ダブル・ビジョン

日本以外のアジア映画のホラーはあまり見ないんだけれど、
ＦＢＩ捜査官が呼ばれて台湾の地元警察と協力して事件を
捜査する、という設定が気に入ってレンタルしてみました。
それなりに怖さは出ていたので良かったんだが、夫婦間の
トラブルを描いた部分が自分には邪魔だった・・・・・・

妄想なのか幻想なのか、それとも現実なのか？　虚実が入り乱れているかのように感じさせる映画です。とくにイメージシーンであっても実際に起きているかのように展開するので、いっそう虚実が入り乱れます。なんともまか不思議な事件でしたが道教の一言で片づけられてしまうと、アジアはとてつもなく恐ろしい地域に感じます。ですが、この道教観が作品のスパイスとしてピリリと利いています。映画としてはスタンダードな犯人捜査物です。そのため、危害が主人公に迫ってきません。残酷なシーンは繰り広げられますが、危機感はありません。その分、主人公の破綻した家族関係の方が重たく展開します。いったいいつの段階から犯人は犯行を計画していたのかまったくわからない。事件自体も残虐なのですが、中途半端。なので事件を解決したという感じがしません。テイストが超常現象ぽい事件だったのに真相を映像で見せるのではなくセリフでまとめてしまったので、ますます中途半端。入り口が面白く、途中もミステリアスで楽しめ、ラストも堪能できたのですが、よくよく考えると？なことだらけ。残酷シーンが多いので２周目を見る気はしないけど、妙に引き込まれる事件でした。

「ダブル・ビジョン」（1987年、台湾／香港／米国、カラー、109分）。

原題「雙瞳」。一つの眼に、二つの瞳。両方で四つの瞳。

台湾の台北市。
不思議な殺人事件が続く。
１件目は、真夏の凍死体。
２件目は、火の気のない場所で発見された焼死体。
３件目では、米国人神父の変死体が見つかる。それは、腸を抜き取られ、一旦洗浄した後に再び腹に戻され縫合されていた。
……。

台北の警察は、米国ＦＢＩの犯罪心理分析官ケビン・リクター（デヴィット・モース）を招聘する。
彼とコンビを組み、通訳を兼ねるのは、国際課のホートー刑事（レオン・カーフェイ）。
捜査を進めていくうち、二人は、事件と「道教」の関連に行き着く。

この映画。Ｂ級と言うのは、違うかもしれない……どまんなかのカルトだ。

ビルのなかに、道教の寺がある。道教には、五つの地獄がある。

「道教」とは何か。仏教でも儒教でもない。
仏教は、輪廻を基礎とする。死は回転の一時休止にしか過ぎない。楽譜の四分休符のようなものだ。
儒教は、来世を考えない。リアリズムの規範だ。

神仙の世界を求めるのは、老子・荘子の世界なのだろうが、この映画で出てくるのは、台湾の風土に根ざしたものだ。
土俗的な「台式道教」の寺院が、ビルのなかにある。

漢字ばかりの地図には、占い、パズル、呪詛が込められている。

ホートー刑事（レオン・カーフェイ）には、トラウマがある。
同僚を署内で死なせてしまった経験がある。
仕事一意だった彼は、崩れ、妻（レネ・リュウ）と娘とは、別居状態にある。

連続殺人の根拠が、ビルのなかの道教の寺にあると踏んだホートーは、同僚の刑事（レオン・ダイ）とともに捜査に入る。
寺は、蛮刀を持った武装集団の巣であり、死闘になる。
双方に死者が出るが、警察側が、辛くも制圧する。

寺の祭壇の床下から、一人の少女が見つかる。
彼女こそ、寺の男たちが命がけで守ろうとした「神体」だった。

その中腹部（内臓全体）は、病巣に犯されていて、血が染み出、蠅がたかり、瀕死の状態にみえる。
彼女を再生させるために、信者の集団は、五つの地獄を行おうとしている。
一つの眼に、二つの瞳。両方で四つの瞳。それを持った彼女は、神仙への唯一のステップなのだろう。

リクター（デヴィット・モース）は「何ってこった！」と呟く。プロファイリングが崩れた瞬間だった。
顔をしかめたあと、考え込み、茫然とする。
ホートー（カーフェイ）は、病院に彼女を搬送する。

彼の前で、その少女が立ちあがる。
「まぁ」と言って、掌をうえにして、「ふぅ」と息を吹きかける。

この少女の役を演じているのが、誰か。俳優の名は分からない。
ほっそりとした顔、きれいな長い首、スマートな体躯。
蓮舫氏にとても似ている。一青窈さんに少し似ている。大陸中国ではない、台湾独特の美人だ。

４件目。リクター（デヴィット・モース）が朝、舌を切り取られて死んでいる。
５件目は、カーフェイの身に起こる。

なかなかのＢ級カルト。見て損はない。

個人的に大好きな映画です。自分の趣味から言って万人にお勧めできるものではありませんが（苦笑）

この作品で注目なのは、テリーマンことデヴィッド・モースが準主役で出演していることです。
数々の出演作がありますが、有名どこでは「グリーンマイル」、ごく最近では「ハートロッカー」ですね。善も悪も演じ分ける希少な万能俳優です。

さてこの作品、アジアンホラー特有の重い空気が漂っていますが、デヴィッドのアメリカンなキャラが良いミスマッチを生んでます。
「セブン」的な猟奇部分や、Xファイルの不可思議な要素も宗教に絡めて見せており、全てに合点の行く緻密な作り込みではありませんが、
ラストなどはある意味ファンタジーです（笑）

暗くて重く、ちょっと猟奇的で不思議な殺人事件を追う刑事コンビものが好きな方は、予備的にリストへ入れても悪くないと思います。

中国の道教が絡む猟奇殺人。
主人公の刑事の苦悩。
FBI捜査官との友情。
なんかいろいろありすぎ。


猟奇殺人の謎解きを描きたかったのか？
家族愛を描きたかったのか？
邪なものとは何かを描きたかったのが？
ｅｔｃ、、
どの視点にあわせてよいかわかりませんでした。

おそらくもっと内容を絞り込んで見せたいものに重点をおけば素晴らしい作品になったはず。

福袋感覚で見た方がいいかも。
（いらないものも入っていると言う意味で。）