眺めのいい部屋

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監督：ジェームズ・アイヴォリー（1986年・英・117分）
原題：A ROOM WITH A VIEW（E・M・フォースターの同名小説が原作）

オープニングロールのデザインも、本編でのいくつかの小見出しも、まるで小説本を目次から順番に読み進めて行く感じだった。
それも肩の凝らない軽い読み物。
オープニングではプッチーニの曲（私のお父さん）が流れ、劇中で主人公のルーシーがピアノで弾くのは、ベートーヴェン。シューマン、モーツァルトらのピアノ・ソナタも使われ、主人公の心境を曲の変遷で表しているそうだ。（Wikipediaより）

イギリスの良家の娘ルーシー・ハニーチャーチ（ヘレナ・ボナム＝カーター）は、年上の従姉のシャーロット・バートレット（マギー・スミス）を付き添い人としてイタリアのフィレンツェに来ていた。
通されたホテルの部屋は、予約時の約束とは違い中庭に面していて、「眺めの悪い部屋」だった。
食事の席で二人で不満を話していると、エマソン父子が聞きつけ「自分たちの部屋は眺めがいいから代わってあげよう」と申し出る。

実に「起承転結」のハッキリしたストーリーで、
《起》ルーシーとジョージの出会い。　《承》ある出来事により、逗留を切り上げイギリスに帰るルーシー。そして数か月後、上流階級の青年シシル・ヴァイス（ダニエル・デイ＝ルイス）と婚約。
《転》ルーシーの住む町の空き家に引越して来るエマソン親子。
《結》再びフィレンツェの「眺めのいい部屋」を訪れるルーシーとジョージ。
という次第で進む。

何と言っても、ルーシーの婚約者シシルと、自身のパッションに忠実な男ジョージの、二人の男性の対比が面白かった。
この時代の上流階級の青年たちは、職業も持たず家の財産で暮らすようで、シシルはいつも読書三昧、テニスの仲間にも入らない。キスも下手。
ジョージは、ルーシーの弟フレディと直ぐに懇意になり、一緒に森の中の「聖なる池」に全裸で飛び込む有り様。この時、ビーブ牧師（サイモン・キャロウ）も仲間に入り水浴びしているところをルーシーたちに見られてしまう。
この時のルーシーの様子が、可笑しそうに笑い転げる感じで、それとは対照的にシャーロットたちはオロオロしている。
このシャーロットが、真面目なのにどこか抜けていて、好人物ながら時々人をイラッとさせる。
まあ、それも物語のアクセントになっているのかも。
ルーシーを演じるヘレナ・ボナム＝カーターが、こんなにキュートなひとだとは知らなかった。『スウィーニー・トッド』のミセス・ラヴェットや『アリス・イン・ワンダーランド』の赤の女王の印象が強すぎて。（笑）
この時代にあって、エマソン氏とビーブ牧師の言葉や忠告は実に自由。
プチおススメの作品。

とにかく綺麗です。
衣装も景色も人の心も。
もちろんフィレンツェのホテルの部屋からの眺めも。

お互い惹かれあいながらも、別の人と婚約してしまうルーシー。
しかし婚約者は、ルーシーを愛してはいるものの、芸術品のように扱う。
そんなルーシーに最後のチャンスと気持ちをぶつけるジョージ。
「僕は君を愛し、考えや感情も認めていたい。　この腕に抱く時も・・・　　めぐり逢えただけで奇跡なんだ。　幸運なんだよ」と。
”愛を信じろ””愛し自分の思うままに行動しろ”と父から教えられてきたジョージ、ジョージの失意の気持ちを父のエマソン氏から伝えられ、やっと素直になれるルーシー。
遠回りをしたからこそ、深いつながりを持てたのかもしれない。

完璧なものなんてこの世にはない。
唯一　完璧な眺めは頭上に広がる空だけだ。

20世紀初頭、イタリアを訪れた英国人女性ルーシーは、情熱的で自由な精神を持つ青年ジョージと出会った。
英国人旅行者同士で出かけたピクニックで、ジョージにキスをされた彼女は、慌ただしくイタリアを立つ。
帰国したルーシーは、上流階級の知的な男性セシルの求婚を受け入れるのだった…

ジェームズ・アイヴォリー監督作品。Ｅ.Ｍ.フォースター原作「眺めのいい部屋」を映画化。
タイプの違う男性の間で揺れ動くルーシーの物語が美しい映像と音楽で綴られる。
冒頭、キリ・テ・カナワが「おーみおばっびーのかぁーろー」と歌い上げ、フィレンツェ感を醸成。

ルーシーの恋が気にならないということはないが、独身女性たちが興味深かった。
まず、ルーシーの年の離れた独身の従姉妹シャーロット・バートレット（マギー・スミス）。
彼女はルーシーの付き添いとしてイタリア旅行に同行するが、その資金はルーシーの母から出ている。
（当時、若い女性が遠出する際は、シャペロンと呼ばれる付き添いの女性が必須だったようだ）
彼女は哀れっぽく振る舞いながら、ちゃっかり他人に金や気を遣わせる強かさを持つ。
ルーシーとジョージのキスもしっかりと目撃しているｗ　本作になくてはならぬ人だ。
物語の終わりには、彼女をすっかり好きになっていた。
アラン姉妹という老嬢たちも素敵だった。
かなりの高齢だが彼女たちは屈託が無い。髪に矢車菊を挿し、遠くアテネを目指して旅をする。

ルーシーが「聖なる湖」と呼ぶ森の池で、ジョージ、牧師、ルーシーの弟が全裸で水遊びをするシーンがある。
概ね原作通りなのだが、実写で完全再現すると何とも言えない気持ちになる。
聖職者が全裸で水遊びをするのはリスクがあるのでは…
教区民に見られたら詰むんじゃないの？見られていたけどｗ

セシルの階級意識が鼻につくが、そういう時代だったんだろう。やだなー…
彼は、自分に比べて格下の家庭出身のルーシーを「教育し、引き上げてあげよう」といった気持ちを持っている。
だが、セシルも心底、嫌な人間ではない。
肩を落として階段に腰掛け、静かに靴を履く姿は寂しげだった。
ルーシー（ヘレナ・ボナム・カーター）、ジョージ（ジュリアン・サンズ）、セシル(ダニエル・デイ＝ルイス)が、それぞれ好演。

20世紀初頭のイギリス上流女性の結婚模様を描いた映画は、
とても多いですが、この映画は、結構、主人公の女性
ルーシー(ヘレナ・ボナム・カーター)が、計算高過ぎないので、
好きです。
美しいイタリアはフィレンツェへ付き添い付き(それが、常識らしい)
で旅行したルーシー一行が、割り当てられた部屋は、眺めが悪かった!
それで、部屋を交換してくれたジョージ父子に、好感を持ち、
イギリスに帰ってもジョージ父子は近くに滞在することに・・・。

フィレンツェの景色、イギリスの邸宅、調度品、食卓。
と、興味は尽きません。
そして、プッチーニのオペラアリアで幕開け(有名な、私のお父さん)
シューマンやベートーベンのビアノソナタ・・・。
のんきと言えばのんきな映画ですが、
ジェームズ・アイボリー監督の [ハワーズ・エンド ] [日の名残り ]を勝手に
三部作と、すると、確かにのんびりした婿選びの話し。
それでも、マギー・スミス(今でも、ダウントン・アビーで活躍ですが)
ジュディ・デンチ(彼女の好感度が上がる前です)
そして、ダニエル・デイ・ルイスがさりげなくクレジットされている、
美味しい映画です。

　20世紀初頭が舞台。それがわからなくてしばらく違和感があった。

　当時のイギリスにおけるアッパーミドルクラスの生態を活写しているが、やや退屈か。

　巷の評価はすこぶる高い。しかし、それはどうやら、女性好みの恋愛映画だかららしい。
　あんまり女性だ男性だと分けたくないけれど、この映画を見た人々（特に女性たち）の感想を読んでいるとそう思わざるを得ない。

　絵画的美しさや音楽の良さを鑑賞する能力に欠ける男の偏見かもしれないが。

（A Room with a View, 1986 U.K.）