ＳＷＥＥＴ　ＳＩＸＴＥＥＮ

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これから見ようとされるなら、是非前知識なしで。


胸を締め付けられた思いがする。
「１５歳は大人か子供か・・・勿論子供だ」と思っていたのに、１５歳であっても人として生きると言うことには責任が伴うのだと思わされた気がした。しかも自らそれを課した形となったのがなんとも言えない。
初めてヒゲを剃る１５歳の弟も、母を許せないシングルマザーの姉（こっちも多分１０代）も、親を頼りに出来ない状況で生きている。母親ときたら子供の気持ちも知らないでどうしようもない男を頼っておびえるように男の元へ帰って行く。

タイトルに「ＳＷＥＥＴ」とつけた意味。

考える必要はなく、ただ感じて欲しい、と言われた気がする。



「今日はあなたの１６歳の誕生日なのよ？」

お誕生日おめでとう、ではない姉の言葉。
でも本当に心から弟を想っている気持ちが伝わって、強く心に残る。

ちなみにケン・ローチはリアムとピンボールの2人は北野武の「キッズ・リターン」の二人にインスパイアされたと語っている。
ラストの海辺のシーンは「大人はわかってくれない」だ！

愛情を求める子供っぽさと、なんでもできる幻想にとらわれている年頃を描いた青春映画の傑作。

やるせないなぁ。

思ったのは姉弟でも、姉は自分の子を産んだ経験から人生の謎が解けて呪縛からは解放されシングルマザーとはいえ、あれで真っ当に生きていけていたのだろうなということ。

決して悲観的なラストではなく、リアムももうすぐ人生の謎が解ける..その目前の15歳までの物語なんだろうという余韻を感じた。

Sweet Sixteenって、16歳から刑が重くなるっていう意味をこめてるんですね・・・

タイトルだけ観て内容が想像つかなかったんですが、
さすがケンローチ。
厳しい社会の現実と、15歳の少年の純粋に母を思う姿を
こんな風に描くとは。

母の恋人のせいで母は刑務所に
だけど、出所したら一緒に暮らしたい、
そして、母を刑務所に入れたダメ恋人スタント離れたい
そんな純粋な思いを持ってるところに
湖畔に理想的なコテージ。

もう、リアム少年はこの家を手に入れて
母と一緒に暮らすことしか頭にない。

そのためにお金を稼ぐには・・・・

学校にも行かずタバコを売って生活費を稼いですごしていたリアムは
あることに手を出してしまう。

もう、「マジメに働け」とか言ってられない状況というか。

国のあちこちが貧困に苦しんでいたという社会的背景をかんがみると
このリアムの行動を真っ向から否定することも出来ず・・・・

母もダメなので、ほっとけば？と思うところもあるんですが
そこはまだ15歳
そこまでふっきれる歳ではなかったのかも。

どん底を這いずるにはあまりに幼い。

それを護ってやったり助けてやる大人たちも
その社会的背景からまったく余裕なく
もう、自分がなんとかするしかない。

明るい未来はこの映画に見えてくるのだろうか？
と不安になりながら観てましたが、
まあ、この状況、そう甘くはない、というか
当然のように堕ちていく人生が描かれる。

こんな重たいテーマなのに
ケンローチ、やっぱどこか明るく描くんですよねえ。

それがなんとも不思議でかつ皮肉です。

終盤にもダメ押しの展開があって、もうどーんと沈みました。

おかーさんと一緒に「普通に」暮らしたい
そんな願いが叶わない世の中。

厳しい映画でした。


でも、やっぱりケンローチの作品、観ちゃうんだよな〜。
なんだかんだで好き、というか響く作品が多いから。

主人公の背景に胸が締め付けられる。
生まれた時から「敗者」としての人生が待っている。

何とも言えない。言いようのないくらい痛い。
これからどういうふうに生きていくのだろう。

大人に観て欲しい作品。

悲しい。

同じように堕ちていく作品で「さよならS」という映画もあったけど、「さよならS」はもう少し主人公が大人だった。
この映画は15歳。まだ子供。
彼の夢は家族揃って幸せに暮らすこと、ただそれだけ。
みんなで住む家が欲しくて、そのためにはお金が必要で・・・。
まだ子供で無邪気さも思いっきり残っているのに、変な方向に強くなってしまったリアムの悲しさが見終わった後、胸に突き刺さります。
お母さん！お母さん！リアムの心の叫びが聞こえてきそう。子供なんだから抱きしめてあげて、と心の底から願います。

リアムもそう、親友ピンボールもそう、若い人たちがこういう道を歩いて行かなければならない、こういう道に簡単に堕ちていってしまう現実を見るのは悲しいですね。
でもその暗さだけを描いた映画ではないことはしっかり伝わってきます。
最初から最後までじっくりと鑑賞しました。