ハード・テクニック

物語の進行につれ、レンタルした自分の動機なるものが次第に小っ恥ずかしくなる。
性に対し至って真面目に向き合うお話に何故このような邦題が？
まして、このジャケ写のせいで有らぬ誤解を（誰から？）受けているのが気の毒。
しかし「ハード・テクニック」とは思い直せば声なき声をキャッチし共有するに至る
ボディーランゲージの事を指しているのでしょう。

格上の貫禄、神秘的な存在感でもってテレンス・スタンプが主役を喰っている。
彼が演じるところの‘違法すれすれの’セックス・セラピスト、
実技で治療を施している‘ような気配’を漂わせる。
キリスト教的な事はよく解りませんが、このバルタザールが
5〜9段階への絶頂感をマリアに与えるべくマリアの夫ジョゼフに様々指南する。
（バルタザールは普通のオルガズムはたかだか4段階目なのだと言う）

ジーニアスに依れば　Bliss（原題）とは無上の幸福、喜び。
エクスタシーが我を忘れる程の喜びならblissは心の平静を保つ精神的喜び、であると。
　
真のブリスフルな境地に至る迄の一組の夫婦の心とカラダの葛藤と試練を描きます。
カラダが媒体となる無意識下の心の打ち明け話、それが出来て初めて4段階を超えられるのでは？
全体評価では確かに大した点は貰えない作品だろうが、悪くない。

バルタザールのロフトがいい。住居兼診療室である広々とした空間。
体感温度が高まるようにインテリアは暖色系で統一されている。

ちなみに私の家は眠気が吹き飛ぶように寒色系となっております。笑

性的不干渉の妻の為に旦那さんは、逆さ吊りの訓練をしたり、と
そこまでできるかというくらい努力する。
それには関心させられました。
こんな奥さんをもったら、今時の夫なら浮気するか、
離婚するでしょうが・・・。

タイトルとはちょっと違う内容だと思います。
不干渉という言葉に関心のある方、彼氏やだんなさんの
愛し方に疑問のあるかたは一度見てもいいかも。
ただ、この映画の旦那のような努力を男性陣に
求めてはいけないと思う・・・・(^^;;

イエスの母の名はマリアで父の名はヨセフ（英語読みはジョゼフ）で、イエスの生誕の際に祝福に訪れた東方三博士の一人の名はバルタザールです。本作の主人公夫婦とセックスセラピストの名前にあてられていますね。また、父が神の謂いであることや、マリアの無原罪の宿りのことも踏まえると本作はキリスト教圏の人には、なかなか怖いもんがある作品でしょうね。
蝿はキリスト教的にはベールゼブブで、邪悪な魂の発露ですね。
でも、ベルイマンとかが４０年前とかにイングリッド・チューリン主演かなんかで撮ってたら心胆寒からしめる孤独な作品になって打ちのめされたかもしれない、、、。ゆるい監督でよかった。
つか、ベルイマンが撮ってたらこんな邦題もつかず、私も気軽なエロ作品と勘違いして借りることもないので、出会えなかったな。
キリスト教的視点では結婚は、「神の領域」ですが、本作は宗教的抑圧・呪縛を通奏低音にして、ヴァン・デ・ヴェルデの「完全なる結婚」や女性解放運動、近年のニューエイジ的な東洋趣味（チャクラとかクンダリーニとか）をも踏まえようとしたため現代的ではあるものの破壊力のないシナリオになってしまいました。
そういう思想的背景を捨て去って二人の心に寄り添うことに専念した脚本にすればより良い作品となったでしょう。

ところで「世界一美しい死体」女優が、不感症の役どころって、、、、

彼がめちゃくちゃカッコいいです。色気もあります。ラスト近くのあれは、バスローブではなく日本の浴衣ですね？左前になってたし。すごく良い。

不倫や浮気の物語が多い中で、この物語は夫婦愛の物語？　女の人が見ると切なくなるのでは？