ヒトラー　〜最期の１２日間〜　エクステンデッド・エディション

ドイツ人も、ものすごいタブーに挑戦したものですね。
“人間”ヒトラーがここにいます。
決して彼をかばうつもりもないし、
彼のしたことを正当化するつもりはありませんが、
やっぱり彼も一人の人間だったんだということに
改めて気付かされるような内容でした。

でも、彼も一人の人間だったからこそ、
もっといいやり方があったのでは？
ナチス式敬礼をしている人々を観ていると、
背筋がゾッとしてしまいます。

やっぱり彼は間違っています！！

エクステンデッド版の本編は，
ヒトラーの周囲，第三者の視点が増えて，
奥深いドラマになっていました。

特にペーターのシーンが多く，影の主役へと格上げ！

ストーリーは、既に多くの書物に書かれてあることを映像化しただけなので、展開も結末も分かっているので、特に新鮮味はなし。

主役のブルーノ=ガンツ演じるヒトラーは、今までのどの映画よりも、風貌といい話し方といい、本物に近いリアリティがあった。

対して、取り巻き連中の似てないこと！ 落差がありすぎる。
ゲッペルスなんてあんな「四角い顔」はしていないし、エバ=ブラウンなんか実際は33歳なのに、どう見ても40代後半としか見えない女優が演じていてすっかり興醒めしてしまった。

どうせ似てないなら、まだ同い歳の女優に演じさせた方がマシだったのではないか。

第一次大戦後、戦勝国への賠償金支払いなどで疲弊していくドイツ。貧困が問題となっている今の日本の何十倍もドイツ国民は苦しかったのではなかろうか。
自由競争経済とは、解雇するのも自由、飢えて死ぬも自由、持てるものが持たざるものに何をするのも自由ということだったのだろう。そんな自由なんか要らない、われわれを救ってくれるのなら喜んでヒトラーに自由を差し出そう、ということだったのでは？
この映画は、如何なるときも自由を投げ出すことを戒め、自由放任の行き過ぎも戒めるドイツ国民にとっての自戒の作品なのであろう。そういう意味で、日本が「沖縄」や「特攻」を記録した映画というのは、必要なのではなかろうか？

　ナチスを知る者なら誰でも、どうしてあんな変人が権力の頂点に上り詰めるわけ？と疑問を抱く。歴史の教科書でナチスがドイツに台頭した背景をどれだけ説明されてもどうもピンと来ない。
　
　それがこの映画を見ると何となく掴めるような気がする。人間が誰しも持つ偏見や憎しみ、怒り、そういった負の感情に訴えるヒットラーの持論、そして直接接する人々には本当に暖かい人間味を示す、そういった情景が映像化されることによって、ああ、これなら時々ヒステリーを起こして無茶苦茶なことを言ってもついて行ってしまう人たちも結構居るかもしれない、と思わせる。やはり主役を演じた名優ブルーノ・ガンツの演技力は特筆すべきものだろう。

　映画としてどうか？と言えば、「事実は小説よりも奇なり」とも言えるドキュメンタリータッチの展開は一瞬も見逃すことが出来ないので最後まで一気に見てしまうが、「映画の手法」でもう少し彩りを添えて欲しかった、という多少物足りない感はぬぐえない。結末が分かっているだけに、もう少しヒットラーを取り巻く周りの人々の心の動揺を脇役たちがさらに掘り下げてくれれば満点だったのではないかと思う。つまりブルーノ・ガンツ以外の俳優たちがやや魅力に欠けているのだ。

　主人公の秘書の女性は実在で映画にも登場し、現在の心境を語るのが印象的だった。