チャーリング・クロス街８４番地

ジャケット写真をよく見ると、切手の様なのです。
古い切手・・・セピア色にアン…バンクロフトが上半分。
下半分にアンソニー・ホプキンスが、英国紳士然と、キチンとしてます。
アメリカの女性作家ヘレーヌ(アン・バンクロフト)と、
イギリスの古書店の店主フランク(アンソニー・ホプキンス)の
1949年から1969年の20年間に渡る往復書簡による交流を、
描いてます。
ヘレーヌのちょっと変わった趣向の古書を、イギリスはロンドンの
「チャーリングクロス街84番地」にあるフランクの古書店。
究極のプラトニックラブ？!
ちょっと違うみたいです。
「信頼と友情と家族愛」
ヘレーヌはフランクの古書店の人々みんなを愛し慈しみました。
喜んで貰いたい・・・食糧難のロンドンに贈った品々。
お礼に送られてくる手紙やポートレートやテーブルクロス!！

たわいのない話しかも知れませんが、愛おしい20年間を共有した時間と愛情の熱さ、思いやり。
映像も家具やアパートの調度品の質の良さや、アパートから見える窓外の景色・・・堪能しました。
アン・バンクロフトの旦那様のメル・ブルックスさんが制作に名を連ねています。
ヘレーヌのざっくばらんで、アクが強い様で、気弱なところもある性格が、アン・バンクロフトにピッタリでした。
いつまでも大事に憶えていたい映画です。

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

　ニューヨークの女流作家ハンフ（アン・バンクロフト）は、アメリカでは手に入らない英文学の古書をイギリスの書店に注文する。店の主任フランク（アンソニー・ホプキンス）は、手紙の主の知識とセンスに驚きつつ注文の本を発送。以来、手紙と本と心づくしの贈り物が、遠い海を隔ててやり取りされ数十年の月日が流れていく・・・という物語。

　このプロットだけ読んでも、いかに“アクションのない”作品かということが分かると思う。手紙を書く、本を読む、仕事をする、あとは食事をし、友人と交流する、といった日常の風景。序盤はホントに静かすぎて退屈なくらい。

　ところが、少しずつ少しずつ物語は動いていく。はじめはハンフへの手紙を秘書に口述筆記をさせていたフランクが、だんだん自分でタイプを打つようになる。一方のハンフは、馴染みのシェフに自分好みの料理を作らせるように、フランクに本の注文を出し、的確な答え（＝本）が返ってくるたびに感動する。（たまにダメ出しもあるのだけど）

　２人はお互いに尊敬と理解を深め、絆が生まれていく。この変化を「目線」で表現したところに私は感心した。観客は２人の関係をトーゼン第三者の目で見ているのだが、中盤からこの２人、カメラを見ながら話し出すのだ。それは手紙の文章で相手に語りかけているのだけれど、まるで自分に語られているような錯覚に陥る。ここからは映画を観ている自分がハンフになりフランクになる。この演出は実に上手い。アメリカとイギリスの距離感を、食事の風景一つとっても全く様相が異なっているという描写で表わしておいて、２人が順番にカメラに向かって喋り出すことで、そういうフィルムの中の時間軸、空間軸を飛び越えて３人称から２人称へ飛躍する。途端に２人の心的距離がグンと近づくのだ。この仕掛けには唸ってしまった。Ａ・バンクロフトとＡ・ホプキンスの演技合戦も鳥肌モノ。

　後年、「貴方は私の唯一の理解者よ」とハンフはフランクを称える。自分の感性と文才をこよなく愛してくれた男性。顔を見合すことも、声を聞くこともなかったのに、彼女が彼女であることの絶大なる支援者であった人。人と人の、こんな関係があるのだ、と私は震えた。

　ラスト・カット。ここで、さらなる飛躍。涙が止まらなかった。
　
　良い作品です。

イギリスに住んでいた頃、魔女の絵本を集めていた。いや、日本にいる頃から集めていたのだが、魔女が主役になっている絵本はそれほど出ていなかった。それがイギリスでは、探せば結構見つかるという程度にあったので、すっかりハマってしまった。

この映画に出てくるような本屋で、ゆっくり探していき、レジに持って行く。時には「魔女の本が好きなの？　それならこんなのもあるの、とっても素敵なの」と、本当に素敵な本を、私が気がつかなかった棚から出してきてくれることもあった。別に魔女の本でなくても良かったのだが、本屋が好きだったので、どこに出かけても必ず、ホテルから歩いて行ける場所の本屋に入ってかなりの時を過ごしたものだった。

そんな思い出があるからかもしれないが、この映画はゾクゾクするほど好きだ。イギリスの本が手に入らないニューヨークに住む作家の女性が、イギリスの書店の店員と文通を楽しみながら本を購入していく。何年も何年も……。同じ英語を話すのに、食卓の風景は全然違う。暮らしも違う。でも、２人のまわりの人たちもこの交流を楽しみに生きている。

自分が読みたい本を何年にもわたって把握し、探してくれる人。普通とは違った形だが、ここまでの理解者というのは滅多に得られるものではない。いいなあと思う。

久しぶりに、「これは見てよかった」と思った映画。
その設定、登場人物、洒落た会話、ストーリー展開、その全てが愛らしいのです。本好きにはたまらない会話が散りばめられています。

私も小さい頃文通にはまった時期がありましたが、不思議なことに、普段顔を合わせている友人よりも文通相手の方が、素直に自分をさらけだせたりするものなんですよね。

本という共通言語を元に繰り広げられる、ウィットに富んだ手紙のやりとりがなんとも素敵です。

原作も読みたくなりました。

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

　本の好みや文学論、聖書についての話などは、悲しいことに全然わかりませんでしたが、それでも英米の空気の違い、本好き同士のユーモアあふれる文通をテーマにした、この映画を十分に楽しむことができました。

　　イギリス人がラズベリー好きだとか、粉末卵と新鮮な卵のどちらがいいかとか、アメリっぽく（？）ストッキングを置いてくるシーンや、そういった細部もおもしろい。すばらしい役者のそろった作品です。また、いつかきっと見ようっと。

　最大の関心事を共有でき、理解を深め合うことのできるお友達が海の向こうにいるということは（海の向こうでなくてももちろんいいのですが）、日々の生活にとってなんと励みになることでしょうか。うらやましい限りです。手紙をとおして、こんなにも広がりのある心の交流ができるのですね。

　お肉を見たときの75歳の大伯母さんの笑顔が、心に残っています。とってもチャーミング！