バウンド

う〜ん、やっぱり面白いですね、この作品。

映画館で観たときはウヒョッと小躍りしたもんです。
山椒は小粒でピリリと辛いじゃないけど、クライム・サスペンスはこのくらいの
低予算で小規模な感じが良いのです。ペーパーバックの香りがして粋じゃありませんか。

忙中有閑さんが「レズビアンの恋はサスペンス」と見事に喝破されてますが、
この物語の肝ってやっぱり、手を組んだ２人が男と女じゃなくて女と女、
レズビアンの関係だったってところが手に汗握る最大のポイントだと思う。
コーキー（ジーナ・ガーション）は男に興味なしって感じで信用できるけど、
問題はヴァイオレット（ジェニファー・ティリー）の方。
この人はバイ、両刀使いな訳で、これがどっちに寝返るか分からないっていう
不安要素を持ってる。或いは男も女もどっちも信用してないって可能性もアリで。
演じるジェニファー・ティリーがまた実に不思議チャンな雰囲気、頭悪そうな
あのフワフワボイス、だけどよく見りゃ狡猾でしたたかそうな鋭い眼差し。
見た目はヴァイオレットがホットでコーキーはクールな印象だけど、
実は本性は逆なんじゃないかな。

スタイリッシュな画（え）づくり、電話線をビューンと追っかけるトリッキーな
カメラワークなんて、今となっては見慣れてしまった感があるけど、この作品辺りが
たぶんハシリなんじゃないでしょうか。

「血」の見せ方なんかも実に巧い。
バスルームや白いペンキで「赤」を鮮やかに際立たせたり、
暗褐色の絨毯にじゅわっと滲み出させてスリリングを演出したり。

まぁ、しかし、なんと言ってもジーナ・ガーションの魅力かなぁ。
ガテン系女子のコソ泥なんて、ちょっといないタイプのヒロイン（笑）。
鍵をこじ開ける道具はピアスになってて、普段は耳にひっかけてるなんて
めちゃくちゃオシャレ〜！
半開きのアヒル唇がセクシー！グワッグワッグワッ（なんのこっちゃ）。
こんな子と運命的に出会っちゃったら、なんか自分もソッチに目覚めちゃわないか？
己の身体の奥底に眠る禁断の扉（そんなのがあったのか！）に手を伸ばしてしまう、
そんな魅惑的な悪夢を見そうな予感がするのでした・・・？！

「女には女の武器がある」 というのは別に色事仕掛けのことを言うのではないです。はい。
私は女性の男性への色仕掛けの罠っちゅーのはよほどうまく作られた設定でないと 「つまんない」
と感じてしまうほうなのです。
で、この場合の女の武器とは、ずばり。

冷酷さ。

これです。
よく言われる女性の特性は大抵的外れなものが多いのですが、女性をやってそろそろ●0年を超えてくると徐々にその的外れさ加減にマヒしてきたりします。
これではイカンと時々ほっぺをぺちぺちやります。
が、これだけは
「ふふふ・・・・」
とほくそえむ一般に言われる女性の特性。

冷酷さ。

そのどこまでも「義理」も「人情」も切り捨てることの出来るエゴイズムは、私が人生の最終目標にさえ据えたいものがあります。
え？怖い？
そんな風にいう人に限って最後にあっさり
「こうするしかなかったのよ」
とか言い訳タラタラ垂れ流しつつ相手を裏切るのよ。
みっともないわ。
身に覚えあるでしょ。
というわけで、この映画の中で描かれるバイオレットの冷酷さは彼女の優しい性質とは全く別のものでありながら同質のもの・・・・表裏一体のどちらも欠くことのできない人間性の一面として描かれています。
そう。
優しくて冷酷。
それはどこまでもイイ女の第一条件なのです。
コーキー、えらい女に捕まったね。
さあ、天国へGo!（笑）

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　女ふたりがマフィアのおカネを横取りしようとするお話。
男と女、プロとアマ、大組織と二人組。この圧倒的な力の差をはねのけて不可能を可能にしてしまうフィクション性がまず見もの。それも派手なことは一切せず、ほぼ薄い壁を隔てた二部屋のみを舞台に、人物の表情や動き、家具調度、酒も重要か、などのクールかつムーディーなショットを巧みにつないで物語に引き込む。
　とくに後半はなかなか手に汗握るものがありました。

　しかし何といっても妖しさいっぱいの女同士の恋が魅力的でしたね。一部の女性が男性同性愛に萌えるのは、自分を性の当事者にしたくはない、外側に立って見ている者でありたいという願望のせいではないかと想像（自己分析）しますが、男性はどうなのでしょう。この映画を見る限り「純粋エロティシズムの抽出」の手段ではないかとの仮説を立てたのですが。ジェニファー・ティリーとジーナ・ガーションの視線の絡み合い、愛撫の手つき、異性間のものとは違う強烈なエロティシズムがありました。「甘い抱擁」のアルドリッチが蛮勇をふるって実行した描写を受け継ぎさらに深化させて洗練させた感じ。マトリックスにつながる脳内エロスの炸裂を、女性同性愛という男性にとっての神秘の世界を借りて描いたという印象でした。

　よく磨かれてはいるけれど「小品」という枠は超え出てはいない。犯罪に走る女二人組なら「テルマ＆ルイーズ」の方が好きですね。力強さと生命感があって。

１００人の映画通が選んだというキャンペーンの棚からかりて観てみました。
ここのDVDの説明書きが全てで、ボクが語るものがほとんど無いのだけど(笑)
まあ面白いか？と聞かれるとマトリックスのほうが面白いと答えてしまう。

このあたりの作品になると、いろんな有名映画とか監督作品の影響を受けながら
作っているわけで、そのあたりが映画通の琴線にふれることになるんでしょうね。

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本作はウォシャウスキー兄弟のデビュー作だが、最高傑作ではなかろうか？

それどころか、ここ30年のサスペンス映画の中でも10本の指に入るかもしれない出色の出来。

前半は思わず冷や汗をかく展開。
（一人で見たほうがいいと思う）
ところが、本格サスペンスにシフトチェンジした後はすさまじい。蛇足のように思われた前半も、サスペンスを生かすための布石だったと納得。

ストーリーはシンプル。舞台のほとんどはホテルのふた部屋だけ。低予算かつ古典的な物語では監督と脚本の力量が試されるというわけだが・・・

拳銃、ハサミ、イヤリング、電話、白ペンキ etc
これら小道具を最大限に利用し、緊張感を保つ手腕。
コーキーとヴァイオレットという二人の人間性を描き出し、さらにはコーキーからヴァイオレットへと徐々に焦点を移動させていくという離れ業。

古典的な物語をここまで鮮やかに料理したウォシャウスキー兄弟に喝采を送るべきだろう。

いやはや、デビュー作にして職人気質な映画でした。