ＰＥＡＣＥ　ＭＡＫＥＲ　鐵

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早いものでもう―拾―である。しかし鉄之助はすこしでも進歩したのだろうか。剣は上達したのか、社会性や知恵が身についたのか、小姓の仕事がこなせるようになったのか、局中法度の冒頭にある「士道ニ背キ間敷事」を守れるようになったのか。答えはどうも否のように思える。
なかなか成長は見せてくれないのだが、山崎烝に「あゆねえはどこへ行ったんだ。てめえなら、ぶっ飛ばしてでも聞きだせる」と強く出ている。歩がどこへ行ったか聞き出したら鉄之助にはなにができたのだろうか。それに、士道とは礼節を弁えることも含まれていると思うが、相変わらず先輩を「てめえ」呼ばわりする大物ぶりである。

後半、烝との間に友情の芽生えのようなものが描かれているが、もうそんなに明るく笑っていいんですかいというか、さすが30分一話展開が速いわというか、この回は最後までみんなで愁嘆場を演じてよかったのではないかと思うが。
喧嘩ばかりしていたふたりのあいだに初めて友情の気配みたいなものが生じて、「烝！」「お前、今、なんて呼んだ…？」、そしてふたりそろってテレテレ、なんていうのはまあいつの時代の表現か。見ているこちらのほうが気恥ずかしい。

ところでイントロダクションに燕とあるが、それじゃツバメです。

ギャグに徹した拾伍話はなかなか面白かった。どうせならこのくらいギャグに徹してくれれば見やすいものを。
絵がきれいとかCGがどうのとか技術的な面は別にして、「PEACE MAKER 鐵」という作品、内容的には大人の鑑賞に堪えうるものではないと思っている。本編に輪をかけてひどいのが各DVDの末尾についている「おまけ」。キャラクターひとりひとりにスポットが当たり、キャラクターの独白で構成されているのだが、聞くのが恥ずかしくむずがゆくなってくる。しかしこの巻は、ギャグ話の拾伍話に合わせたのかどうか、原田、永倉、藤堂の３人が登場して掛け合い漫才らしきものを聞かせてくれた。ベタではあるが怪しい独白よりよほどよかった。

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鉄之助、土方副長に「遊びたいならここにいる必要はない」と言われてしまいました。うん、そう思う。
一般庶民も名字を名乗るようになったのは明治時代なので市村鉄之助は武士の家に育ったものと思われる。それでいてどうして行儀がなっていなくて、目上の人に丁寧に話す程度のことすらできないのだろうか。そういうキャラクター造形なのだと言われてしまえばおしまいだが、実際に存在した人物なのだからなんとかもっと…と思わずにいられない。
―壱―を見たときに思ったワケワカメな英単語は、「時代物を描きながら現代の風潮（言葉遣い）を取り入れる」手法ではなく、鉄之助の父がどうやら開国論者？で、英語ができたらしいということがわかりかけてきた。
鉄之助自身は、親の仇を討ちたい一方、人をあやめることはできない、鬼になどなれないと葛藤し始める。しかし小姓なんてやだ、強くなりたいとも思っていて、まさに思春期の煩悶の中にいるようである。鉄之助がこの先、どちらの道を進むのかすこし興味が湧いてきた。
特典（おまけ）は番組宣伝各種バージョン。

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十五歳といえば武士の世界では元服を済ませて一人前の大人になっていて当たり前である。それでなくとも激動の時代、手厚く保護されてちやほやと育てられたわけではない鉄之助はもっと大人であってもいい。それなのに相変わらず子どもの理論を振り回し、自分勝手に行動する。
観察方・山崎の邪魔をし、「助けてやろうと思った」と言う。本人は大真面目でも、遊びでやっていると思われても仕方がない。
落胆する鉄之助に、かの有名な局中法度が手渡される。それも変。そむけば切腹の厳しい掟を、なぜ入隊を許可するときに知らせないのだろう。局中法度第一の項は「士道に背きまじきこと」である。武士としての自覚を持ち行動することがなによりも重んじられた新撰組で、その心得が後出しにされるというのも解せない。
鉄之助自身長州藩士を親の仇と狙っていながら、「なにも殺さなくても」と突然ヒューマニストっぽいことを言い出す場面もある。当時の考えに照らして、親の仇は殺人とは異なるものだと百歩譲っても、新撰組に入るとき「俺を鬼にしてください」と頼んだのではなかったのか。
そういうディテールの不可解な部分に加えて、聞くに堪えない京都弁が縦横無尽に乱反射していて、だいぶ苦しくなってきた。唯一聞けるのは枡屋の番頭（声・飯島肇）くらいか。
物語の行く末には興味があるので、できれば続けて見たいがどこまで行けるか。
おまけ（特典）はノンクレジットエンディング。

このＤＶＤ「PEACE MAKER 鐵―拾参―」には、第弐拾四話「鐵」が収録されています。とうとう最終話の「鐵」です。長かったような、短かったような…。まさか、シリーズ全巻レビュー制覇するなんて、自分でも驚いてます。ＤＩＳＣＡＳさんのイントロダクションでさえ、ほとんどみんな「壱」と同じなのに…。でも何故か「九」だけちゃんと書いてくれてるんですよね〜。

さて、本題。

う、うかつでした。この物語には、ピースメーカー＝龍之介と鉄之助（父と息子）のストーリーがバックに流れていたんでした。こんなところでヤラレてしまうとは…。も〜、森川さんったら。

「池田屋」の後、それがまるで遠い昔のことかのように、いつもの新撰組です。それぞれの人物が、その人なりの日常を取り戻し、都には祇園祭の日が近づいてきました。人は生きていれば、ひとところに立ち止まってはいられません。生活もあれば、時間だって流れていく。そういうものですよね。たった一人、復讐心と孤独にさいなまれているあの人に、この平穏が訪れることは、ないのかもしれませんが…。

話はだいぶそれますが、新撰組のような男所帯に付いてまわる噂といえば、衆道(男性間の同性愛)。今で言うならボーイズラブです。過去の資料などから見ても、古来より、日本では別段珍しいことではなかったようです。欧米の、宗教に根ざした厳しい環境に比べると、とても緩やかだったことを記す文献も、残されています。ですが、そこに愛があったのか…そればかりは、当事者しか知り得ないことですね。

この最終話で気に入ったのは、辰之助お兄ちゃんと、山崎 烝のやりとり。ちょっぴりギャグっぽいところも、大好きです。それから、エンディングがこれまでと違うのもいいですね〜。ＤＶＤを途中で止めたりしないで、ぜひ最後までご覧ください。

このＤＶＤには、本編の他にも映像が入ってます。
「おまけ」は、キャラクターコレクション10 「沙夜」。可愛い沙夜ちゃんの色んな表情が観られます。心の声は文字で…。小さな胸の中に、こんな想いを秘めてたんですね〜。

その他に、映像特典が３つ。
１．ミュージッククリップ「池田屋」
　池田屋の場面のダイジェスト映像。バックは音効無しの音楽のみなので、自分にも割合大丈夫でした。

２．オリジナルショートストーリー「祇園会（ぎおんえ）」
　沖田さんのモノローグです。歩さん宛ての手紙を読んでいるような語り。しみじみしますよ。
　　
３．設定資料集
　静止画で、キャラ設定の原案や、背景のスケッチ画などが観られます。アニメ制作の裏側を、ちょっとのぞいたような気分になれるかも…。

☆キャラクター＆キャスト☆

市村鉄之助…小林由美子
沖田総司…斎賀みつき
土方歳三…中田譲治
市村辰之助…上田祐司
近藤 勇…土師孝也
山南敬助…井上倫宏
山崎 烝…櫻井孝宏
永倉新八…山口勝平
原田左之助…乃村健次
藤堂平助…鳥海浩輔
斎藤 一…松山鷹志
北村 鈴…今井由香
明里…根谷美智子
沙夜…高橋美佳子
ハナ…加藤奈々絵
市村龍之介…森川智之
坂本竜馬…江原正士
サイゾー…高橋美佳子