少なく、表情での演技すらほとんど無い。ただそこに苛酷な状況に直面した、或いは復讐の執念に燃える、ポパイ刑事、いやジーン・ハックマンが放つ強烈な個性の匂いが立ち込める、という演出に徹して作ってるように私には思えました。
そして、何と言ってもあのラストショットのカタルシスと余韻を断ち切るようなエンドクレジットの文字まで計算し尽くされた演出の「したたかさ」には、私久々に「映画の興奮」にシビレましたねぇ。これはもう、もう一度「１」を観直して、アカデミー賞獲ったフリードキン監督の演出と比較してみないワケにいかなくなりました。

続編であって、続編と言うには失礼に当たる独立した秀作。
話もシッカリしていますし、映像の美しさは、時代を超えた魅力を感じました。特に、室内外同時に映るシーンはナカナカのもの。

ジーンハックマンって昔からジーンハックマンですよね。
あのはにかんだ笑い、ハッハッハって声を出しての笑いかた。男の色気を感じさせてくれます。それに比べて、トミーリージョーンズはいいように変わってきてトミーリージョーンズになったって感じ、まあ、両雄が出ている「ザ・パッケージ」を観たばかりなので書いてみました。

バーでの人恋しがるハックマンのシーン（ハックマンっぽ〜い）とか
マルセイユをぶらついたり（マルセーユの雰囲気が良く出てます。行ったことないけど。）、
ハックマンの麻薬の治療（アメカ人の医者を呼べとか叫ぶのはいかにもアメリカさん）とかの
シーンは長いのですけど、大変良いです。この監督さん、とっても力量がありますね。

これは、アメリカのタフガイがフランスマルセーユで異邦人としての孤独のなか犯人を追い詰めていくという、アメリカとフランスの文化の違いがシッカリベースに有る素晴しい作品です。

舞台も監督も代わるとこうも違ったものになるのか。決してつまらなくはないが、あの1作目のテイストは全く無くなった。相棒のロイシェイダーも出ていないのが寂しい。製作時のニュースでは舞台がフランスなのでアランドロンもしくはジャンポールベルモンドが出る等噂が立ったが全くのデマだったようだ。1作目の監督フリードキンが本作をボロクソにけなしていたのを思い出す。(エクソシスト２もボロクソだった。)　ラストを見ると1作目と同じくシャルニエを微妙な終わらせ方にしていたのでPART3を意識しているのかと思ったが、興業的にまずかったのか本作で打ち止めとなってしまった。監督のジョンフランケンハイマーは60年代に突出した作品はないがアベレージをクリアした秀作を連打していた。「終身犯」「大列車作戦」「影なき狙撃者」「グランプリ」「フィクサー」どれもハズレがなかった。その中でもテレビでもビデオでも観たことのない「５月の７日間」「セコンド」「さすらいの大空」のソフト化を切に望む。

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映画監督にならなかったら、レーサーになりたかったフランケンハイマー監督。
ここではカーチェイスを封印した。

フリードキンを超えるシーンが撮れないからだと言うが
同様の事をやっても無意味だからだろう。
（後年「RONIN」で超える事を見事やってのけている）

前作のスタイルを踏襲したのはドキュメンタリー・タッチ。
しょせん作り事だと、観客に一瞬でも冷めた目で観られたらそこで終わりだ
というフランケンハイマー監督は、ひたすらリアル描写に徹した。

この手の映画に没頭してしまう私は更にジーン・ハックマンの迫真演技により
入り込んで観てしまう為か（疲れ気味の為か）ヘロインのくだりでは胸やけさえしてくる。
（実際、ハックマンは全編通して素晴らしい演技をみせてくれる）

「観客を映画の世界に引き込み全てを信じさせられたなら
　私は監督として責任を果たした事になる」とは監督談。

続編というより完結編。かっこいい幕切れだった。

コメンタリーによって諸々明かされるが
フランスに永く住んだ監督が地の利（主に人脈、人望）を活かしきった作品と言える。