パフューム　ある人殺しの物語

とにかく映像が美しい。
悪臭漂う魚市場の映像でさえも、赤毛の女性の結い上げたうなじの映像も、
艶かしくリアルに描写され、主題である香りが匂いたつように、こちらに届く。
匂いだけでなく、温度や質感、その場面の空気さえも切り取った映像に酔いしれてしまった。

可哀想な生い立ち、孤独の中で生きることで類稀な嗅覚の才能を開花させてゆくグルヌイユ。
未知の香りで溢れたパリの街で、吸い寄せられるように一人の少女と運命的に出会い、
若く美しい娘の肌の匂いに心奪われ、貪るように嗅ぎ尽くす。
ここが彼の人殺しへの変貌の始まりであり、全てだったのね。
多くの人を魅了する究極の香水を完成させてもなお、
彼女の幻影を追ってしまう彼の姿に、同情すらしてしまった。
そして、彼の出した結論とラストには驚きだったが、
究極の香りにひれ伏す群集の様と同様に、ファンタジーであるという締めくくり方が逆に良かったかな。

あの究極の香水はいったいどんな香りがするんだろう。
香水好きのあたしは、グルヌイユが普通に調合した香水の方が嗅いでみたいが！
２時間を超える長さだが飽きることはなく、この世界にのめり込めた。
五感に訴えてくる映像を楽しんでください。

大絶賛です。
原作に思い入れがあると、大概がっかりなのですが、この映画に関してはあてはまりませんでした。140分、座っている足を組みかえることも思いつかずに、引き込まれていました。才能ってすごい！と思う瞬間はとても幸せに興奮しますね。

小説では「十八世紀のフランスに、とある男がいた。天才肌のおぞましい男である」と書き出されます。「この男の名は同時代の天才的怪物たちとは違ってすっかり忘れられている。彼の天才と野心とがある領分限られていたからである」

領分とは、鼻。
ひとふりで周囲に花の舞う香水、その誘引力を煮詰めると肉の匂いであるのか。

匂いの側面から、街と時代と誘惑を描いた「物語とはこうあれ」と感じる物語です。

展開はある意味、キャッチーであるのに、空気感はとてつもなく重く、湿度が高く、人の脳内の濃い部分でのみ進行していくようで、その感覚はドストエフスキーの「罪と罰」を思い出すような重量。自分以外をまるで見なかった男の身の切れるような悲しい話です。


つくづく、自分はお伽噺が好きなのだなあと思いました。
子供の頃読んだ不思議で残酷な異国の物語は私に大きく影響しているようです。私にとっての「お伽噺映画」ベストワンが「パフューム」なら、2位は「海の上のピアニスト」3位が同着で「デリカテッセン」「未来世紀ブラジル」です。

18世紀、フランス、パリ。
悪臭まみれの不潔な魚市場で生まれた孤児グルヌイユは、恐るべき嗅覚を持っていた。
成長した彼は、特別な体臭を持つ若い娘を殺害し、存分にその香りを吸い込む。
程なくして、グルヌイユは香水調合師バルディーニに弟子入りした。
香り（人の体臭）を保存する方法を学ぶためだ。
やがて、グルヌイユは「冷浸法」を学ぶため、香水の聖地グラースへと赴く。
この地で、彼は再び特別な体臭を持つ娘ローラを発見し…

パトリック・ジュースキント原作「香水　ある人殺しの物語」を映画化。
原作に忠実な仕上がり！
美しいものからグロテスクなものまで、きっちり映像化されている。
摘み取られた赤い薔薇や黄水仙、紫に染まるラベンダー畑、
娘の乳白色の顔を縁取る赤い巻き毛などは眼福だが、
グチョグチョの魚市場、汚物にまみれて泣き叫ぶ新生児、
不潔な手指とか泣けてくる…

体中の関節を打ち砕く残酷な刑罰を待ちわびる大勢の人々の熱気、
血を求める彼らの心が愛と官能に変化していくシーンは圧巻で、
映像の力を感じた。

若い娘たちを殺害し、その体臭を抽出して香水を作る男グルヌイユ。
異常者である。
彼は、若い娘の体臭「愛の香り」とでも呼ぶべきものに執着する。
彼が欲するのは、娘が発する愛の香りであり、彼女たちの愛や肉体には興味がない。
そんな男を演じるベン・ウィショーが最高に気持ち悪いｗ
驚異の嗅覚を持つグルヌイユだが、皮肉にも彼自身は体臭のない無臭の男だ。
終盤、彼は愛の感情について思いを馳せる。しかし…
誰からも愛されず、誰も愛さなかった男グルヌイユの虚しい物語…

落ち目の香水調合師バルディーニ（ダスティン・ホフマン）が、
仰々しくハンカチを取り出して香りを吸い込む仕草が楽しい。
ローラの父リシ（アラン・リックマン）が見せる感情のジェットコースターっぷりもすごい。
原作から抜け出してきたようだった。

１８世紀のパリ
石畳には排泄物が流れ
腐敗した内臓にはウジがわく
魚市場の屋台の下で産み落とされた
ジャン＝バテイスト・グルヌイユは
生きている　と言うことのほか何もない生活の中で
たぐいまれな鋭い嗅覚に目覚める

調香師の弟子となった彼は
捉え　保存し　自分のものにしたい香りを求め
香水の街グラースへと旅立つ
そこで手に入れたものは…

ある一つの感覚だけが
とびぬけて鋭く発達した人間は
特にそれが五感のうちであった場合
我々が想像できない世界を見るのだろうな
そこには一般のモラルなど
存在しないに違いない
ジャン＝バテイストにとっては
匂いだけが　世界を受け入れる媒体だったのだ

さて
香水と言う雅やかな題材をとりながら
この映画に　ローラ以外美しい者は登場しない
人々の生活や生活の醜悪な部分がこれでもか　と描かれ続け
しかも　人柄や性格の描きこみは一切なく
登場人物は　ただただ生をむさぼる獣のように扱われる
それは　いかにも作者の視点を思わせ
それを　一見不要と思われるナレーションが補強する

ジャン＝バテイストが作り上げた究極の香水は
人々に愛をもたらす
しかし　その愛は慈愛ではなく
性愛＝肉欲だった
そして彼は
その肉欲に　殉ずる

評価です
寓話にしては難解
娯楽にしては深淵
警句にしては晦渋
終盤近く　処刑場のシーンは圧巻
よくもあれだけの人数を…
なにものかを考えるきっかけをもらったので
加点１．０でプラス４．０　星四つでした　

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怖いとか面白いとか、そういう映画じゃなかった…
とにかく、引き込まれるのだ！！
＜類い希なる嗅覚の持ち主が、どうなっていくのか？＞…
ただただ、息をひそめて、見続ける……そんな感じ。
このおかしな物語の中へ、グイグイ、飲み込まれていく。

冒頭、真っ暗な中、たたずんでるらしき男…
鼻だけが照らされ、ヒクヒクと動く…
そう、匂いを嗅いでいるのだ。
このワンシーンだけで、
この映画の世界へ、引きずり込まれた気がする（笑）

そこから、物語は過去へ……
男の誕生シーン…
（とんでもない産まれ方…）
初めて、嗅いだであろう匂い…
それは、とんでもない悪臭…。

そして、男は、成長とともに様々な匂いを嗅いでいく。
そんな彼が、ついに出会った＜香り＞！
初めて、持続させたいと思えた香り！！
その香りを、作ろうとした……
とんでもない方法で…………。


＊＊＊＊＊以下もろネタバレ＊＊＊＊＊
要するに、
彼が、持続させたいと思った香りは、フェロモン？
単純に、香りを発してる女性に、恋をしたって事だよね。
でも、男は気づかない。
それまでの生い立ちと、匂いに固執していた彼には、＜恋＞が解らない。

で、なんやかんやで、男は、作り上げてしまった！！
その香りたるや、ものスゴい威力！！
ほんの微量が、風に乗せられただけで、ものスゴい効果が！！
次々と、彼のまわりの人々が、そばにいる人の体を求め合う！？
とんでもない人数の、とんでもない光景…（唖然）
それを見て、男はようやく気づいた？
自分も、彼女とこうしたかったのだと…
ただ体を重ねたかったのだと…。

彼が、最後にとった行動…
生まれ故郷にて、残りの香水を全部、自身に降り注いだ…

彼に群がる、人、人、人……
それは、まるで、ゾンビ！？？？！！
微量だとフェロモン効果、大量だと……？？？？
きっと、彼は、食尽されちゃったってこと？？！！
骨すら…、残らず…！？！！！？？

うわ〜〜〜〜、なんちゅうストーリーや〜〜〜〜

なんか解らんけど、スゴい映画を見た気分。
見終わった後、ぼうぜんとしてしまった……。


香りを追求し、
香りに翻弄させられた、彼の人生って一体……
彼そのものが、＜無＞って事なのかな？

体臭すらない主人公…
彼に関わった人は、次々と死をとげていく…
まるで、彼の軌跡を、痕跡を消していくかのように……

最後は、彼自身も、跡形も無く消えた………。

主人公が消えちゃって、
この映画自体が、白紙にされちゃったような……
なんとも不思議な後味。


それにしても、一番、気になるのは…
＜彼が作った香水って、どんな匂い？＞…

古代エジプト人は、ある香料を加える事で、究極の香水が出来たらしい。
でも、その１３番目が、解っていないらしい…
（１２種類は、解明できてるらしい）
香水作りの基礎は、
ヘッド（頭）４種類、ハート（心）４種類、ベース（土台）４種類…
計１２の香料。
ヘッドは、最初の香り…
ハートは、数時間持続する香り…
ベースは、残り香……
………………………by　映画の中のダスティン・ホフマン

主人公は、これに基づき、
ヘッド、ハート、ベース…と、類い希なる嗅覚により、
４人、４人、４人…、計１２人の香りを手に入れた。
ランダムに殺しまくってるようで、
しっかり選びに選んだ香りだったのだろう。
そして、極めつけの１３人目…
きっと、最初から、彼女に決めていたにちがいない…
いや、そもそも、彼女を軸にして、他の女性を選んだのかもしれない。
（おそらく、彼が２度目に恋した女性）
彼女を入れてというか、彼女により、究極の香水が、誕生。

１３人の女性の香りで作られた香水…

一体、どんな香りだったのだろう……。



う〜ん、メチャメチャ書くことありすぎ（笑）

いやぁ〜、スゴい映画でした〜！！！
とんでもない男の、とんでもない物語……
一度見たら、忘れられない映画です！！！