フェイク

アル・パチーノとジョニー・デップの競演というだけでもワクワクしましたが、その内容たるや、両雄の演技力と相まって、観終えた後、感動の余韻に浸った記憶が消えない映画です。

マフィア・ギャング物と思うと肩透かしを食らうかもしれません。『アンタッチャブル』の様な正義感を貫く快作ではありません。
『フェイク』嘘、偽り。実在の潜入捜査官の心の葛藤、心の闇、そして、相対する潜入先、いわゆる騙される側の疑念、悲壮、そういう心情を彼らの生活も交えながら、緊張感を持って淡々と表現している映画です。
人間の持つドロドロした部分。嫌らしい程に疑惑の飛び交う中、騙し騙され、自分を見失いそうになりつつ、"男の友情"という、単純且つ奥の深い感情が、互いの心に憂いをもたらす。
やはり極めつけは、騙された側アル・パチーノ演じるレフティの最期のセリフでしょう。痺れます。

アル・パチーノの熟練した演技力はもちろんですが、ジョニー・デップの淡々とした相変わらずの"眼"の演技もしっかり対抗していたと思います。
アルの演技評価ばかり目立つので、ちょっとフォロー(^^)

観終わって、ジーンと浸ってる横で奥さんの一言「男の人の映画だね」。私もそう思いました。

普段の仕事でもありませんか？仲の良かった先輩、後輩、同僚との出世の違い。そこから生まれる嫉妬や疑念。どこかで裏切らなければならない現実。ないですか？
観た当時、主人公ドニーの最期の裏切りに実は釈然としない物がありました。でもこの歳で若干考え方を修正。一層、その悲壮感が理解できた今日この頃です。
飛び抜けて、面白い作品とは思いませんが、心に残る男の友情を描いた作品です。
★★★★


実在の主人公ジョー・ピストーネが、当時よくＴＶに出てました。
ジョニー・デップとの見た目の違いは仕方ありませんが（苦笑）"今も懸賞金を賭けられ隠居する捜査官…"のハズなのに、ノコノコと日本のＴＶ取材に素顔晒して出演しているのを見て、興醒めしました。
伝説は伝説のままにしておいた方がいいですね。

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アル・パチーノ演じるマフィアの姿が、
内心ビクビクしてるのに強がってる
サラリーマンのオッサンに重なって
哀愁漂いまくりでした。
マフィアも大変なのね。危険な仕事ですもんね。

ジョニー・デップ演じる潜入捜査官と、友情という絆で
自分たちも気づかないうちに結ばれてる。
それだけ真剣に相手と向き合ってるってことなんでしょうね。

最後に「実は彼はＦＢＩだったんだ。」
と写真まで見せられてるのに
全然信じない。少しも疑いもしない。
ここ結構感動しました。

後は、正体がバレそうになったときにハラハラしたくらいで
特に盛り上がりはなかったと思うんですが、
その割に長さを感じない作品でした。

まさかマフィアに心温められるとは思わなかったです。

実話を元にした作品なので、大きな盛り上がりもどんでん返しも無いです。

囮捜査官の仕事と家庭とのギャップにさいなまれる姿、捜査中のマフィアたちとのやり取りの緊張感などはかなり克明に描かれており、なかなか見せてくれました。

また、捜査官の兄貴分となるうだつの上がらないマフィアも、その程度の立場であるにもかかわらず、マフィアとしてのプライドや、筋の通し方、堂に入っており、作中にかかわる人間関係、位置づけの描き方も見事。

ですが、如何せんストーリーが平坦で長すぎました。
この手のストーリー大好きっ子じゃなければかなり見るのに疲れるのではないでしょうか。

かくいう私は、マフィア物はほとんど見たことが無く、どちらかと言うと敬遠していますので、アルパチーノの偉大さも分からず、本作のしょぼくれた演技がが実に上手いと言うくらいしか感想がありません。

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ジョニー・デップが演じる、実在の潜入捜査官の物語。
未見だったので、ブルーレイで見てみました。

映像はキレイです。人の顔がくっきり鮮明。
音響も、クラブでのステージ演奏がとても迫力があり
生演奏を聞いてるかのようでした。
（5.1CHサウンドシステムで聞いています）

特典映像に、ピストーネ捜査官の話とメイキングがありましたが
見る前にうっかり返却してしまいました…残念！

キャスティングを見て、てっきりアル・パチーノはマフィアのボスかと思ったら、
下っ端だったのでびっくりしました。
小心者であまり頭がよくなさそうで、見栄っ張り。
出世できなさそうな不器用なタイプ。
いつも堂々とした大物役をやっているイメージがあったけど
こんな役もこなすんですね。

レフティ役をやっていたアル・パチーノの演技がリアルで見事だったので
色々考えさせられました。

マフィアのやっていることは、もちろん犯罪。
でもレフティには、「掟」がすべて。それがいいか悪いかは二の次なのだ。
掟がすべてである世界の中で、精いっぱい生きている。
遠距離恋愛をしていると言ったダニー（ピストーネ捜査官）に、
「それがいい、女遊びできるからな」なんて言って、ワルぶっているわりには
奥さんのことをとても大切にしている。
彼なりに野心を持ち、マイアミでは一旗あげようとしたのに、
空回りして失敗。
カードを破って海に捨てるシーンは、じんときた。
この世界の中では、まっとうな人なのだ。
ダニーのことにも心を砕いて一人前に育て上げようとしている。

一方、潜入捜査官の仕事は大変。人間だから感情が入ってくる。
レフティの人間性にひかれる捜査官の気持ち、よくわかる気がした。
犯罪は許せないが、彼を人間としては好きな気持ちが
痛いほど伝わってきた。

マフィアなんて、攻撃的でどうしようもない奴ばかりだと思っていたけど
こういう人もいるのかもしれない。
生きる世界さえ違っていれば…という人が。
組織の中に入ってみなければ、わからないこともある。
彼は絶対にあの世界以外で生きることはないだろう。
それが切なかった。

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マイク・ニューウェル監督作品はジャンルこそ多彩だが
人間の心理を立体的に描いている事では一貫していると思う。

本作が潜入モノにも拘わらずハラハラドキドキしないのは
アクション、サスペンス等が主題ではないからだ。
派手なハリウッド色を排し抑制の効いた人間ドラマに仕立てるべく
敢えて英国監督を招聘した制作サイドの意図も窺えたりもするが
詳しい事情は解らない。結果は大傑作だ。興行的にも。

うだつの上がらないマフィア組員・レフティ（Ａ・パチーノ）の
弟分に収まり、組織に潜り込むＦＢＩ捜査官（Ｊ・デップ）、
ここでは要の難役だが、二人の掛け合いに見入ってしまう。

弟分ドニーを可愛がり信頼を寄せるレフティ。
彼に応えようとすればする程、深いジレンマの谷に落ちこむドニー。
その葛藤や苦悩を表現するＪ・デップの圧倒的な目ヂカラ。
努力型の名優がパチーノなら、デップの巧みさは天性のものだろう。

しかし圧巻なのは「サラリーマンの死」を彷彿させるような
成功への夢の挫折感を漂わせるレフティの人間像とその背景だ。
７０年代のＮＹマフィアの下部組織を鋭く捉える。

（宝石稼業でまとまった資金ができたから、これで夢を叶えてくれと）
レフティに足を洗うよう促すドニー。この場面のやり取りに泣ける。
最後、呼び出しを受け二度と帰ることのない我が家を出ていく時の
パチーノの演技の一つ一つも忘れられない。