太陽の雫

多分私は、ナチスものだと思って予約リストに入れたんでしょう。
でも、そうではないらしいと気づいたのは
長い長い物語の終盤でした。

しばらくは、誰が主役かわかりませんでした。
ずっとナレーションの人物だと思っていたので、
その『曾祖父』の話から始まり、
その後の話もそこそこ丁寧に描かれてるので
ナレーションの人物登場まで、長いなーと感じながらも
退屈したり焦れたりはしませんでした。

横道に逸れます。
市民クラブでのアダムの対戦相手、名前はわかりませんが、
スポーツマンシップにのっとり、正義感と自尊心に満ち溢れた素晴らしい人格！
私はあなたを尊敬します。

１本の作品ですが、
曾祖父をプロローグとして、
祖父・父・イヴァンをそれぞれ主役とした３部作、
またはオムニバス的な作品だと思いました。
彼ら３代の人生を軸に、ナチス台頭前・中・後が描かれていますが、
ナチスについては背景にすぎないと感じました。

『アウシュビッツでの記憶を灼きつけて生き残るのもまた、拷問』
この言葉も心に沁みました。
生き残ればラッキーなんて状況ではなかったのだと。
生きるも死ぬも拷問であったと。

人を傷つける権利をもって生まれる者は存在しない。
傷つけられる正当な理由をもって生まれてくる人は存在しない。

数々の悲劇や犠牲は、
人類が差別も区別もないのだということを学ぶためにあったのでしょうか。

人間は人間。
人間という、ホモサピエンスという、
ただ１種類の生物であり、それ以上でも以下でもないのだと。

この映画最初に観たのは２年ほど前ですが、グウィネス・パルトロウとアーロン・エッカートの共演に魅かれて「抱擁」という作品を観て、出演していたジェニファー・エールという女優に強い印象を受け、この作品に辿り着いたのでした。大好きなウィリアム・ハートが出ているし、モリー・パーカー、レイチェル・ワイズ、デボラ・カーラ・アンガーといった「中くらい好き」な女優もいっぱい出ているので期待したのですが、正直あまり面白くなかったので、ほとんど忘れていました。
今回同じイシュトバーン・サボー監督の「信頼/コンフィデンス」に感動してレビューも書いたのと、たまたま内田樹さんの「私家版・ユダヤ文化論」を読んでユダヤ問題に関心が深まっていたことで再鑑賞となりました。
でも、やはり第一印象というのは正直ですね。再鑑賞したら、さらにツッコミどころがはっきりして来てしまいました。先ず、レイフ・ファインズが３代のゾネンシャイン家の息子を一人３役で演じているのですが、ドラマ構成上の必然性は無く、それぞれの個性を演じ分けるには時間的余裕が無い。単に観る者を混乱させる効果しか生んでいない。逆に彼（ら）に絡む女たちをそれぞれ個性が違う女優たちに入れ替わり立ち替わり演じさせるのですが、こちらは皆キャラが似ていて、妙にセックスに積極的で思い込みが異常に強い。自然レイフ・ファインズが一人で何人もの思い込みの強い女とヤリまくっている映画になってしまっている。そこに「ユダヤの悲劇」を絡ませるものだから、まるでセックス大好きで思い込みが強いのがユダヤ人の民族性で、それが彼らの悲劇の原因であると言いたいかのように私には感じられました。（この監督もしかしたら反ユダヤ主義者で、本当にそれを狙ったのかも？）
内田さんの本を読んで私なりに感じたことは、ユダヤ問題に代表される「差別」が、短い人間の歴史の中でこれほど徹底的に残虐に広範囲に頻繁に繰り返されて来たのは、この映画が描くように微視的で局部的な分かり易い「理由」があってのことではなく、もっと根源的な、人類自体が本質的に持つ（または「欠いている」）何かが原因であるハズで、人間は一人一人それを不断に考え続けなければいけないのだ、ということです。差別問題に安易に答えを出してはいけないとつくづく思います。

映画の価値観って　泣きたい、とか癒されたいとか　楽しいとか
いろいろあるように思えますが　この映画は悲しい歴史を
記憶伝承するためのもので　正座して観るような映画です。
くつろぎたい気持で観るタイプではありません。

涙は出ません。ただ「おまえは本当に生きているか？」って
詰問されているような気分。

ユダヤ人として差別され　追い詰められ　迫害され
死に追いやられる。ナチス狩り。共産党へ入党。
そして今度は同じ民同士を糾弾しなければならないなんて。。。

一度目は不覚にも寝てしまいました。
レイフ・ファインズの一人三役ということもあり
まるで訳がわからん状態になってしまい。
二度目は襟を正しての鑑賞。
父の代の三角関係を省いて　
もうちょっと時間を短縮して欲しかった。
レイチェル・ワイズやアダムの妻のエピソードは
特に必要なかったと思えます。

３時間の時間をかけて、ハンガリーの歴史や２０世紀半ばのヨーロッパの歴史を“ゾネンシャイン”一家三代を元に語られていきます。
ゾネンシャインという名前を捨てなければならない事、
ユダヤ教ではいけなくて改宗が必要になった事
どうやって、世間や国に同化して生き抜いていくのか・・、
それは本当に過酷な人生でした。
そして、最後にイヴァンは何を望み、結論を出すのか・・。
ラストには感動をして、泣きました。
この三代に渡る主人公３人（イグナツ・アダム・イヴァン）を全てレイフ・ファインズが演じてますが、素晴らしかったです。
そして、全編通して出てくるヴァレリー。
若年のヴァレリーと晩年のヴァレリーは、実の親子なんですよ。とっても似てて・・。だから、違和感が全くないんです。
彼女の人生を共に体験したような気がしました。
やはり、１００年に渡るストーリーですから、３時間あってもどうしても細かく描くことは難しいですよね。
それでも、ポイントは押えてあって、ヨーロッパの歴史はすごく分かりました

ユダヤ人の過酷な歴史は、アウシュヴィッツの悲劇のみが、強烈に記憶にありますが、実際は、それだけでなく、毎日毎日の生活の中で、これだけ悩み苦しめられてきたんだと教えてくれる映画です。熱烈な恋愛、不倫のお話が強烈で本題を忘れがちになりますが、歴史映画として後世に残すべき作品かと思います。