アメリカン・ナイトメア

巨匠たちへのインタビュー集です。確かに６０年代後半〜現在を代表するアメリカのホラー映画クリエイター（クローネンバーグはカナダ人ですが）が豪華に勢ぞろいしておりますので、このジャンルそのものが好きな人には面白いでしょう。
ちなみに個人的には、途中で登場するシカゴ大学の教授が言及する「映像とは過去のイメージを何度でも現前させるという死を超えた機械技術であり、ある意味、もともと幽霊のようなもの（＝人間には生理的にブキミなもの）」というコメントに、一番納得しました。時代背景の説明に出て来る役割の大学教授なのですが、このコメントが一番、ホラー映画について考える上で示唆的でした。
ちなみに挿入される各監督の代表作のダイジェスト映像はスプラッター場面ばかりなので、血が苦手な人はウンザリするかもしれません。私自身、怖い映画は好きですが血は苦手なので、その系の場面だけダイジェストで挿入されているとちょっと気持悪くなりました、、

一見アメリカのホラー映画・監督の紹介もののようだが、実際は紹介と言うよりはホラー映画が成立した経緯やその社会的な背景を語ることを主眼とした結構生真面目で硬派な作品だ。ベトナム戦争だとか、公民権運動だとか、60年代以降にアメリカで起こった出来事やムーブメントと絡めて、それらが作品にどのような影を落としているのかを監督や学者のインタビューを交えながら、なかなか奥深く探っていく。

作品と社会との繋がりはもちろんあるだろうし、この作品の切り口や語り口も傾聴するに値するものだとは思うが、仮にそれを鮮やかに語り得たとしても結局のところそれは自ら持ち出した質問に対する答えを自問自答するようなものにならざるを得ないし、それがホラー作品がもたらす驚きや怖さの説明には必ずしもなり得ないので個人的には今一つだという印象しか感じなかった。監督達が、カーペンターまでもが生真面目に自作やホラー映画そのものについて語っている様には違和感と拍子抜けを感じてしまったし。

ただし、今ではなかなか観る機会を持つことができないトビー・フーパーの『悪魔のはらわた』のシーンがかなり引用されていることは特筆に値すると思う。それも象徴的なあるいは代表的なシーンが選りすぐって引用されているため、この作品を未見の人にとってはそれを観るためだけの価値はある。もっとも、レザーマスクが現れる「あの」シーンや、驚愕と震撼を覚えざるを得ない「あの」ラストシークエンスをそれだけ切り出したとしても、全編を時間軸に沿って観た場合と同じだけのものが得られるはずはなく、まあ痛し痒しと言ったところか?

ところで、ウェス・クレイヴンの『鮮血の美学』(字幕付き)を観る手段、方法はないものですかね?

７０年代のホラー映画を当時のアメリカの世情とリンクさせながら巨匠が哲学を語るといった内容で、ホラー映画を純粋にフィクション・エンターテイメントとして楽しみたい方には不向きかもしれません。
ただ、こういった人達の動いている姿を見れる機会はほとんどないのでファンの人なら結構楽しめるかも。
巨匠達の話し方や雰囲気などの個性が作品に反映されており、これを見てから彼らの作品を見ると違った見方が出来るでしょう。

出演リストには出ていませんが、クローネンバーグも出ています。明らかに他の巨匠達とは異質なオーラを放っておりある意味笑えます。

ホラー好きにはよいと思うけど、普通の人が見てもね、特になにものこらないかも。もっと、映画のシーンが多くてもよかったかと。

尊敬するサヴィーニ師匠がでてます。
この人は本当に年をとらないですね。
知的な体育会系のイメージありますが、本当にベトナムの後遺症があの人にあるのでしょうか？
ファンゴリアビデオマガジンの１号を師匠みたさに買いました。
師匠が活躍したビデオバブル期の作品がDVD化することを期待しています。