ワンダー・ボーイズ

　ジャケットの渋くて素敵な３人の男性と存在感あるワンちゃん（ワンダー・ボーイズ）に惹きつけられて観てしまう。ワンちゃんの名前はポーなので、ある意味天才と言えるのかも。この作品で、ポーは存在感を充分発揮しているけれど、トリップ教授の脚に嚙みついてしまい、その後活躍場面がないのがすごく残念。

　過去のワンダーボーイ（天才少年）で作家にして文学教授のグラディ・トリップ教授と、未来のワンダーボーイである風変わりでエキセントリックな学生ジェームズ・リアとの、文学界での新旧交代の数日間を、ドタバタ喜劇風にシュールに描いている。そこにニューヨークからやってきた天才編集者、今は落ち目でリストラ寸前のテリー・クラブツリーが絡むという物語。どうということのない映画なのに、何とも言い難い不思議な魅力を発散している。

　とにかくキャストが信じられないほど豪華。マイケル・ダグラス（教授）、ロバート・ダウニー・Jr（編集者）、トビー・マグワイア（男子学生）、ケイティ・ホームズ（女子学生ハンナ）、フランシス・マクドーマンド（学長サラ・ギャスケル）といった具合。特にマイケル・ダグラスが、自分自身も問題山積なのに、才能ある奇矯な言動の困った教え子ジェームズや自分勝手な編集者テリーに振り回されながら、真面目に他人のトラブルに付き合う人のいいトホホな教授役を好演していて魅力的です。

　デビュー作がベストセラーになって以来７年間も次作が完成できず悩むグラディは、私生活もトラブル続き。浮気に呆れて妻は家を出ていき、どこにいるのかも分からない。不倫相手で、彼が勤める大学の学長サラからは妊娠を告げられる。大学では、次世代の才能を発掘する文学行事「ワード・フェスト」が開催され、ギャスケル邸で作家や編集者たちを招いてパーティが開かれる。

　ジェームズがふさぎ込んでいるのを心配したグラディは、勝手に寝室に入って、映画マニアのジェームズに、サラの夫ウォルターの貴重なコレクション、マリリン・モンローが新婚の時に着ていた本物のジャケットを見せてやる。ところが、ポーに嫌われているグラディにポーが噛みついたことから、事件が起きる。あげく貴重なジャケットが盗まれてしまい警察沙汰の騒動になってしまう…という展開。

　問題続きの現実離れしたドタバタの展開だが、不思議にのんびり、ゆったりとした雰囲気で緊張感はなく、ユーモアが漂う。真っ白な雪景色が悩みや困難を浄化しているように感じられて、また、雨のシーンが効果的に使われている。無理な執着を捨て去ってしまえば、本当に大切なものが見えてきて、案外人生はなるようになるのかもしれない。この映画にぴったりな主題歌をボブ・ディランが担当していて、「イカれた連中　おかしな世界」と歌っている。

にやりと見終わってからする面白さが感じられた。
ベストセラーを書いたグラディ教授、人生のお疲れ感が終始漂っていて、
彼を軸に編集者のクラブツリーと謎に満ちた教え子のジェームズ、不倫相手に
車そして犬と展開を予想できずに転がっていく。
見ている途中は、「ゲーム」みたいにおかしな方向へ進むのか、どこへ落ちるか
転がるのか、気持ちの落とし所が見つからずにややイライラするのだが、
「どうにでもなってくれ」と腹を括ってしまえば、意外に面白いことに気付く。
見終わってからのジャケットを見てさらにニヤリ。
どうか辛抱強く最後まで鑑賞あれ。

文系の大学生にオススメ度・・・★★★★
ちょっと人生に悩んでる文系大学卒のオトナにもオススメ度・・・★★★★
雪降る町出身の人にオススメ度・・・★★★★


「どんな話？」って言われると説明に困ってしまうのですが（笑）、個人的には、大学のゼミ風景に懐かしさを感じ、雪降る町の情景に温かみを感じ、メイン３人のすっとぼけた会話に笑かされました。

キャストが豪華なのに地味で、でも暗いわけではなくて、とりあえず、主演３人の持つ「味」の部分をじっくり堪能できる名作品だと思います。
キャスティングが抜群なのか、完璧に作りこまれているのであろうに、肩の力を抜いたような演技に見える自然さがあるというか…

特にトビー・マグワイアが良かった。
あの変人神童ぶり…キュートさと不気味さのスレスレのところにいる感じ、彼にしかできないでしょうね〜。

マイケル・ダグラスはどうもギラギラした野心家のイメージが強かったのですが、このしょぼくれた、でも優しい教授っぷりは大変良かったです。
こんな先生最高。

ロバート・ダウニーJr.はとってもいい具合に笑いを提供してくれます。かなりアホくてキュートです。「いいヤツ〜！」って感じ。
「悪魔の小路」以前にスパイダーマンとアイアンマンがコレで共演してたってことをしばらく忘れていました（笑）。

ちょっと悩み事とかあるとき、あったかいコーヒーでも入れて、ＢＧＭ（バック・グラウンド・『ムービー』）に何度でも見たい…そんな作品だと思います。
「理解」できなくても、風景、音楽、会話、キャラが相俟って、話の内容うんぬん以上にシーン一つ一つ、やりとり一つ一つが心に染み入る作品でした。

小粋なストーリ展開に、洒脱な演技がきらりと光る秀作。何よりキャスティングが素晴らしい。俳優が持つ才能を見事に引き出した監督とプロデューサーにあっぱれ・あっぱれ。苦味がうまさになることを知った大人のための一本。　マイケル・ダグラスの哀愁漂う落ちぶれ中年キャラがなんとも味があって素敵。最後のハッピーエンドはいかにもという感じですが・・・。

雨の日曜の朝にお薦めします。

ロバート・ダウニーＪｒはもっと評価されるべき俳優では。

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　皆さんの仰るとおり、トビー・マグワイアが光っています。演技をしているとは思えないほど。ぴったりの役ですね。ジェームズ君は困った人だけど、いい作家になるんだろうなあ。「ラブ・パレード」って小説を実際に読んでみたくなります。

　学長のサラさんは、何歳なんだろう？　妊娠したってことは、見た目よりも若くて40代前半？　でも、その年で学長？

　ケイティ・ホームズが出てくるたびに、「へえ、この人がトム・クルーズと婚約したんだ〜」っとつまらないことを思ってしまった。