ダブルタップ

２００３年春、それは突然わたしの眼に飛び込んできた
レスリー・チャン飛び降り自殺、強度の鬱だったそうだ、わたしは一人パソコンの前で固まってしまった
チャウ・シンチー、ジャッキー・チェンがスーパースターなら、彼は間違いなく偉人の一人である、彼を尊敬する有名人は内外問わず数知れない程で、多大な影響と流れを変えた正に歴史に名を残す人物である
悲しいという言葉よりも、「何故かご苦労様・・・」と言う心情である、彼程自分に厳しく他人に優しい人物はいないと、昔誰かのインタビューを聞いたことがある
バイセクシャルであると告白し、実は俳優業は苦手で、自分は裏方の方が合っている、引退宣言、常に本音で偽る事無く露出し続け、結果自分を追い込み旅立ったのである。

この作品を観ていると、確かに狂気の演技はすばらしく、作品自体の出来もすばらしいのだが、どうしてもわたしには、この頃からすでに鬱が入り苦悩していたのが見え、お門違いとは分かりつつ彼に助けてもらった人達は何をしてたんだ・・・と思う心情の方が大きい。

ほんとに大好きな人だっただけにレビューにもなっていないが、まだ彼を知らない方達はそんなすごい人なの？、と興味を持って頂ければうれしい限りです
作品自体が彼の人生を語っている様で、ファンの方達は観ていられないかもしれない、それ以外の方達は一時代を築いたレスリー・チャンという人物を目の当たりにするだろう。

主人公がかっこよく銃を構え、銃弾がバンバン飛び交う香港映画
…なのにカルタシスとは無縁の作品でした。被弾して一人倒れる度に胸が痛くなる感じです。最初の３０分くらいは射撃に関するウンチクが続き銃の美学にこだわった話なのかなあ、と思いましたがこの部分がその後の主人公の行動にリアリティーをもたせる
、うまい演出です。個人的に好きなのは狂気に走るレスリーを追う刑事が同じ道をたどり始める寸前でとどまるシーン。彼を押し止めたのは果たして理性だったのか、明確にしてないのがいいですね。５年前の作品らしいですが、香港の多くの監督たちがジョン・ウーの影を追いかけていたのも今は昔、と感じさせます。

一発の銃弾が人間の性格を変えてしまうのか、それとも、押さえ込まれていた性格が出てくるきっかけになっただけなのか、あまりも意外な展開に、２人の主人公のどちらに感情移入するべきか悩んでしまう。２人の対決がどのような形で決着をするのか、最後までドキドキさせられ、怒涛の銃撃線にハラハラさせられる。今までの香港映画のイメージとちょっと違う、都会的センスのあるアクション。

本格的な銃の扱いが、ドラマをよりリアルにしている様で
そして何よりも、殺人を快楽に感じてしまう事を憎む正気の自分と
でも止められない狂気の自分を一瞬の表情で（空気ごと）表現してしまうレスリーチャンの素晴らしさ
いつも優しげな役柄が多いのにこんな冷酷なレスリーの一面に驚かされ、本当に
その才能が惜しまれてしまいました

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今となればレスリーの心の痛みと重なるように思うところもあって悲しい。
ファンだからどのレスリーも好きですが、できれば正義の味方の刑事役の方が良かったのかもしれない。
銃を構えるレスリーかっこいい〜。姿形、申し分ない。