死霊伝説　完全版

　この映画のスパイスはやはりキングの原作にトビー・フーパーが味付けをしたことでしょう。
　昨日目の前にいた友人・知人が次の夜死霊となり訪れる。
吸血鬼物のよみがえりの定説部分を踏襲していることはキング的である反面、
地下にうごめく吸血鬼がゾンビ化しているのはフーパーの映像的味付けでしょう。後半のこの部分が一番怖い。

　進行がリズム感にかけますがＴＶシリーズを繋ぐとこうなってしまいます、しかし、それに余る秀作です。

吸血鬼はノスフェラトゥ型。

クライマックスでの編集の仕方が、テレビ用な感じだったのですが、やはりテレビ映画のようでした。『死霊伝説』の短縮版は110分で、それを見た記憶があるのだけど、今回完全版を見ると、こんな映画見たっけ？しかしシーンで見た記憶があるのはあるし…という、自分の記憶の情けなさに驚く。しかし、完全版は3時間を超えるもので、三分の一以下になっていたのだから、知らないシーンが多すぎて、全く違う映画のように感じてしまうのも当然だろう。こんなに、すごい映画だったなんて。

クライマックスの盛り上げ方なんかは、最高で、ずーっとぎりぎりまで緊張感を保たせ、それで吸血鬼が寝ているのにどうやって倒すのか、吸血鬼が暴れだすのか、しかしそんなことをやって収拾付くのかなど考えていたのだけれども、素晴らしく落ち着いたもので、それでいて緊張感が持続し、さらに体が硬直してしまうという状態まで持って行く。吸血鬼は、動くけれども暴れだすというわけではない。しかし、恐ろしい相手となっている。かなりスケールの大きな映画だった。

もう長たらしっくて、くどくって、早く次、行ってよー、ってかんじです。決して、展開が早く観たいという前向きな欲求からではなく、まだ終わらないのおー、っていう後ろ向きな欲求からです。じっくりスローテイストな古典がお好きなかたはどうぞ。

　スティーヴン・キングの初期の傑作である「呪われた町」（原題「Ｓａｌｅｍ’ｓ　Ｌｏｔ」）の映像化であります。昔から、その手の雑誌などで傑作の噂は聞いていたのですが、この度、やっと観ることができました。
　うーん、さすがはトビー・フーパー。大予算をかけると『スペース・インベーダー』みたいな怪作を作ってしまう人も、このくらいのテレビ・ムービーだと、うまくまとめております。それに『悪魔の沼』などで見せた怖さがこの作品にも見て取れます。
　セーレムズ・ロットというニュー・イングランドの田舎町を舞台に、町を支配しようとするヴァンパイアと、その町出身の作家との死闘という舞台背景も雰囲気もぴったりのモダン・ホラーであります。７０年代の終わりということでＣＧなどはなく特殊メイクの手作り感も本作にはマッチしております。
　原作は社会人になって間もない頃に布団の中で読んで、ひどく怖かったのにやめられず結局、最後まで読んでしまった記憶が甦りました。本作はその雰囲気が十分に反映された出来であります。
　霧の中から現れ窓を開けるように促すヴァンパイアと化した子供たちや、終盤まで姿を現さないヴァンパイアなど怖さの盛り上げ方がうまいと思いました。これにはトビー・フーパー監督の起用と主演のデビッド・ソウル（『スタスキー＆ハッチ』の熱血刑事とは違った魅力がありました。）や御大ジェームズ・メイスンといった俳優陣の演技も与っていると思います。
　原作もそうですけどエンディングの暗い印象はテレビ・ムービーとしては珍しい終わり方ではないかと思います。まぁ、正面からキングの作品を映像化しようとした姿勢が私には好もしい作品でした。

　よほど暇なら借りてもいいと思いますが、期待して借りると裏切られます。

　最初から、最後まで盛り上がりが無く、スピード感もありません。まったくひどい映画（ＴＶ）でもありませんが、最近のジェットコースタームービーに慣らされた感覚としては古すぎます。

　初期のクリストファー・リーの「ドラキュラ」は、いまだに好きですが・・・