君の涙　ドナウに流れ　ハンガリー１９５６　デラックス版

ハンガリー動乱がよく描かれていて、ストーリーも素敵です。

ハンガリーの首都ブタペストはドナウ川の河畔に有り、その美しさゆえ「ドナウの真珠」と呼ばれるそうです。「ドナウの真珠」と「ブタペスト」で「ブタに真珠」と言う連想をしてしまったのは私だけでしょうか・・？


それはともかく（なら言うな。）、「メルボルンの流血戦」って史実だったのですね。このドラマチックな出来事が歴史上の事実だと言う事を知らずに見ていた私は、ハンガリー動乱とメルボルンオリンピックの水球選手の二つに同時焦点をあてた脚本にもどかしさを感じていました。

「動乱」か「オリンピック」のどちらか一つに絞ったほうが良いのにと思っていましたが、どちらも実際にリンクした史実なので両方一緒にしないほうが却って不自然だったと言う訳です。

個人的にヨーロッパ等のマイナー国の作品は好きです。ミソもクソも一緒くたに配給される米国作品などとは違って、俳優の誰一人名前が知られていないマイナー国作品が日本で配給される場合は作品その物のクオリティが非常に高い場合が多いのでハズレを引く事が少ないです。

本作も歴史的事実をベースに分りやすいドラマ仕立てに仕上げた中々の秀作です。当時の時代背景は事前に仕入れた方が一層の理解を得られますが、その辺りをはしょって単純な青春映画として見ても一定の満足は得られます。



＜以下、時代背景のウンチク。興味なければスルーで。＞

第二次大戦当時にナチス・ドイツの支配下に置かれていた東欧地域はドイツの敗北と共に旧ソ連の支配下に置かれます。１９１７年のロシア革命で誕生したソビエト連邦。帝政時代の圧政を否定し階級の無い人民の為の公平な社会として誕生したはずの共産主義は、指導者たるレーニンが数年後に死去してしまい後継者としてスターリンが政権を掌握します。

本来の共産主義の思想から大きく外れた独裁恐怖政治の「スターリン帝国」。表向きの政治形態が右か左の違いだけで、中身はナチスと大して変わらないファシズム政権。ヒトラーの次はスターリンと言う名前と国籍が違うだけの同じタイプの独裁者に支配された東欧地域の人々の鬱積はかなりのものがあったでしょう。

スターリンの死後、フルシチョフによってスターリン批判が行われスターリン時代は公式に否定されました。それに呼応する様に東欧諸国で自由化運動が起こります。ハンガリー動乱はその中の一つで最も規模が大きかった物です。

しかしながら時は東西冷戦の真っ最中。共産主義の理念と明らかにかけ離れたスターリンは否定しても共産主義その物やソ連ブロック事体の否定は許されません。結局、ソ連とその傀儡政権の各国政府により動乱は鎮圧されました。共産ブロックの動乱では後のチェコ事件等が有名です。

やがて９０年代に入り、本来のシステムそのものに欠陥を抱えていた共産主義は金属疲労的な蓄積からあっという間に崩壊してしまいます。ソビエト連邦はロシア共和国他の共和国に分裂し、支配下に置かれていた東欧諸国も次々と共産主義から自由主義国家に変貌し現在に至ります。

1956年ハンガリー・ブタペストが舞台
ソ連の弾圧支配から自由を求める民衆が、武装蜂起したハンガリー革命を背景に、過酷な運命に翻ろうされる大学生や恋人たちの愛と運命を描く感動作品

現在のロシアのウクライナ侵略と同じことをソ連時代にハンガリーを虐殺してる

歴史を風化させない、そんな思いを感じるような
扇情的な内容だった。
占領した国はそれほど偉いのか？ソ連の水球の選手
たちが、蔑視的な言動をするのにひどい不快感を
覚えた。そして、ラスト近くに観客たちが叫ぶ
マジャール人の誇り。
武器を持たなければ自由を得られない。闘いを
続けなければ国を保てない。女性闘士の最後まで
戦い抜く姿はやるせない。

大学の埃っぽい講堂に寝泊まりし、明日にでも革命が起こると単純に信じていた年代の人間には甘酸っぱい映画だ。自分たちには銃器や命の危険までは無かったが・・・

イプセンの『人形の家』のノラも家の中では自由だった。それも自由だと信じて疑わない世代の人間には、ちょっと理解しがたい面のある映画かもしれないけど。