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トウキョウソナタ / 小泉今日子

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「トウキョウソナタ」 の解説・あらすじ・ストーリー

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解説・ストーリー

鬼才・黒沢清監督が、香川照之や小泉今日子ほか共演で手掛けた家族ドラマ。リストラされた父、ドーナツを作っても食べてもらえない母、米軍に入隊する兄、こっそりピアノを習う弟。ちぐはぐな4人家族が、紆余曲折を経て一筋の光明を見出すまでを紡ぐ。

「トウキョウソナタ」 の作品情報

作品情報

製作年:

2008年

製作国:

日本/オランダ/香港

「トウキョウソナタ」 のキャスト・出演者/監督・スタッフ

キャスト・スタッフ

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怪談新耳袋−近づく編−

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FASHION STORY〜MODEL〜

ユーザーレビュー:64件

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6〜 10件 / 全64件

ひとは何処かでやりなおしたい、そのときは、どうするか。 ネタバレ

投稿日:2009/09/02 レビュアー:tomio

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

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吐息をついた、思わず。
「この映画をありがとう」
紹介していただいた方々にテレパシーを送っている。


今、
アカルイミライ 
を想起しつつカタカナでタイトルを打ちました。

【トウキョウソナタ】 

何か特別な思いが私を掻き立てているのです。
それまでは見えなかった心の一角が
静かに炎をゆらめかせているのです。


わたしは両手を差し出している
その虚空を見詰める
急に息が苦しくなる
忘れていた、ここが身動きの取れない場所であることさえも
ひっぱって‥わたしをひっぱって…


僕はただ、音を奏でていたかった
規則正しく並ぶ鍵盤のうえで、正しいリズムで、テンポよく‥
そうすれば辺りは静かになった
耳を塞ぎたくなるものが、なくなる場所へ僕は行きたい


この世に生まれてきた自分が、日本国民として人類として、
俺に何が出来か、それに気づいた
平和とか国家とか自由とか国境とか広い意味で。
俺は俺の居場所を見つけた 家族がみるみる遠ざかる‥


できることなら、帰り道を忘れたい。
すべてを失えないことが解っているから、
俺には沈むことさえ許されない。
本当は何処までも逃げたかった、俺が俺すら知らない場所で
やりなおしたい‥やりなおしたい、やりなおしたい…


そして 絶望の男は 暗い海の底へ 人と人との空隙へ消えた。


彼らは、不安を抱える人間でした。
それは私とて、おそらく生きている限り誰もが同じなのでしょう。
あるとき何か些細なきっかけがあって、それで何か大きな(と思っている)遺失をする。ある者はうろたえ、ある者は自殺さえ仄めかす。ぽつねんとした孤独感や、すっからかんの無銭の境地より、寧ろそうでないからこその絶望があるとして、彼らはそういう中でもがいてゆく人間だから、先の見えない水の中を懸命に進みます。その間の受難を乗り越え、そして最終的には泳ぐことを止めない自身を愛したいと思って。本当は大声で泣き喚きたい。それも一緒。本当は人生から逃げ出したい。そんな時も必ずくる。

心が裂けそうになって いつも
そのときになって自分の声がやっと はっきりと聞こえる

人は、私は、あなたは、いつか何処かでやりなおしたくなる
そのときはどうするか たぶんその準備をしなければいけない


無駄に長くなりましたが、 
心より、本作品を推薦します。

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夜明けの小泉今日子のシーンがすばらしい。 ネタバレ

投稿日:2009/07/02 レビュアー:ロキュータス

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黒沢清監督は、食わずギライでずっと敬遠してきた監督です。
観るのは「スウィート・ホーム」を当時劇場で見て以来。

一つはホラーが苦手というのが大きいけれど、彼のことを書いた映画評論などを読んで先入観ができてしまった。
映像感覚が斬新でヨーロッパなどで評価が高いということは、逆に言うと独特すぎて、リテラシー(読解力)が観る側にも要求されるということですから。 

今回は香川照之作品ということで見ました。
相変わらず彼はいい。

JUCEさんのレビューに書かれてあるのは、トウキョウというのは、映画における「上海」「巴里」が実在の土地と違うように、一種の表現上の虚構、記号だということですね ?
無機的で、空虚さの漂う街「トウキョウ」のある家族の話。

でも虚構の設定の話と言いつつ、リアルに感じさせるところがヤッカイだなあ。
清掃員の仕事、現実には、更衣室はないにしたって人目につかない場所ぐらい雇うほうは用意するでしょう、店のイメージもあるのだから。
でも存在するのに認められない”透明人間”になってしまった、父親の立場をはっきりと示していて、それがリアルに感じられるのが現代のコワサなんでしょうね。

「接吻」のブランコの少女でも思いましたが、「トウキョウソナタ」の役所広司が演じた男は実在するのでしょうか ?  
小泉今日子演じた母親の、孤独が生み出した妄想の産物に見えてしかたがない。

あの夜明けの小泉今日子のシーンがすばらしい。   
日は昇るのに、表情に明るさはなく、どこにも逃げ場はなくて家に帰るしかない、諦念に佇む中年女が、さびしくも美しい。

最後のシーンで、次男がピアノを弾くシーン。
井川遥が心配になって見に来ているが、それでも親たちとその思いを共有しようとしない。
気持ちを伝えない。

演奏が終わって、一家はその場を去りますが、残った人たちは感動もなくただ傍観しています。
この無機的な感じ。    気持ちが伝わらない。


イントロで紹介されているように、この映画が一筋の光明を描いているとはちょっと思えない。
孤独さが胸を打つ映画でした。

「ロスト・イン・トランスレーション」もそうでしたし、「転々」もそうでした。
トウキョウが空虚で孤独な街という記号になってしまっているのを、東京で暮らしておられる人たちはどう思われるのでしょうか。





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惨劇のあとの ネタバレ

投稿日:2009/04/26 レビュアー:べっち

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  怪獣映画で言うならゴジラが倒されたあと、怪談ならば幽霊屋敷が崩壊したあとが舞台となっている、そんな映画じゃないだろうか。

(ネタバレ・・・・もしてます。ッてか、観てないとわからないかも(^_^;)。すんません)

  冒頭、男がリストラを言い渡される会社の外は大嵐が吹き荒れている。ブラインドで隠されてはいるが、窓の外の様子はまるで怪物が暴れているか、あるいはモンスターの胎内のようにも見える。
(まったくの余談ですが、タニタって実名出してるところがすごいね、自信があるんだね>タニタ)
  が、解雇された男が両手に紙袋でとぼとぼと屋外を行くシーンでは嵐の気配は微塵もしない。晴れてこそいないが、たいした水溜りも見られない。

  たしかに突然の解雇、そして先の見えない人生は恐怖ではあるのだが、しかし彼にとって本当の恐怖はそれまでの人生だったのではないだろうか。

  小暴君である彼は、家庭の食卓でも君臨し支配しようとする。その姿は観客からすれば滑稽でもありまた醜くもあるのだが、そしてその実リストラされてしまってはそこにしがみつくしかないという哀しささえ漂うのだが、まだその時点では家族にとっては厄介な存在にしか過ぎない。

  屁理屈で米軍への入隊を決めちゃった長男は、でもたとえそれが他人の受け売りであったにせよ、父親の「ダメだからダメ」に比べればはるかに説得力を持つ。
  何しろ「出て行け!」と親父は怒鳴るわけだがそもそも息子は出てくからって言ってるわけだし(^_^;)。
  挙句に「ウチを出てくのはいい、だがアメリカはやめろ」とは・・・・ こうして書くとよくある話にしか思えないが、そんなエピソードをこのシーンに凝縮することでシュールに突き抜けた場面となる。

  そう、この長男、早い段階からごく普通に微笑んでいるのが印象的だった。


  壊れていくのは父親ばかりではない。次男のクラスでは、彼の一言が原因で担任の権威が失墜する。
  だがその権威ももとから壊れていたとみるのが妥当だろう。それがいつ露呈するかというだけの話で。

  妻もそうだ。母親であり妻であり、その役回りをきちんとこなしてきてはいるがとうに壊れていた彼女。「ひっぱりあげて・・・」と手を伸ばすがその先にはもちろん誰もいない。


  ・・・・とてつもなく疲れる映画だ。映画館で二度観たときには感じなかった疲労を今回強く覚えた。とんでもなく緊張する・・・・
  ただ、そのいろいろなニュアンスでの “いやな緊張” も中盤まで。決して一般的な意味で明るくなるわけではないのだが、なにか滞っていた血の巡りが流れ始めるようだ。


  薬でなんとか痛みをごまかしているときよりも、病巣を切除したあとのほうがつらいものだ。
  だから本当は既に希望を手に入れているのに、そのことにはなかなか気がつかない。

  本作は再生の物語のようにも評価される。まあ、たしかに。
  ただイメージされるような、ゼロからのやり直しだとか、リセットだとかではない。あくまでもそれまでの自分を背負っているのだ。やってしまったことはやっぱり取り返しはつかないのだ。
  だからたとえ一度死んで、再生したとしても、やっぱり自分は自分、だから息子に「お父さん、変な格好」と言われてそれを受け容れるところからはじめる。


  そしてラスト。次男の弾くドビュッシー。会場にはその音に惹かれるように大勢が集まって。
  ・・・・演奏が終わり、息子と立ち去る父と母。そしてそれを見送るだけの顔、顔、顔・・・・
  そうだ、この家族は、少なくともこの家族だけは抜け出した。

  だがどうだ、見ていた人々は。
  ただそこに取り遺されて。

  やっぱりアチキは恐怖を覚える。




PS 「役所広司は天使だ」とか「役所と小泉は肉体関係を持ったのか」とか、最後の長男からの手紙が笑える、とか、いろいろと書きたいことには枚挙の暇がないのですが、いよいよとりとめがなくなるのでまずはこの辺で。

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いつの間にか引き込まれていました

投稿日:2010/10/30 レビュアー:ぴぐぽぐ

テレビでやってたのを、何気なく観ていたら、すっかりいつの間にか引き込まれて見てしまっていました。
何も予備知識なしだったので、一体この先どうなるのか?何も分からず観進めて、ああ、これはリストラによって家族が崩壊していく話なのかな・・・
家族がバラバラになっていって、みんながそれぞれ問題を抱えていて、なんだかこれはどうしようもなく救いのない話になっていくのでは、と案じました。

ラストで、これが希望となるのかな?
ここから、なんとか家族が再生していくのかな?

途中で参加してきた娘も息子もついつい最後まで観ていました。

見ごたえのある映画でした。

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37pts. 【監督】黒沢清 ネタバレ

投稿日:2010/05/19 レビュアー:ヴィル

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カンヌっぽいといえば、そうだけど・・・

ま、ああそうですか・・・
という感想だけだった。

一見、幸せそうな家庭で、
4人ともが、何かしらの問題を抱えている。
リストラされた父、
母の役目を演じるような不満を持った生活を送る母、
目標の見えない自分の人生に迷っている兄、
そして、ピアノを習いたいが言えない小学生の弟。

この家族を中心に、日常から逸脱した日常を描く物語。

えっと、ま、
現代の日本を象徴してるといわれたら、そうだけど、
だから?
という感じ。

こういう描き方、ま、簡単とは言わないけど、
なんていうかな、、、別に、映画で見なくても、
もう、十分、いろんなドラマで見てきた
ありきたりの寄せ集めみたいなテーマな感じ。

細かいところかもしれないけど、
米軍の傭兵部隊って、なんか、そんないい加減に入れるの?
とか、
小学生が、あんな一般の拘置所に入れられるの?
とか、
いきなり、天才ピアニストってのも、なんか、いきなりだし・・・

日本を象徴的に描こうという、
ある意味、文学的な作品を描こうというにしては、
緻密さに欠ける描き方に感じる映画だった。

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6〜 10件 / 全64件

トウキョウソナタ

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ひとは何処かでやりなおしたい、そのときは、どうするか。

投稿日

2009/09/02

レビュアー

tomio

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吐息をついた、思わず。
「この映画をありがとう」
紹介していただいた方々にテレパシーを送っている。


今、
アカルイミライ 
を想起しつつカタカナでタイトルを打ちました。

【トウキョウソナタ】 

何か特別な思いが私を掻き立てているのです。
それまでは見えなかった心の一角が
静かに炎をゆらめかせているのです。


わたしは両手を差し出している
その虚空を見詰める
急に息が苦しくなる
忘れていた、ここが身動きの取れない場所であることさえも
ひっぱって‥わたしをひっぱって…


僕はただ、音を奏でていたかった
規則正しく並ぶ鍵盤のうえで、正しいリズムで、テンポよく‥
そうすれば辺りは静かになった
耳を塞ぎたくなるものが、なくなる場所へ僕は行きたい


この世に生まれてきた自分が、日本国民として人類として、
俺に何が出来か、それに気づいた
平和とか国家とか自由とか国境とか広い意味で。
俺は俺の居場所を見つけた 家族がみるみる遠ざかる‥


できることなら、帰り道を忘れたい。
すべてを失えないことが解っているから、
俺には沈むことさえ許されない。
本当は何処までも逃げたかった、俺が俺すら知らない場所で
やりなおしたい‥やりなおしたい、やりなおしたい…


そして 絶望の男は 暗い海の底へ 人と人との空隙へ消えた。


彼らは、不安を抱える人間でした。
それは私とて、おそらく生きている限り誰もが同じなのでしょう。
あるとき何か些細なきっかけがあって、それで何か大きな(と思っている)遺失をする。ある者はうろたえ、ある者は自殺さえ仄めかす。ぽつねんとした孤独感や、すっからかんの無銭の境地より、寧ろそうでないからこその絶望があるとして、彼らはそういう中でもがいてゆく人間だから、先の見えない水の中を懸命に進みます。その間の受難を乗り越え、そして最終的には泳ぐことを止めない自身を愛したいと思って。本当は大声で泣き喚きたい。それも一緒。本当は人生から逃げ出したい。そんな時も必ずくる。

心が裂けそうになって いつも
そのときになって自分の声がやっと はっきりと聞こえる

人は、私は、あなたは、いつか何処かでやりなおしたくなる
そのときはどうするか たぶんその準備をしなければいけない


無駄に長くなりましたが、 
心より、本作品を推薦します。

夜明けの小泉今日子のシーンがすばらしい。

投稿日

2009/07/02

レビュアー

ロキュータス

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

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黒沢清監督は、食わずギライでずっと敬遠してきた監督です。
観るのは「スウィート・ホーム」を当時劇場で見て以来。

一つはホラーが苦手というのが大きいけれど、彼のことを書いた映画評論などを読んで先入観ができてしまった。
映像感覚が斬新でヨーロッパなどで評価が高いということは、逆に言うと独特すぎて、リテラシー(読解力)が観る側にも要求されるということですから。 

今回は香川照之作品ということで見ました。
相変わらず彼はいい。

JUCEさんのレビューに書かれてあるのは、トウキョウというのは、映画における「上海」「巴里」が実在の土地と違うように、一種の表現上の虚構、記号だということですね ?
無機的で、空虚さの漂う街「トウキョウ」のある家族の話。

でも虚構の設定の話と言いつつ、リアルに感じさせるところがヤッカイだなあ。
清掃員の仕事、現実には、更衣室はないにしたって人目につかない場所ぐらい雇うほうは用意するでしょう、店のイメージもあるのだから。
でも存在するのに認められない”透明人間”になってしまった、父親の立場をはっきりと示していて、それがリアルに感じられるのが現代のコワサなんでしょうね。

「接吻」のブランコの少女でも思いましたが、「トウキョウソナタ」の役所広司が演じた男は実在するのでしょうか ?  
小泉今日子演じた母親の、孤独が生み出した妄想の産物に見えてしかたがない。

あの夜明けの小泉今日子のシーンがすばらしい。   
日は昇るのに、表情に明るさはなく、どこにも逃げ場はなくて家に帰るしかない、諦念に佇む中年女が、さびしくも美しい。

最後のシーンで、次男がピアノを弾くシーン。
井川遥が心配になって見に来ているが、それでも親たちとその思いを共有しようとしない。
気持ちを伝えない。

演奏が終わって、一家はその場を去りますが、残った人たちは感動もなくただ傍観しています。
この無機的な感じ。    気持ちが伝わらない。


イントロで紹介されているように、この映画が一筋の光明を描いているとはちょっと思えない。
孤独さが胸を打つ映画でした。

「ロスト・イン・トランスレーション」もそうでしたし、「転々」もそうでした。
トウキョウが空虚で孤独な街という記号になってしまっているのを、東京で暮らしておられる人たちはどう思われるのでしょうか。





惨劇のあとの

投稿日

2009/04/26

レビュアー

べっち

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  怪獣映画で言うならゴジラが倒されたあと、怪談ならば幽霊屋敷が崩壊したあとが舞台となっている、そんな映画じゃないだろうか。

(ネタバレ・・・・もしてます。ッてか、観てないとわからないかも(^_^;)。すんません)

  冒頭、男がリストラを言い渡される会社の外は大嵐が吹き荒れている。ブラインドで隠されてはいるが、窓の外の様子はまるで怪物が暴れているか、あるいはモンスターの胎内のようにも見える。
(まったくの余談ですが、タニタって実名出してるところがすごいね、自信があるんだね>タニタ)
  が、解雇された男が両手に紙袋でとぼとぼと屋外を行くシーンでは嵐の気配は微塵もしない。晴れてこそいないが、たいした水溜りも見られない。

  たしかに突然の解雇、そして先の見えない人生は恐怖ではあるのだが、しかし彼にとって本当の恐怖はそれまでの人生だったのではないだろうか。

  小暴君である彼は、家庭の食卓でも君臨し支配しようとする。その姿は観客からすれば滑稽でもありまた醜くもあるのだが、そしてその実リストラされてしまってはそこにしがみつくしかないという哀しささえ漂うのだが、まだその時点では家族にとっては厄介な存在にしか過ぎない。

  屁理屈で米軍への入隊を決めちゃった長男は、でもたとえそれが他人の受け売りであったにせよ、父親の「ダメだからダメ」に比べればはるかに説得力を持つ。
  何しろ「出て行け!」と親父は怒鳴るわけだがそもそも息子は出てくからって言ってるわけだし(^_^;)。
  挙句に「ウチを出てくのはいい、だがアメリカはやめろ」とは・・・・ こうして書くとよくある話にしか思えないが、そんなエピソードをこのシーンに凝縮することでシュールに突き抜けた場面となる。

  そう、この長男、早い段階からごく普通に微笑んでいるのが印象的だった。


  壊れていくのは父親ばかりではない。次男のクラスでは、彼の一言が原因で担任の権威が失墜する。
  だがその権威ももとから壊れていたとみるのが妥当だろう。それがいつ露呈するかというだけの話で。

  妻もそうだ。母親であり妻であり、その役回りをきちんとこなしてきてはいるがとうに壊れていた彼女。「ひっぱりあげて・・・」と手を伸ばすがその先にはもちろん誰もいない。


  ・・・・とてつもなく疲れる映画だ。映画館で二度観たときには感じなかった疲労を今回強く覚えた。とんでもなく緊張する・・・・
  ただ、そのいろいろなニュアンスでの “いやな緊張” も中盤まで。決して一般的な意味で明るくなるわけではないのだが、なにか滞っていた血の巡りが流れ始めるようだ。


  薬でなんとか痛みをごまかしているときよりも、病巣を切除したあとのほうがつらいものだ。
  だから本当は既に希望を手に入れているのに、そのことにはなかなか気がつかない。

  本作は再生の物語のようにも評価される。まあ、たしかに。
  ただイメージされるような、ゼロからのやり直しだとか、リセットだとかではない。あくまでもそれまでの自分を背負っているのだ。やってしまったことはやっぱり取り返しはつかないのだ。
  だからたとえ一度死んで、再生したとしても、やっぱり自分は自分、だから息子に「お父さん、変な格好」と言われてそれを受け容れるところからはじめる。


  そしてラスト。次男の弾くドビュッシー。会場にはその音に惹かれるように大勢が集まって。
  ・・・・演奏が終わり、息子と立ち去る父と母。そしてそれを見送るだけの顔、顔、顔・・・・
  そうだ、この家族は、少なくともこの家族だけは抜け出した。

  だがどうだ、見ていた人々は。
  ただそこに取り遺されて。

  やっぱりアチキは恐怖を覚える。




PS 「役所広司は天使だ」とか「役所と小泉は肉体関係を持ったのか」とか、最後の長男からの手紙が笑える、とか、いろいろと書きたいことには枚挙の暇がないのですが、いよいよとりとめがなくなるのでまずはこの辺で。

いつの間にか引き込まれていました

投稿日

2010/10/30

レビュアー

ぴぐぽぐ

テレビでやってたのを、何気なく観ていたら、すっかりいつの間にか引き込まれて見てしまっていました。
何も予備知識なしだったので、一体この先どうなるのか?何も分からず観進めて、ああ、これはリストラによって家族が崩壊していく話なのかな・・・
家族がバラバラになっていって、みんながそれぞれ問題を抱えていて、なんだかこれはどうしようもなく救いのない話になっていくのでは、と案じました。

ラストで、これが希望となるのかな?
ここから、なんとか家族が再生していくのかな?

途中で参加してきた娘も息子もついつい最後まで観ていました。

見ごたえのある映画でした。

37pts. 【監督】黒沢清

投稿日

2010/05/19

レビュアー

ヴィル

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

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カンヌっぽいといえば、そうだけど・・・

ま、ああそうですか・・・
という感想だけだった。

一見、幸せそうな家庭で、
4人ともが、何かしらの問題を抱えている。
リストラされた父、
母の役目を演じるような不満を持った生活を送る母、
目標の見えない自分の人生に迷っている兄、
そして、ピアノを習いたいが言えない小学生の弟。

この家族を中心に、日常から逸脱した日常を描く物語。

えっと、ま、
現代の日本を象徴してるといわれたら、そうだけど、
だから?
という感じ。

こういう描き方、ま、簡単とは言わないけど、
なんていうかな、、、別に、映画で見なくても、
もう、十分、いろんなドラマで見てきた
ありきたりの寄せ集めみたいなテーマな感じ。

細かいところかもしれないけど、
米軍の傭兵部隊って、なんか、そんないい加減に入れるの?
とか、
小学生が、あんな一般の拘置所に入れられるの?
とか、
いきなり、天才ピアニストってのも、なんか、いきなりだし・・・

日本を象徴的に描こうという、
ある意味、文学的な作品を描こうというにしては、
緻密さに欠ける描き方に感じる映画だった。

6〜 10件 / 全64件