アヴァロン　Ａｖａｌｏｎ

この作品でいくつか感心した。
特に日本映画でありながら、当初から国外を強く意識した制作を
行っていること。
またアニメーションで成功したパターンを実写でチャレンジしようとしたこと。

映像も綺麗だし、CGも申し分ない。
あとは映像のテンポだろうか・・・。
実写映像はシーンを増やすと、お金と時間が莫大にかかる。
アニメよりもテンポが落ちてしまうのは、そのあたりも関係しているのだろうか。

ただ日本映画として海外の作品とあえて同じ土俵で戦おうとしたチャレンジ精神は大きく評価したい。

私は押井守監督の実力には懐疑的である事をまず言っておく。ファンなのだが彼の実力が本当にメディアで評価されている程の実力の持ち主なのかという疑問をずっと持っている。彼を知ったのは「ＧＨＯＳＴ　ＩＮ　ＴＨＥ　ＳＨＥＬＬ」だった。続く「イノセンス」でも私はどちらかというと彼のセンスというより士郎正宗氏の原作の素晴らしさが彼のセンスを引き出したと考えている。士郎氏の素晴らしい原作と押井氏のセンスがたまたまマッチした事が好結果に繋がったと判断しているのである。原作が如何に良くてもそれを世に広める為の人間がいなければ宝の持ち腐れであることから押井氏の果たした役割は大きくセンスがあるのは認めるが、正直彼の凄さを理解出来ていないと言うのが本音なのである。彼の作品が素晴らしいのはわかるが彼の凄さを私は未だに理解出来ていない。

この作品は押井氏オリジナル作品である。しかもアニメではなく実写作品。注目せずにはいられない作品だ。私はセル版ＤＶＤを持っている。しかも絵コンテ付きのメモリアルボックスである。正直この作品の内容、特に最後の方がよく理解出来なかった私は、ＤＶＤに付いていたコンセプト設定や台本、絵コンテを見て初めてその真意をくみ取る事が出来たのである。この作品で押井氏が意図するものはとても難しい。レベルが高くて私のような凡庸な人間には理解出来ない。その理解できないところが押井オリジナルであり彼の魅力そのものなのだろう。

彼らしさはこの作品の随所で見る事が出来る。まず、犬である。そう、バセットハウンド犬である（笑）。彼の作品には必ず登場する。ライフルや武装ヘリ、ツィタテルなどの大型戦車の兵器デザイン、そしてディスプレイ上のスコープデザインまたは端末画面デザイン、キャラクターイメージ等に彼らしさが強く表れている。強烈なのは主役のアッシュだろう。彼女のイメージは草薙素子以外あり得ない。どこから見ても「ＧＨＯＳＴ　ＩＮ　ＴＨＥ　ＳＨＥＬＬ」に登場する草薙素子である。この作品自体、私には「ＧＨＯＳＴ〜」の二番煎じとしか映らなかった。

ゲームでの仮想空間と現実世界を行き来し、それを生活の糧にしている若者達。こんなストーリーはハリウッドなんかでは絶対に作れない。日本のオタクの真骨頂である。押井氏がオタクである事は誰しもが認める所。そのオタク度がうまく表現されている作品である。

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押井守監督作品の実写でありながら、デジタル加工を施してあるという、現実と虚構ともつかない世界で生きる人形のような、寡黙で陰の薄い人間を表した作品は、映像美にちょっとびっくり。
設定は、面白いのですが、ゲームという世界観を意識し、強調した世界は、ゲームをしない私にとっては、かなり抵抗はあるものの、その美しさには圧倒されてしまいました。

全編ポーランドで撮影され、クルーの多くや出演者は現地の人間。
何故にポーランドの撮影だったのでしょう？
銃や戦闘機や、戦闘シーン撮影のためなのでしょうか？

ありふれて、代わり映えのしない日常からの脱却を目指すアッシュは、私達の願望でもあるのかもしれません。
そして、ゴーストに出会い、レヴェルアップするという、そういう意欲があること。
そして、このようなゲームの世界に熱中できるのもまた幸せなことなのかもしれませんね。

砂のように乾いたセピア色のモノクロームな画質は、荒廃した街の風景とも合わさって、不安を煽るような漫然とした恐ろしさを感じてしまうのでした。

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押井守監督の、アニメと実写をの融合作品。とは言え、実写と思ったほうがいい。
「イノセンス」が素晴らしい作品だと思う自分にとってはこの「アヴァロン」も嫌いな
はずもなく、監督の世界観や価値観が存分に表現されていることは間違いない。

ただし、フルアニメとの違いは当たり前のように大きく、アニメを期待して観てしま
うと展開が遅く感じるのも道理で物足りなさで終わってしまうかもしれない。
近未来の非合法なバーチャルゲームという世界での話しだが、核となるものは
イノセンスとほぼ同じ。今、実際にみている世界が本当にリアルなのか？と疑問
をもつと全てがこういう世界になってしまうような

オープニングからセピア調の映像が続くが、嫌悪感を抱くこともなく観れたし、
ゆったりとした展開や眠気を誘うようなBGMも確実に狙いであって全てにおい
てダルさを感じるような近未来を表現していることに他ならないと思う。
なので、鑑賞中に寝てしまうということも稀にみる正当な反応かもしれない。

話はクラスAの上にあるクラスSAへと向かっていくのだが、このあたりから
結構、引き込まれていきます。クラスリアルに入った瞬間、セピアからフル
カラーになるんだけど、たったこれだけで強烈にリアルろいう言葉を説明
しきっている。この瞬間のためにずっとセピアだったのね。

エンディング。。。まぁ、想像したような感じでした。
イノセンスなんかと同じで解釈がいろいろあると思うので是非、見てください。

押井守監督の世界観や価値観に共感できる人には十分堪能できる作品。
アニメではないところからそれだけで、監督のメッセージがリアルに近づいている
と思えてならない。

もちろん、一般受けするようなエンターテイメント作品でないことは最初から分か
っていること。賛否両論どころか、「否」の評価は熾烈極まりない酷評を受ける
と思いますが、これも監督の世界観を確立するためには必要なことなのかもし
れないとさえ思えてきました。

偉そうなコト言うけど(笑)、押井守の作品って、壮麗でマニアックな舞台装置をつくっておいて、ストーリーがガス欠気味というか、走り出さない。

ラスト近くのボスキャラとの戦闘なんて、面白いシークエンスになるはずなのに、あっさりと終わっちゃう。なんかこの「寸止め感」や「食い足りなさ」に不満が残るよなぁ。