バリー・リンドン

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いつも感じるのだが、キューブリックの映画はよそよそしい。完璧に練られた構図と色彩を、微動だにしないカメラで切り取ったシーンは絵画を見る思いにさせられる。大げさな演出を避け実に坦々と、しかし丹念に描写されつくす画面にのめり込み、気がつけば３時間は過ぎてしまうのだが、心に残るものは少ない。

物語は、貴族と平民という生まれ持つ資質の違いを、それを手に入れようとした決闘者の荒々しい血を持つ者の末路を描く。
男の人生はまさに波乱の連続。理不尽な運命に翻弄されるかに思えるが、それは男が自ら望んだ道で、時により重大な岐路を迎えるが、常に決闘者のルールに従って道を選ぶ。全てか無か、その二者択一が男の人生で、生涯をこの考えに捧げる。
男が手に入れようとした貴族の、豪華で退廃的で喧騒に満ちた、それは空っぽを埋めるためだけの社会。男は成りあがるために全てを失くし、その全てはこの社会では手に入らず、最後の決闘によって男は元の姿に戻るのだった。

絵巻物のような美しさを絵空事と感じるのか、抑えた役者の演技からは人間味を感じにくいからか、本作で語られる完璧な世界には称賛を惜しむ気は微塵もないのだが、やはり味気なさが残ってしまう。
それは完璧すぎるからなのだろうか。完璧すぎて、鑑賞者の思いを挟む隙間がないからなのだろうか。
私と監督の対峙として、繰り返し観ることになりそうな映画。

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こんなに映像が美しい映画ってあり?という驚きで一回目は筋書きさえ追えない。
二回目、音楽が私の心の琴線に触れすぎる。なので、映画自体を楽しめない。
三回目、やはり、絵画のような画面が鑑賞の邪魔をする。でも、多少、分かる部分が出てきた。

バリー・リンドンは、青春の恋に破れて破滅したんだ。

あれからおかしくなったんだ。

戦争で傷つき、心が壊れ、お金と地位目的で結婚する。連れ子がなつかない。よくあるネタでないか、なのに、大作映画を観てしまったよ。

なにしろ、音楽と場面が一致して、衣装が完璧で、景色が美しくて。
決闘のシーンやエンドクレジットに流れる『サラバンド』なんてピアノをかじった人なら弾ける曲、なのにあの息詰まる編曲。凄いね。

孤独を意味するのか、シューベルトのトリオのメロディ、たまらないね。

キューブリックの傑作なのか、失敗作なのか。とにもかくにも、美しすぎて、映画になっていないとも思えてしまう。
一種の絵巻物かな。

3時間一気に見てしまいました！歴史好きの人にはたまりませんね。すごい！の一言です。よく作ったね。モーツァルト（アマデウス）やマリー・アントワネットが活躍したのと同じ18世紀後半のお話です。アイルランドのジェントリーの息子、バリーの大冒険！

まずディテイルの描写がすてき！本物のお屋敷、コスチューム、食器とか絵、召使いたち。電気照明を使わない撮影。ろうそくの光の不思議な明るさ。18世紀の屋内の色が出ています。驚きました。レディー・リンドンとバリーがゲームをしているシーンの色とか、不思議ですね。ろうそくのシャンデリアの室内のシーンだけでも十分に映画を見る価値があります。また、音楽もヘンデル*が繰り返し使われています。悲劇感を高めて効果的です。
*HWV437, Suite de pièce Vol. 2 No. 4, in D minor

前半は、アイルランドで英国の歩兵連隊に入ったバリー。美しい軍服。７年戦争の戦闘シーンは驚きでした。撃たれても撃たれても太鼓をたたきながら進軍する歩兵たち。昔は戦争ってこんなだったんだ。

７年戦争はとても興味深いです。マリー・アントワネットのお母さんマリア・テレジア率いるオーストリアと、ルイ15世のフランス王国・エリザベート女帝のロシアの連合対、フリードリッヒ大王のプロイセン・英国連合の戦い。英国にとってフランスは植民地争いで敵だし王様がドイツ系（ハノーバー家）だからプロシアを支援しているんですね。アメリカ大陸では英仏の植民地戦争中！

後半は、レディー・リンドン家（伯爵夫人）にうまく入り込んだバリーの活躍と悲劇。ストーリーは簡単。でも前夫の子ロード・バリントンは微妙ですね。彼の気持ちはわかる。バリーは少しがまんすればいいのに！メイドに手を出したり単純で“ばか”だよねー、と思いました。リンドン家付の牧師さん（Reverend Runt）が英国風で印象的。そして決闘・・・。

レディ・リンドン: 英国貴族のタイトル（Peerage）は難しいですね。バリーのように伯爵夫人(Countess、男性はEarl)と結婚してもタイトルがもらえるわけじゃない。財産や権利は全て彼女のもの。彼女のサインをもらわないと何にもできません。前夫の子がいる場合は全ての権利がその子に相続されるんですね。相続の話は“いつか晴れた日に（Pride and Prejudice）”にも出てきましたね。タイトル欲しいバリー、お金で無理して買えるかな・・。

重厚でとても豪華な作品です。

このバリー・リンドン、世間知らずで初心な坊ちゃん風な彼。でもその裏に野心もしっかり持ち合わせている二面性が魅力の主人公。人との出会いや幸運悪運の中で彼の人生が一冊の本のように語られていく。話も魅力的だが、脚本、撮影（ろうそくのみで撮影された美しい映像は語り草）プロダクション、衣装等ひと言ですばらしいに尽きる！時代背景を見事に再現させ長さを感じさせない物語の進行は監督の演出のうまさでしょう。レディ・リンドン役のマリサ・べレンソンも華麗でまるで美しい絵画をみているよう。秋の夜長にこんな作品もどうでしょうか？

この質感と　美しさは圧巻!!　手を伸ばせば触れられそうです。

道徳観の欠如した主人公が　ゆらりゆらりと欲のために流されていく。
その顔が常に無表情でしたね。バリー・リンドンを描くというよりは
時代の顔を映していきたかったのかもしれません。

あまり好みの作品ではないですが
一生のうちに一度は観ておきたい作品です。