バリー・リンドン

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これが、３０年前に作られたとは。
なんと美しい映像。甘美なる音楽。
そして、スローテンポなストーリー。
拍子抜けするような、結末。
わたしは、お薦めしません。

３時間尋常でないほど美しい撮影と豪華絢爛な美術に囲まれ、
どう見ても冴えない風貌のライアン・オニールが窮地に陥ったりピンチを免れたり成功したり没落したりをひたすらぼ〜っと眺めて
ああこの月の光がたまらんとか飄々とした語り方が好ましいのうとか思ってるうちに終幕、そして最後の字幕で大爆笑。
これを言いたいがために３時間かけたのかと。キューブリック流コメディの到達点と思う。

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第一部、二部の二部構成になっています。

第一部　ライアン・オニール演じるアイルランド青年バリーは、いとこの年上女性に思慕を募らせた挙句に彼女の婚約者と決闘となり、祖国を追われることになった。出国後追いはぎにあい、無一文になった彼はイギリス軍に入隊し、歩兵隊としてフランス軍と戦う日々を送る。ある日、隙を見て脱走するがドイツ軍に捕らわれる。こんどはドイツ軍として戦争に加わるが、ある戦いで将校を助けた功績で昇格する。ドイツ軍では厚遇される身となったが、自由を求めドイツを出国。その後、同じアイルランド人と組んで貴族相手の賭博場で強運にも勝ち進んでいく。その賭博場でイギリスのリンドン伯爵公夫人と知り合い、夫人の美しさに魅かれていく。

第二部　病死したリンドン伯爵公の未亡人と結婚し、バリー・リンドン卿となったバリーは人生の頂点にあった。しかし、派手に女遊びに興じるバリーに、亡きリンドン公の王子は反感を募らせていく。また、バリーは貴族の地位を手に入れるため、他の貴族の接待や贈り物などで高価な絵画や宝石を買いあさり浪費を重ね、資産を食い潰していく。


第一部は淡々と、ホントに淡々とバリーの行動を追っているという感じで、正直に言ってかなり退屈でした。祖国を追われた後にイギリス軍に入隊、脱走、ドイツ軍に捕らわれて…と、結構波乱万丈だと思いますが、主人公バリーの感情がよくわからなくて、回顧録のようです。丁寧に描かれているのが逆に間延びした感じを受けました。
第一部は長すぎますね。半分にカットしても充分わかると思います。

一転、第二部になると俄然面白くなります。富と名声を得たバリーは、人生が一変します。あこがれの上流社会に仲間入りしたのです。さらに貴族の地位を得ようとしたことから皮肉なことに墜落が始まります。

バリーはとてもとても上昇志向の強い人間だったんですね。今の自分に決して満足しないという。ある時点まではそれは良い方向に人生が動いていきます。でも、ある時点を越えて、さらに上を目指したことからほころび始めるのです。


ラストの一文が非常にココロに響きました。
『美しい者も、醜いものも、今は同じ、あの世にいる』

諸行無常と言ってしまえばそれまでですが、１９世紀を生きた人たちは今は誰も生きていないのです。貴族も平民も関係なく、みな同じあの世です。あと百数十年もすれば、２１世紀を生きているわたしたちも誰いなくなります。

途中で止めなくてよかった。最後まで観て、やっとこの映画の面白さがわかりました。

久しぶりにキューブリック氏のこむつかしい世界に浸りたくてお借りしました。最近笑いばっかり追いかけていたので、静かに一生懸命鑑賞しようと思った、のです。

こむつかしい世界、という期待は見事に裏切られました。非常にわかりやすい。叙情的であり、しかし激しく、人間の内側を描いてあります。そして、期待したものとは違ったのに３時間見てしまった理由、それはおそらく映像の素晴らしさです。ものすごくわかりやすく視覚に訴えてくるのです。あらゆる対比が美しい。

2001年宇宙の旅、時計じかけのオレンジ、そして今回の、バリー・リンドン。この全く異なる三作品で、未来への憧れ、現代への警告、過去への敬意、そんなものを感じ、キューブリック先生！と叫びたくなりました。

おもしろい。いつまでも１本の映画であれやこれやと考えてしまう。
また間をおいて他の作品も見ようと思います。

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平家物語ではないですが、盛者必衰のことわり、なストーリーです。歴史映画が好きな自分にとっては、当時の貴族社会の描写が非常に楽しめました。ストーリーだけではなく、ビジュアル面でも、ロウソクの光だけで撮影したという有名な美しいシーンなどが楽しめます。主人公の行く末にはハラハラさせられますが、長時間の映画ながらも決して後味が悪いこともありません。キューブリックの映画ということで、観る前はなんとなく身構えてしまいましたが、休日の数時間を費やして観る価値が非常に高い映画でした。