ヒストリー・オブ・バイオレンス

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公開当時確か秘宝かなんかで大々的に取り上げられてて、あのクローネンバーグ！暴力！セックス！ウィゴ・モーテンセン！あーんど！超悪オヤジのウィリアム・ハァァァーーーート！！！・・・ってカンジだったし、みなさんのレビューも暴力シーンが恐ろしいとか書かれてるし、うあああ、きっとガッツリ秘宝テイストの血まき肉裂ける凄まじく暴力的なシーン入りの作品だろうと思って、かなりびくついて見たんだけども。・・・あ・・・あらーーー？^^；

え・・・えーと。ウィゴ・モーテンセンってLORでしか知らないからだろうけど、もともと魅力的な俳優さんだから、前説的に耳にしている過去を抱えてますといわれてもええ？！って感じでもなかったし、「ジョーイの顔になってたわ」ってとこで、そぉかぁ？^^；と思わずこぼれてしまい、必然的にラストも完全に消化不良に。ずいぶん後半になってようやくでてくるウィリアム・ハートはキングの「８つの悪夢」の無言劇の殺し屋役の方がおもちゃ相手とはいえあまりに容赦なくてずっとショッキングだったし。

ティーンエイジャーの息子もハイハイわかったっていじめっ子を往なすし、いじめっ子もフンッ！とかいって素直に引くし、警官がギャングの車止めて警告すると素直に聞いてたりもするし。家族に限らず町も町の人々も学校も穢れが無いっつーか。悪事といえば、学校でよわっちいヤツの背中をどつくとか、ダイナーの入り口に空き缶捨てるとかってなんとも牧歌的な暮らし振りでなんとも。無駄に充実したセックスシーンも余禄っちゃ余禄で、小市民とかアットホームとかは細かく描けてると思うけど、あまりに健康的で完璧でまぶしすぎちゃって^^；
一方、ギャングの方はといえば、スカーを施した恐ろしげなエド・ハリスがスゴみ、そのバックには大ボスウィリアム・ハートが・・・ってそのものが非現実的で、手下もみな弱くてどうにも。一番恐ろしいシーンは、ウィゴと再会したハートが彼にねぶるようなキスをするシーン。あーハート、今死亡フラグ立ったなって、違うだろ。

”普通の生活”を昼ドラテイストに描く事がつまりはカリカチュアなんだろうけど、その中に忍び寄る暴力もワークシャツの下に隠されている見事な筋肉美等々のウィゴの魅力含め、お手並み鮮やかというかあまりに非現実的で、私は恐ろしさをあまり感じられなかったです。

いやそもそもの間違いは「ビデオドローム」の直後に見ちゃったってことなんだろうと思う。９．１１はわかるけど、かえってあのクローネンバーグがこんなコトに！って方がかなりショック。
私は「ビデオドローム」の方がずっと恐ろしいしそれが現実でない事を感謝したい気分になれた。その彼に、こうしたカリカチュア的な作品をして、な？小市民はいいぞう？平和で健康的でみーんないいやつで！って、けっこうリアルできつい思いしてる小市民に向けて主張していったいどうしたいんだクローネンバーグ。謎だ。

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あのヴィゴの主演映画だと言うので借りてみた。
アラゴルンのTシャツGパン姿に始めぎょっとしてしまった。私、彼の出てる映画ってロード・オブ・ザ・リングしか知らなかったんだよね…。

それはともかく、全く予備知識なしでいきなり見た今作品。
地味です。派手なアクションも爆発もなし。
ストーリーもよくあるお話。
過去を消し去って新しい家族との生活を護ろうとする男。そこへ男の過去を知る男が現れて、男は今の自分と愛する家族を守るため立ち上がった・・・・。

な〜んて書くとホント「ありがちっ！」と思うじゃあないですか。
でもいい。じっくりくるのです。

男がどんな生き方をしてきたかはセリフでは語られても映像は一切なし。想像だけがおもいっきしあおられていきます。
それなのに画面には自分が頭で想像してしまったのとは全く違う、相変わらず地味で善人な父親がいる。
その善人の時の顔のまま、平気で人を殺していく男。その不可思議なギャップがなんとも言えません。

善人な父親という顔と暗い過去を持った男の顔、この二つを淡々とヴィゴが演じてる。いぶし銀の演技とでもいうのかな。まだ若いのに奥行きのある演技が光ってます。（さすが詩人?!）

そして、あの、ラスト・・・。

ええっ？？！

「何これ？すんげー半端な終わり方〜」と思って、ムカツク終わり方の映画ってあるじゃないですか。この作品も人によってはそう思われてしまうかもしれないけれど、私にはすんごい新鮮だった。こんな終わり方ってありなのね・・・。

あの目に込められた強い、強い、想い。
「どうなるの？どうなっちゃったのよおぉお〜〜？」と、頭の中に末広がりで色んな結末の想像が広がっていっちゃいます。

つい今しがたレビューを書くに当たって知った。
「監督、クローネンバーグなんだ。あ〜なるほろね〜〜〜。」
そう、あの不思議な世界観があのラストに現れてます。
映画としては比較的短い1時間半という時間がホントうまく使われてます。
ぎっちりと詰まった無駄なシーンのない完成された映画、という印象を受けました。


ヴィゴのなんとも言えない大人の男の演技に
☆４っつです〜

なんてこった。おそろしい映画だ。羊の皮を被った狼とはこのことだ。

何の予備知識もなくボーっと観てたら、最近で言えば、「ボーンアイデンティティ」みたいな、ある男が過去の自分に落とし前をつけていく過程を描いたサスペンス作品にも見えた…あの場面さえなければ。

確かに、それ以前にも予兆はあった。偶然の事件をきっかけにして、牧歌的で善良な人々に溢れた街に「異物」が混入し始めて以降、彼を取り巻く世界は、人々は徐々に変貌し始める…いや、そうではなくて、もともと存在していたものが触媒によって活性化しただけなのかもしれない。

私は暴力が嫌いだ。暴力を否定する。しかし、命を奪おうと襲ってくる者は倒さなければならない。それは明らかに正当な行為だ。家族の安全を脅かす者はとり除かねばならない。それももちろん正当な行為だ。将来の安全に対する脅威は積極的に取り除かねばならない。あたりまえの行為だ。誰に対しても恥ずることはない。私は何も変わっていない。

そして、静かに、歴史は彼らの日常に溶け込み、輪は完結した。

ヴィゴ・モーテンセンといば、「ロードオブザリングス」。
映画の進行とともに風格が備わり、作品ととに役者が成長している過程がとても印象的で感動した。役は俳優を育てる様は、まさに一般社会のどこにでも見受けられる、「器が人育てる」典型だった。

今回、様々な期待をしたが、どうも脚本が難しい印象だ。

印象的なのはクライスラー３００Ｃの勇士とその咆哮だけ。


評価星2.5。

「ザ・フライ」以後のクローネンバーグは、売れたり評判になったりした映画は全部駄作（裸のランチ、エム・バタフライ 、スパイダー...）、逆に、あんなの見ているのケーベツって言われそうな映画は全部傑作（戦慄の絆、クラッシュ、イグジステンズ...）。今回は、妙に評判がいいので、身構えて見た。ところが、フツーにおもしろい映画じゃないか。妙に満足しちゃったよ。オタク固有の美形好き・恨み爆発の暴力シーンは相変わらずだけどね。しかし、ヴィゴ・モーテンセンはカッコいいね。風で前髪がそよぐシーン、よかったー。賞をあげるなら彼に。